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第117話 戦乙女
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「……え、マジでなんでか知らないの?」
「言っただろ。俺は適当に旅をしてたら、この街に着いたんだ。この街に関して、特に調べてはいなかった」
「そ、そっか。それなら……別におかしくないのか?」
パーラたちにとっては当たり前過ぎる常識となっていたが、初めてこの街を訪れた
同業者の驚き顔は何度か見てきた。
冒険者であれば、事前に情報を得ていたとしても、実際の光景に驚くことが多い。
「この街には、ある騎士団がいるんだ」
「もしかしなくても、女性中心で構成された騎士団、なのか?」
「察しが良いな。その騎士団では、代々女性が騎士団長として活動している」
「先代の騎士団長もそれはそれは強かったですが、ここ数年で新しく団長になった方も強く、魅力的な方です」
「女性が惚れる、女性騎士?」
「なるほど…………なんとなく、イメージは浮かぶな」
伊達に旅はしておらず、女性冒険者との交流はそれなりにあり……稀に女性騎士と対面することもあり、女性が惚れるカッコイイ、凛々しい女性像をある程度イメージ出来る。
「その女性団長に憧れて、女性の戦闘者がこの街には多くいるんだな」
「そういう事!!! 前の騎士団長もそうなんだけど、今の騎士団長も冒険者で言うところのAランク冒険者並みの力があるんだよ!!!」
「ほぅ~~~~、そいつは本当に凄いな」
過去にほんの数名、Aランク冒険者とであったことがあるアスト。
そのお陰で、より騎士団長をイメージしやすくなった。
「でしょでしょ!! あと、何が凄いって言うと、その人はまだ二十代前半なんだよ!!!!」
「…………マジの戦乙女、ってところか」
アストは天才という言葉があまり好きではなかった。
なので、パーラの説明を聞いた時、「マジの怪物か」と口にしそうになったが、四人の話を聞く限り、現在の騎士団長は女性が惚れる魅力を持つ女性。
ここで馬鹿正直に怪物だと表現すれば、目の前の四人だけではなく……同じ酒場で呑んでいる多くの同業者たちから敵視されてしまう。
バーテンダーとしての経験が活きた瞬間だった。
「そうそう!! 本当にそういう感じなの!!!!」
「しっかし、そこまで全てを持ってるなら、その騎士団長さんに言い寄ろうとする男が現れるもんじゃないのか?」
次の瞬間、パーラたち四人も含め、その他の女性冒険者たちの空気がピリっとひりつく。
「……そうなんだよね~~。まだこの街で活動を始めて数年ぐらいしか経ってないんだけど、その間だけでも……何人ぐらいいたっけ?」
「直接申し込んだ愚か者は、約十名といったところか?」
「酒場や冒険者ギルドでそういった話をして、潰された方々が……五十人以上はいたでしょうか」
「無意味な事をする人が、いつもいる」
(……こ、こぇ~~~~~~~~~)
人気がある、人望がある者を何人か見てきた。
そういった者に対して敬意を越え、信仰心の様な感情を抱く者は少なくない。
「って感じで、確かに言い寄ってくる男自体はそこそこいるんだよね~~」
「そ、そうみたいだな」
周囲の女性冒険者たちが頷いているのを見れば、パーラたちが話を持っている訳ではないのが解る。
「…………それにしても、そいつらは面倒事背負いたいのか? 俺からすれば、申し訳ないがバカだと思ってしまうな」
「へぇ~~~? なんでそう思うの?」
自分たちの憧れについて知らなかった。
しかし、その憧れに近づこうとする野郎たちをバカだと言った。
当然……その真意が気になる。
「騎士団長っていうことは、貴族のご令嬢なんだろ。そんな立場ある人間とただ関わるのであればまだしも、婚約者や恋仲になろうなんて……そこに辿り着くまで、辿り着いてからも面倒事が待ってるだけだろ」
基本的には、平民の手が届く相手ではない。
貴族の令息であっても、相手が騎士団長という頂きに辿り着くほど強さと立場を持つ相手であれば、強さと立場……どちらか一つでも欠けていれば釣り合わない。
「近づこうとしても、その団長さんに敬意や信仰心を持つ人たちに阻まれる。その団長さんに対して心の底から惚れてるなら、無駄だと思えるかもしれない行動に時間を費やすならまだ解るが……ただ有名人だから、美人だからって理由で近づくのは言葉通り意味がない」
「…………あっはっは!!!! 良いね!! 良く解ってるじゃん、アスト!!」
強がっている様子は一切ない。
ただただ、本当に興味本位で団長に近づく者たちはバカだと思っている。
そう考えるアストをパーラは気に入った。
「ふふ、話しが解る男だ」
「そうですね。そこら辺の男性たちもあなたの様な思考力を身に付けてほしいところですわ」
