異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai

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第140話 営業再開

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「よぅ、アスト!! いや、マスターって呼んだ方が良いのか?」

カミカゼの反動である超筋肉痛を乗り越え、報酬金を受け取り、土竜亜種の素材を受け取ってから……アストはこれまでと変わらない生活を送っていた。

現在は既に日が落ち、仕事帰りの冒険者たちも夕食を食べ終わるか、酔いつぶれて転がっている時間帯。

そんな中、バーテンダーとして店を開いているアストの元に、顔見知りの四人……パーラたちが訪れた。

「どちらでも構いませんよ」

そう言いながら、カウンターに座る四人に暖かいおしぼりとメニュー表を渡す。

「うちらあんまり解らないから、お勧めの一杯頼むよ!」

「かしこまりました。皆さんも同じく?」

エルフのフィラたちはそれで頼むと頷き、アストは本当にお勧めの一杯を作った。

「おまたせしました、アレキサンダーでございます」

四人の好みなどを一切訊かず、純粋にアストがお勧めのカクテル……それは、以前カルダール王国の国王であるラムスに作ったアレキサンダーであった。

「ん~~~~、良いね!! 割とガッツリくるのに、ちょっと甘い感じが良い!!」

「パーラの言う通りね。これは……なんか、カクテルを楽しんでるって感じがするわね」

「ありがとうございます」

自分が作った一杯を呑み、客が楽しいと感じている。
アストにとって、非常に嬉しい褒め言葉であった。

「ねぇアスト、話したい事がいっぱいあるから、アストも話せるようにパパっと用意出来ちゃう料理とか……つ、つまみ? ってやつないかな」

「パパっと用意出来るつまみとなると、こちらの三つになりますね」

そのまま用意しても良いのだが、アストは一応メニュー表の名前と料金を指さしながら伝えた。

「んじゃ、その三つを頂戴!!」

「かしこまりました」

本当にパパっとアストが用意したつまみは……ドライフルーツに生ハム、そして……ポテチだった。

四人はその味に非常に満足しながら、直ぐに話したかった内容について尋ね始めた。

「アストは、土竜の亜種? と戦ったんだよね」

「えぇ。名前がリブルアーランドドラゴンという土竜亜種の、Aランクドラゴンでした」

「そんな名前まであったんだね!」

「……やはり、恐ろしいものでしたか?」

当然ながら、まだフィラはAランクのモンスターに……Aランクのドラゴンに出会った事がない。

故に、想像しようにも土竜亜種が放つ圧などが上手く想像出来なかった。

「そうですね……正直なところ、まず予想外という気持ちが大きかったです」

「確か、元々は逃げたオーガジェネラルが進化し、戦凶鬼? という名のモンスターの討伐がメインだったと聞いている」

人族の細剣士、モルンの言う通り最初はオーガジェネラルから進化したオーガの討伐が目的だった。

だが、いざ遭遇すると……何故か、隣にはもう一体のAランクモンスター……土竜亜種、リブルアーランドドラゴンがいた。

アリステアたちからすれば、ふざけるなと叫び散らかしたかった。

「えぇ、その通りです。戦凶鬼は戦凶鬼で恐ろしいモンスターでした。個人的な意見ですが、ただずば抜けて高い身体能力を持つモンスターよりも、人型で人間の様に考えられる頭脳を持つモンスターの方が恐ろしいと感じます」

「それ、凄い解る」

アストの個人的な意見に、人族の魔術師であるケリィーはこくこくと、何度も頷いた。

「そう、ね……確かに、恐ろしいと言うか、気味悪さを感じるわね」

「解らなくもないな」

「ん~~~……確かに面倒そうなモンスターかも!」

概ね、ケリィー以外の三人も同じ考えだった。

「……しかし、一定の戦闘力を越えてしまうと、あまりそういった点は関係なくなってしまいますね」

「やはり、リブルアーランドドラゴンはリブルアーランドドラゴンで、とてつもなく恐ろしい敵でしたのね」

「過去にAランクモンスターと遭遇していなければ、直ぐに切り替えることは出来ませんでした」

それは謙遜ではなく、本音であった。

過去にAランクモンスターに遭遇した際、アストの傍に頼れる先輩冒険者がいた。
その先輩冒険者が直ぐに鼓舞してくれたこともあって、今もアストはこうしてバーテンダーとして活動出来ている。

「アストは、常に的確なサポートを行い、終始活躍していたと聞いている」

「活躍していたのは、共に戦った方々全員ですよ。私は、私の仕事を精一杯やっていただけです」

アストと共に参加していた女性騎士たちは、アストが一撃でリブルアーランドドラゴンを斬り裂いた光景が強く印象に残っているからこそ、それをメインに話していた。

だが、共に戦場で戦っていたアストは、自分一人だけが頑張っていた訳ではないことを知っている。

「ウェディーさんたちの活躍があったからこそ、私が止めの一撃を放つことが出来たのです」

今でも、ハッキリと覚えている。
自分がカミカゼ詠唱を始めた際、全力で自分を信じ……詠唱を完成させるために仲間たちに檄を飛ばし、時間を稼いでくれたことを。

だからこそ、アストは何度でも訂正する。
土竜亜種、リブルアーランドドラゴンを討伐したのは自分の力だけではなく、ウェディーたち全員で討伐したのだと。
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