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第147話 理解しているからこその本気度
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「騎士団の執務室に来てくれたということは、騎士団に入団してくれるということかな?」
「い、いえ。数日後には別の街に移るので、挨拶をしておこうと思って」
「ふっふっふ、そうか。安心してくれ。さっきのは冗談だ」
現在アストはアリステアが書類作業を行う執務室に訪れていた。
(誰にでも……それこそ、国王陛下に勧誘されても断りそうな男だ。誰が勧誘しても、騎士の道に引き入れることは不可能だろう)
もし、アストを汚い手段を使わずに騎士団に引き入れた者がいれば、その者には何かしらの賞を与えるべきだと……アリステアは本気で思っている。
「そうか……そうだな。お前は、旅の冒険者なのだったな」
「えぇ、そうです」
「……行先は、決まっているのか?」
「以前滞在したことがある街、ラプターへ向かおうと思っています」
「ラプター……ラプターか…………もしや、ダンジョンに潜るつもりか?」
ダンジョン名、暗恐の烈火を有する街、ラプター。
階層数は全部で四十回ほどあるため、ルーキーからベテラン、トップレベルの冒険者たちまで集まるダンジョン都市。
「はい。冒険者の知人を夕食の席で話した際、久しぶりにダンジョンに関する話をして、また潜ってみようかと思いまして」
「なるほど……では、ラプターにいる知人に対し、手紙を送っておこう」
ダンジョン都市と呼ばれる場所には、多くの冒険者たちが集まる。
しかし、当然の事ながら都市が治めているため、ラプターの領主に仕える兵士、騎士たちもいる。
彼等にとってもダンジョンというの強くなる為、実戦経験を得る為には最適の場所と言える。
ただ……世の中には、冒険者という存在を下に見る騎士も存在する。
その冒険者が例え貴族の令息や令嬢であっても、同じ場所に堕ちた存在だとみなし、平気で見下す愚か者が存在する。
そういった愚か者がいることを知っているからこそ、アリステアはラプターにいる知人に手紙を送ると決めた。
(内容は…………私たちの恩人に手を出す様な真似をすれば、その首を斬るといったところか?)
冗談……ではなかった。
勿論、そんな事をすれば、よっぽどその事実を上手く隠さない限り、アリステアと言えど犯罪者になってしまう可能性がある。
ただ、それが解らない騎士はいない……だからこそ、手紙とはいえ堂々と手を出せば殺すと記せば、手紙の送り主がどれだけ本気なのか解る。
「ありがとうございます。まぁ、俺の場合は誰彼構わずそういう事になりそうではありますが」
「そうなのか? 耳に挟んだ情報では、アストは同業者たちとも仲良くしてると聞いたが」
「パーラたちとは仲良くしていますが、これまで出会ってきた同業者たちと、全員仲良く出来た訳ではありませんよ……どうしても、考え方が合わない。理解し合えない人というのはいますから」
「そうだな……その通りだ」
アリステアは良い意味で貴族らしいところを持っている。
だが、世の中には悪い意味で貴族らしい貴族が少なくない。
それもあって、アストが全ての冒険者と仲良き出来る訳ではないという理由に、直ぐに納得出来た。
「ふぅーーーー…………」
アストが退室した後、アリステアの手は中々動かず、書類仕事が進んでいなかった。
「どうしましたか、団長」
「いや……当たり前だが、理想の日々は続かないものだと、改めて思い知らされてな」
アリステアは……アストに対し、男としての魅力を感じ始めていた……といったことはなかった。
「アストさんに関してですか?」
「……顔に出ていたか」
「アストさんが退室する時、見送る際の表情に寂しさを感じたので」
「そうか」
同じく書類仕事をしていた女性騎士の予想を、特に否定はしなかった。
「書類仕事を、モンスターや盗賊の討伐などの仕事を終えた際、アストが開くバーで呑んで、語って……そういった日々が続くのかと、ほんの少しだけ期待してた」
何故、アストが自分の命を顧みず、他者を助ける為に荒業を使用するのか……解った。
それでも、アストは人間としてのブレーキが壊れている訳ではなく、当然恐怖は感じる。
だからこそ……アリステアは少しだけ、バーテンダーとしての活動は続けるも、旅をしながら危険な戦場に遭遇しても、眼を逸らさずに突っ込むことは止めるのではないかと……ほんの少しだけ考えていた。
「まぁ、だからといって止めないのがアストだ」
「致し方無いってやつですね。でも……他の街に移れば、その街を拠点に活動している騎士団の方から声を掛けられそうではないですか?」
「アストは、もう三年以上も冒険者として活動している。声を掛けられたことは、一度や二度ではないだろう。噂では、宮廷騎士にスカウトされたこともあるようだ」
「えっ!!!!!????? それは……あっ、でも……そうですね。アストさんなら、あり得そうですね」
結果として、Aランクドラゴンのリブルアーランドドラゴンを仕留めたのは、カミカゼを使用したアストの一撃だった。
土竜亜種という並外れた堅さを持つモンスターを仕留めた攻撃力。
その点を考慮すれば、あり得ないと断言することは出来なかった。