「良い判断力」
他三人も、アストの考えを褒め称える。
それはそれで嬉しいのだが……野郎側としては、一応反論しておきたい部分があった。
「言っただろ。俺は適当に旅をしてたら、この街に着いたんだ。この街に関して、特に調べてはいなかった」
「そ、そっか。それなら……別におかしくないのか?」
パーラたちにとっては当たり前過ぎる常識となっていたが、初めてこの街を訪れた
同業者の驚き顔は何度か見てきた。
冒険者であれば、事前に情報を得ていたとしても、実際の光景に驚くことが多い。
「この街には、ある騎士団がいるんだ」
「もしかしなくても、女性中心で構成された騎士団、なのか?」
「察しが良いな。その騎士団では、代々女性が騎士団長として活動している」
「先代の騎士団長もそれはそれは強かったですが、ここ数年で新しく団長になった方も強く、魅力的な方です」
「女性が惚れる、女性騎士?」
「なるほど…………なんとなく、イメージは浮かぶな」
伊達に旅はしておらず、女性冒険者との交流はそれなりにあり……稀に女性騎士と対面することもあり、女性が惚れるカッコイイ、凛々しい女性像をある程度イメージ出来る。
「その女性団長に憧れて、女性の戦闘者がこの街には多くいるんだな」
「そういう事!!! 前の騎士団長もそうなんだけど、今の騎士団長も冒険者で言うところのAランク冒険者並みの力があるんだよ!!!」
「ほぅ~~~~、そいつは本当に凄いな」
過去にほんの数名、Aランク冒険者とであったことがあるアスト。
そのお陰で、より騎士団長をイメージしやすくなった。
「でしょでしょ!! あと、何が凄いって言うと、その人はまだ二十代前半なんだよ!!!!」
「…………マジの戦乙女、ってところか」
アストは天才という言葉があまり好きではなかった。
なので、パーラの説明を聞いた時、「マジの怪物か」と口にしそうになったが、四人の話を聞く限り、現在の騎士団長は女性が惚れる魅力を持つ女性。
ここで馬鹿正直に怪物だと表現すれば、目の前の四人だけではなく……同じ酒場で呑んでいる多くの同業者たちから敵視されてしまう。
バーテンダーとしての経験が活きた瞬間だった。
「そうそう!! 本当にそういう感じなの!!!!」
「しっかし、そこまで全てを持ってるなら、その騎士団長さんに言い寄ろうとする男が現れるもんじゃないのか?」
次の瞬間、パーラたち四人も含め、その他の女性冒険者たちの空気がピリっとひりつく。
「……そうなんだよね~~。まだこの街で活動を始めて数年ぐらいしか経ってないんだけど、その間だけでも……何人ぐらいいたっけ?」
「直接申し込んだ愚か者は、約十名といったところか?」
「酒場や冒険者ギルドでそういった話をして、潰された方々が……五十人以上はいたでしょうか」
「無意味な事をする人が、いつもいる」
(……こ、こぇ~~~~~~~~~)
人気がある、人望がある者を何人か見てきた。
そういった者に対して敬意を越え、信仰心の様な感情を抱く者は少なくない。
「って感じで、確かに言い寄ってくる男自体はそこそこいるんだよね~~」
「そ、そうみたいだな」
周囲の女性冒険者たちが頷いているのを見れば、パーラたちが話を持っている訳ではないのが解る。
「…………それにしても、そいつらは面倒事背負いたいのか? 俺からすれば、申し訳ないがバカだと思ってしまうな」
「へぇ~~~? なんでそう思うの?」
自分たちの憧れについて知らなかった。
しかし、その憧れに近づこうとする野郎たちをバカだと言った。
当然……その真意が気になる。
「騎士団長っていうことは、貴族のご令嬢なんだろ。そんな立場ある人間とただ関わるのであればまだしも、婚約者や恋仲になろうなんて……そこに辿り着くまで、辿り着いてからも面倒事が待ってるだけだろ」
基本的には、平民の手が届く相手ではない。
貴族の令息であっても、相手が騎士団長という頂きに辿り着くほど強さと立場を持つ相手であれば、強さと立場……どちらか一つでも欠けていれば釣り合わない。
「近づこうとしても、その団長さんに敬意や信仰心を持つ人たちに阻まれる。その団長さんに対して心の底から惚れてるなら、無駄だと思えるかもしれない行動に時間を費やすならまだ解るが……ただ有名人だから、美人だからって理由で近づくのは言葉通り意味がない」
「…………あっはっは!!!! 良いね!! 良く解ってるじゃん、アスト!!」
強がっている様子は一切ない。
ただただ、本当に興味本位で団長に近づく者たちはバカだと思っている。
そう考えるアストをパーラは気に入った。
「ふふ、話しが解る男だ」
「そうですね。そこら辺の男性たちもあなたの様な思考力を身に付けてほしいところですわ」
「良い判断力」
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