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第144話 言っても伝わらない
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土竜亜種、リブルアーランドドラゴンとの戦闘を終えてから完全回復したアスト。
直ぐに別の場所に移ることはなく、少しの間滞在を続けることにした。
「よぅ、アスト! 一緒に飯食べようぜ!!!」
「パーラ……解ったよ。適当に酒場に入ろうか」
基本的に昼食は夕食を一人で食べることがなくなった。
何故なら……毎回冒険者や騎士から声を掛けられ、大半の者は飯を奢るから一緒に食べようと声を掛けてくる。
アストとしても、他人の金で食べる飯は美味いということもあり、誘ってくる人物たちは大抵話のタネを持っているため、つまらな思いをすることもない。
「そういえばさ、アストってダンジョンに潜ったことってあるんだっけ」
「あぁ、あるぞ」
「それって……もしかして一人で、かしら」
パーラのパーティーメンバーであるフィラが恐る恐るで尋ねると、アストは自身の記憶を掘り起こし……答える。
「日帰りで探索したことはあったな。ただ、基本的にしっかり潜る時は、臨時パーティーを汲んで潜ってたな」
「そ、そうなのね……まぁ、日帰りなら問題……なさそうね」
基本的にソロで行動しているということもあり、もしかしたらダンジョンもソロで探索してたんじゃないかと思っていたフィラ。
普通に考えればあり得ないのだが、同じくパーラのパーティーメンバーであるモルンとケリィーは何故フィラがそんな質問をしたのか、なんとなく理解出来る。
「うちら、そろそろダンジョンに潜ってみようかなって思ってるんだけど、何かアドバイスとかないかな」
「アドバイス、か………………とりあえず、最下層のボス部屋に生息してるモンスターのランクが、DかCのダンジョンを数か月ぐらい潜った方が良い」
「数回、一番下まで降りてボスモンスターを討伐するんじゃなくて、数か月も探索するの?」
「そうだ。別に、パーラたちの強さを嘗めてる訳じゃない。ただ、ダンジョンの怖さっていうのは……人によるかもしれないが、実際に体験してみないと解らない。数か月もダンジョンを探索していれば、ひとまずイレギュラーに……ダンジョンが明確に殺意を持って自分たち人間を殺しにっていう感覚が解る」
ダンジョンが殺意を持って人間を殺しにくる。
そんなアストの言葉を耳にした周囲の客たちは、まだダンジョンを探索した経験がない者は首を傾げ、探索経験がある者たちは……苦々しい表情を浮かべながら、何度も頷いていた。
「……話には、聞いたことがある。ただ……それほどまでに、凄まじいものなのか?」
「ふふ、ほらな。伝えても、まず疑問を持つだろ」
「むっ」
「だから、最下層のボスモンスターがCランク……できれば、Dランクの方が良いか。そのダンジョンを数か月ぐらい探索すれば、一回ぐらいは理不尽とも思えるイレギュラーに遭遇する筈だ」
「…………最下層のボスモンスターDランクというのは、あくまで私たちの戦闘力を
見積もった上で、その理不尽なイレギュラーにも対応出来る……という判断ね」
「あぁ、そうだ」
アストの説明を受け、フィラはやはりアストに聞いておいて良かったと思った。
正直なところ、フィラはアストに戦闘で勝てる自信はない。
それは前衛であるパーラとモルンも同じであった。
そんなアストが……全く冗談を言ってるとは思えない真剣な表情で、ダンジョンが意思を持って殺しにくると、理不尽とも言えるイレギュラーを体験することがあると説明してくれた。
「因みに、俺は以前探索したことがあるダンジョンで、先日土竜亜種を討伐するのに使った奥の手を使った」
「「っ!!!」」
本気のアストに勝てる自信はないとはいえ、それでも自分の実力にそれなりの自信を持っているパーラとモルンの顔に衝撃が走った。
「それは、ダンジョンのボスモンスターを相手にではなく、遭遇してしまった理不尽なイレギュラーに、っていうことよね」
「そうだよ。あの時は一人で行動してた訳じゃないから良かったけど……あっ、後買うってなったらバカ高いけど、帰還石は絶対に一人一つ持ってた方が良いな」
「帰還石って、使えば直ぐに地上戻れるマジックアイテム、で合ってる?」
「それで合ってるよ、ケリィー。買うのがバカらしく思えるかもしれないけど、絶対に持っておいた方が良い」
アストの言う通り、帰還石というアイテムは、非常に高価なマジックアイテムであり、ダンジョンをメインに探索する冒険者たちにとっては、本当にいくつあっても困らないアイテムである。
「まぁ、世の中は本当に広く、帰還石の使用を封じられる階層やボス部屋があるらしいけどな」
「そ、それだけでも探索者を殺しにきてるって感じがするわね」
「ふふ、そうだろ。だから、一旦フィラたちの実力でも最下層まで慣れれば直ぐ完全攻略出来るダンジョンで慣れて、一回ぐらいはイレギュラーを体験してみる事を進める。勿論、俺は四人の上司じゃないから、強制なんて出来ないけどな」
冒険者と言うのはせっかちな者が多く、獣人族のパーラもそれに当て嵌まる。
