異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai

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第115話 おかしい割合

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「割と大きな街で……活気もあるな」

王都を離れて十数日。
アストは店を開くのに丁度良い街……アプストに到着。

(とりあえず、宿を確保しないとな)

金に余裕があるアストはそれなりに質の高い宿の部屋を、ひとまず十日間分の確保。

青年が一人で行動してるという状況に、従業員は「本当にこいつは払えるのか?」という気持ちがほんの少しだけ顔に出ていたが、大量の金貨を見たことで直ぐに引っ込んだ。

「…………やけに、強い感じの女性が多いな」

ただ筋肉質のメスゴリラが大量にいるという訳ではなく、剣士としての切れ味、魔術師がかもし出す魔力の重厚な雰囲気。

そういった様々な面で、道を歩く女性たちから強さを感じる。
勿論、男性の冒険者などもちらほらと見かけるが……やや数が少ないように見える。

(アマゾネスの集落が近いとか……か?)

アプストに到着した日は特に冒険者として、バーテンダーとしても働くことなく街を散策し、酒場で飯を食って一日を終えた。

翌日、バーを開らなかったこともあり、普段よりも早く目が覚めたアストは朝食を食べ終えた後、のんびりとした足取りで冒険者ギルドへ向かった。

「ん~~~~~…………昨日、俺が感じた感覚は間違ってなかったみたいだな」

朝早い時間帯ということもあり、冒険者ギルドのロビーには多くの冒険者たちがいた。

ざっと確認した限り……冒険者の男女の割合が五対五。

(あまり気にせずここまで来たが、もう少し情報収集しておくべきだったか?)

戦闘職である冒険者は、一攫千金を目指すことが出来なくもない職業ではあるが、女性であるなら冒険者よりも冒険者ギルドの華である受付嬢になりたいと願う。

基本的に命が危機に晒されることはなく、一般的な職業と比べてかなり給金が高い。

(……男の冒険者たちは、中には少し戸惑ってる者たちもいるが、大半の者たちは慣れているみたいだな)

理由は解らない。
事前情報がないため、理由は解らないが……そこまで悩み、恐れる必要はない。

そう判断したアストをクエストボードから少し離れた位置まで進み、貼り付けられている依頼書を眺め始めた。

(依頼書の数が多いな。討伐系が多いのは勿論だが、採集系の依頼もそこそこある………………今更後悔しても仕方ないな)

もっと事前に情報を集めておけば良かったと思いつつも、今更遅い。
アストは諦めて自分一人でも達成出来そうな依頼を探し始めた。

「………………あれにするか」

見つけた依頼は、フォレストウルフの毛皮の納品依頼。

数は一体だけであり、今日中に終わらせられる可能性が非常に高い。

「あっ」

「…………どうぞ」

「えっ、良いの?」

アストと同じ依頼書を狙っていたアマゾネスの女性冒険者。

二人ともギリギリのところで手が止まったが、アストは絶対に受けたい依頼……報酬金額超魅力的だったという訳でもないため、直ぐに諦めて冒険者ギルドから出て行った。

(今日は適当に狩ろう)

冒険者ギルドに素材を売却すれば、一応冒険者として働いていることにはなる。

その考え自体は間違ってないが、街を出て森に入ってから数時間後……アストはほんの少し、後悔していた。


「はぁ~~~~……なんだこの森。ちょっとモンスターが多すぎないか?」

現在、アストの足元にはコボルトの上位種とオークの死体が複数転がっている。

因みに、これが森に入ってから初めての戦闘ではなく、既に五回ほど野性のモンスターとエンカウントしている。

(とりあえず解体するか~~~)

アイテムバッグの中から結界を展開するマジックアイテムを取り出し、展開。

血抜きをし、使える素材を捌いていくこと約十分後……あるモンスターがアストをロックオンした。

「……なんで別の獲物を探しに行かないんだよ」

結界の中にいるアストをロックオンしているモンスターは……朝、アストが受けようかと思っていた納品依頼の為に討伐しなければならないモンスター、フォレストウルフだった。

(しょうがない、サクッとやるか)

ひとまずは存在を無視して残っている死体の解体を行い、売却できる素材をアイテムバッグに入れた後……結界を解除する前に、一つの武器を取り出した。

「ワゥッ!!!!!!!!」

アストが結界を解除した瞬間、フォレストウルフは速攻で距離を詰めて直接斬り裂くのではなく、その場で跳躍し……一回転しながら旋風の斬撃刃を放った。

(やっぱり、賢い個体だな)

展開していた結界であれば、なんとCランクモンスターの攻撃であっても余裕で弾き飛ばす。

しかし、当然ながら結界内での用事が終われば、解除して移動しなければならない。
フォレストウルフは人間の動きをそこまで理解していたからこそ、結界を張られていようが気にせず獲物が動くのを待ち続けていた。

「フッ!!!!!!!」

「ッ……っ…………」

ただ、距離を詰めるのか、それとも遠距離から攻撃を放つのか。
それさえ分かってしまえば……刀による斬撃が全てを断つ。

「…………マジで良い武器をゲット出来たよな」

同じく旋風の斬撃刃を放ったアスト。
威力の差により、フォレストウルフが放った遠距離攻撃は霧散し、地面に着地する前にアストが放った斬撃刃が真っ二つにその体を斬り裂いた。
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