ただ、実際のところは宮廷騎士にではなく、王子の教育係やサポート、執事としてのスカウトだった。
「い、いえ。数日後には別の街に移るので、挨拶をしておこうと思って」
「ふっふっふ、そうか。安心してくれ。さっきのは冗談だ」
現在アストはアリステアが書類作業を行う執務室に訪れていた。
(誰にでも……それこそ、国王陛下に勧誘されても断りそうな男だ。誰が勧誘しても、騎士の道に引き入れることは不可能だろう)
もし、アストを汚い手段を使わずに騎士団に引き入れた者がいれば、その者には何かしらの賞を与えるべきだと……アリステアは本気で思っている。
「そうか……そうだな。お前は、旅の冒険者なのだったな」
「えぇ、そうです」
「……行先は、決まっているのか?」
「以前滞在したことがある街、ラプターへ向かおうと思っています」
「ラプター……ラプターか…………もしや、ダンジョンに潜るつもりか?」
ダンジョン名、暗恐の烈火を有する街、ラプター。
階層数は全部で四十回ほどあるため、ルーキーからベテラン、トップレベルの冒険者たちまで集まるダンジョン都市。
「はい。冒険者の知人を夕食の席で話した際、久しぶりにダンジョンに関する話をして、また潜ってみようかと思いまして」
「なるほど……では、ラプターにいる知人に対し、手紙を送っておこう」
ダンジョン都市と呼ばれる場所には、多くの冒険者たちが集まる。
しかし、当然の事ながら都市が治めているため、ラプターの領主に仕える兵士、騎士たちもいる。
彼等にとってもダンジョンというの強くなる為、実戦経験を得る為には最適の場所と言える。
ただ……世の中には、冒険者という存在を下に見る騎士も存在する。
その冒険者が例え貴族の令息や令嬢であっても、同じ場所に堕ちた存在だとみなし、平気で見下す愚か者が存在する。
そういった愚か者がいることを知っているからこそ、アリステアはラプターにいる知人に手紙を送ると決めた。
(内容は…………私たちの恩人に手を出す様な真似をすれば、その首を斬るといったところか?)
冗談……ではなかった。
勿論、そんな事をすれば、よっぽどその事実を上手く隠さない限り、アリステアと言えど犯罪者になってしまう可能性がある。
ただ、それが解らない騎士はいない……だからこそ、手紙とはいえ堂々と手を出せば殺すと記せば、手紙の送り主がどれだけ本気なのか解る。
「ありがとうございます。まぁ、俺の場合は誰彼構わずそういう事になりそうではありますが」
「そうなのか? 耳に挟んだ情報では、アストは同業者たちとも仲良くしてると聞いたが」
「パーラたちとは仲良くしていますが、これまで出会ってきた同業者たちと、全員仲良く出来た訳ではありませんよ……どうしても、考え方が合わない。理解し合えない人というのはいますから」
「そうだな……その通りだ」
アリステアは良い意味で貴族らしいところを持っている。
だが、世の中には悪い意味で貴族らしい貴族が少なくない。
それもあって、アストが全ての冒険者と仲良き出来る訳ではないという理由に、直ぐに納得出来た。
「ふぅーーーー…………」
アストが退室した後、アリステアの手は中々動かず、書類仕事が進んでいなかった。
「どうしましたか、団長」
「いや……当たり前だが、理想の日々は続かないものだと、改めて思い知らされてな」
アリステアは……アストに対し、男としての魅力を感じ始めていた……といったことはなかった。
「アストさんに関してですか?」
「……顔に出ていたか」
「アストさんが退室する時、見送る際の表情に寂しさを感じたので」
「そうか」
同じく書類仕事をしていた女性騎士の予想を、特に否定はしなかった。
「書類仕事を、モンスターや盗賊の討伐などの仕事を終えた際、アストが開くバーで呑んで、語って……そういった日々が続くのかと、ほんの少しだけ期待してた」
何故、アストが自分の命を顧みず、他者を助ける為に荒業を使用するのか……解った。
それでも、アストは人間としてのブレーキが壊れている訳ではなく、当然恐怖は感じる。
だからこそ……アリステアは少しだけ、バーテンダーとしての活動は続けるも、旅をしながら危険な戦場に遭遇しても、眼を逸らさずに突っ込むことは止めるのではないかと……ほんの少しだけ考えていた。
「まぁ、だからといって止めないのがアストだ」
「致し方無いってやつですね。でも……他の街に移れば、その街を拠点に活動している騎士団の方から声を掛けられそうではないですか?」
「アストは、もう三年以上も冒険者として活動している。声を掛けられたことは、一度や二度ではないだろう。噂では、宮廷騎士にスカウトされたこともあるようだ」
「えっ!!!!!????? それは……あっ、でも……そうですね。アストさんなら、あり得そうですね」
結果として、Aランクドラゴンのリブルアーランドドラゴンを仕留めたのは、カミカゼを使用したアストの一撃だった。
土竜亜種という並外れた堅さを持つモンスターを仕留めた攻撃力。
その点を考慮すれば、あり得ないと断言することは出来なかった。
ただ、実際のところは宮廷騎士にではなく、王子の教育係やサポート、執事としてのスカウトだった。
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