だが……友人、英雄からのアドバイスということもあり、せっかちなパーラもひとまずアストから言われた通り、元々候補にはなかった攻略難易度が低いダンジョンを探索してみようと決めた。
直ぐに別の場所に移ることはなく、少しの間滞在を続けることにした。
「よぅ、アスト! 一緒に飯食べようぜ!!!」
「パーラ……解ったよ。適当に酒場に入ろうか」
基本的に昼食は夕食を一人で食べることがなくなった。
何故なら……毎回冒険者や騎士から声を掛けられ、大半の者は飯を奢るから一緒に食べようと声を掛けてくる。
アストとしても、他人の金で食べる飯は美味いということもあり、誘ってくる人物たちは大抵話のタネを持っているため、つまらな思いをすることもない。
「そういえばさ、アストってダンジョンに潜ったことってあるんだっけ」
「あぁ、あるぞ」
「それって……もしかして一人で、かしら」
パーラのパーティーメンバーであるフィラが恐る恐るで尋ねると、アストは自身の記憶を掘り起こし……答える。
「日帰りで探索したことはあったな。ただ、基本的にしっかり潜る時は、臨時パーティーを汲んで潜ってたな」
「そ、そうなのね……まぁ、日帰りなら問題……なさそうね」
基本的にソロで行動しているということもあり、もしかしたらダンジョンもソロで探索してたんじゃないかと思っていたフィラ。
普通に考えればあり得ないのだが、同じくパーラのパーティーメンバーであるモルンとケリィーは何故フィラがそんな質問をしたのか、なんとなく理解出来る。
「うちら、そろそろダンジョンに潜ってみようかなって思ってるんだけど、何かアドバイスとかないかな」
「アドバイス、か………………とりあえず、最下層のボス部屋に生息してるモンスターのランクが、DかCのダンジョンを数か月ぐらい潜った方が良い」
「数回、一番下まで降りてボスモンスターを討伐するんじゃなくて、数か月も探索するの?」
「そうだ。別に、パーラたちの強さを嘗めてる訳じゃない。ただ、ダンジョンの怖さっていうのは……人によるかもしれないが、実際に体験してみないと解らない。数か月もダンジョンを探索していれば、ひとまずイレギュラーに……ダンジョンが明確に殺意を持って自分たち人間を殺しにっていう感覚が解る」
ダンジョンが殺意を持って人間を殺しにくる。
そんなアストの言葉を耳にした周囲の客たちは、まだダンジョンを探索した経験がない者は首を傾げ、探索経験がある者たちは……苦々しい表情を浮かべながら、何度も頷いていた。
「……話には、聞いたことがある。ただ……それほどまでに、凄まじいものなのか?」
「ふふ、ほらな。伝えても、まず疑問を持つだろ」
「むっ」
「だから、最下層のボスモンスターがCランク……できれば、Dランクの方が良いか。そのダンジョンを数か月ぐらい探索すれば、一回ぐらいは理不尽とも思えるイレギュラーに遭遇する筈だ」
「…………最下層のボスモンスターDランクというのは、あくまで私たちの戦闘力を
見積もった上で、その理不尽なイレギュラーにも対応出来る……という判断ね」
「あぁ、そうだ」
アストの説明を受け、フィラはやはりアストに聞いておいて良かったと思った。
正直なところ、フィラはアストに戦闘で勝てる自信はない。
それは前衛であるパーラとモルンも同じであった。
そんなアストが……全く冗談を言ってるとは思えない真剣な表情で、ダンジョンが意思を持って殺しにくると、理不尽とも言えるイレギュラーを体験することがあると説明してくれた。
「因みに、俺は以前探索したことがあるダンジョンで、先日土竜亜種を討伐するのに使った奥の手を使った」
「「っ!!!」」
本気のアストに勝てる自信はないとはいえ、それでも自分の実力にそれなりの自信を持っているパーラとモルンの顔に衝撃が走った。
「それは、ダンジョンのボスモンスターを相手にではなく、遭遇してしまった理不尽なイレギュラーに、っていうことよね」
「そうだよ。あの時は一人で行動してた訳じゃないから良かったけど……あっ、後買うってなったらバカ高いけど、帰還石は絶対に一人一つ持ってた方が良いな」
「帰還石って、使えば直ぐに地上戻れるマジックアイテム、で合ってる?」
「それで合ってるよ、ケリィー。買うのがバカらしく思えるかもしれないけど、絶対に持っておいた方が良い」
アストの言う通り、帰還石というアイテムは、非常に高価なマジックアイテムであり、ダンジョンをメインに探索する冒険者たちにとっては、本当にいくつあっても困らないアイテムである。
「まぁ、世の中は本当に広く、帰還石の使用を封じられる階層やボス部屋があるらしいけどな」
「そ、それだけでも探索者を殺しにきてるって感じがするわね」
「ふふ、そうだろ。だから、一旦フィラたちの実力でも最下層まで慣れれば直ぐ完全攻略出来るダンジョンで慣れて、一回ぐらいはイレギュラーを体験してみる事を進める。勿論、俺は四人の上司じゃないから、強制なんて出来ないけどな」
冒険者と言うのはせっかちな者が多く、獣人族のパーラもそれに当て嵌まる。
だが……友人、英雄からのアドバイスということもあり、せっかちなパーラもひとまずアストから言われた通り、元々候補にはなかった攻略難易度が低いダンジョンを探索してみようと決めた。
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