78 / 167
第78話 運次第
しおりを挟む
「っし、到着」
走って走って走り続け、次の目的地……スルパーに到着。
「採掘は明日からだな」
街からも見える位置に、コルバ鉱山という漆黒石が採掘出来る鉱山がある。
まだ昼から数時間程度しか経っておらず、アストなら……やろうと思えば今からでも採掘に向かえるが、その日は大人しく宿を取って早めに爆睡。
翌日、軽く情報を得る為にギルドへ向かうと、やや雰囲気が沈んでいた。
(? 何かあったのか? 鉱石の採掘量が急激に減ったとか、そういうのは止めてほしいんだが)
考えるよりも聞いた方が早い。
アストは直ぐに近くにいたギルド職員に声を掛けた。
「すいません。先日スルパーに来たばかりなんですけど、もしかしてコルバ鉱山で何か問題でも起こりましたか?」
「えぇ、そうですね。実は、アイアンイーターが出現しまして」
「アイアンイーターが、ですか」
アイアンイーターとは、鉄を好むワーム。
ランクはCと、簡単に倒せるモンスターではない。
鉱山を縦横無尽に動き回ることができ、戦う場所が鉱山ではなくとも、地面に潜ることが出来るため、動きを捉えるのが厄介な難敵。
(けど、ここにいる冒険者たちが、そこまで深刻になるほどか?)
鉱山を有する街、冒険者ギルドにとって、アイアンイーターはまさに天敵、最悪のお邪魔虫。
即刻排除するべき害虫。
「……見た感じ、この街で活動してる冒険者の方々なら、討伐は深刻な雰囲気になるほど難しくはないと思いますけど」
「実は、今回コルバ鉱山に現れたアイアンイーターは、鉱石だけではなく人を好んで食すタイプのようなんです」
「い゛っ……なる、ほど。それは悩みの種と言いますか」
アイアンイーターが何故鉱石ではなく、人も好んで食べるようになるのか。
この世界では、まだ鉄分という存在が幅広く認識されていない。
その為、過去の例から稀にそういったタイプのアイアンイーターが現れる、という認識しかされておらず、明確な理由は解明されていなかった。
(人を好んで食べるアイアンイーター、か。そりゃこれだけ冒険者たちが沈むわけだ)
鉱山には幅広いランクの冒険者たちが採掘に向かっている。
採掘出来る鉱石にもよるが……手に入れた鉱石によっては、懐が一気に温かくなる。
場合によっては、人生が変わると言っても過言ではない。
だからこそ……いつ、自分を狙って現れるかもしれないアイアンイーターを警戒するのは、非常に危うい。
「これからコルバ鉱山に採掘へ向かうのであれば、例のアイアンイーターが討伐されてから向かうことをお勧めします」
「分かりました。ありがとうございます」
非常にバッドニュースではあるが、知っていると知らないとでは心構えが変わってくる。
ただ、変わらないことがあると言えば……人の肉を好むアイアンイーターが住み着いていると知っても、アストがコルバ鉱山へ向かうのを止めない事。
厄介なモンスターがいる事を知ることが出来た。
人を好んで狩る個体の多くは、何故か人を……冒険者や兵士、騎士を狩るのが上手い。
対象がCランクのモンスターであれば、Bランクのモンスターに挑むつもりぐらい心構えでなければ……あっさり食われてしまうこともある。
(とはいえ、関わらないで済むなら、それが一番なんだけどな)
副業として活動してるから、という訳ではない。
そもそも冒険者とは正義のヒーローではなく、英雄や勇者でもない。
稀にそう呼ばれる猛者が現れることもあるが、それは外野がそう呼んでるだけであり、冒険者たちにそういった称号に見合う行動をしなければならない理由はない。
個人的に命を懸けて戦わなければならない戦いは、先日終えた。
後は目的の漆黒石を採掘することに全力を尽くすだけであり、基本的に人肉大好きアイアンイーターの討伐などしたくない。
「鉱山に来るのも久しぶりだな」
まだ冒険者になって数年のアストだが、当初からまんべんなく依頼を受けており、既に採掘経験は十分ある。
採掘用のツルハシも亜空間の中にしまっているので、何かを準備する必要は一切ない。
(そんじゃ、がっつり肉体労働といきますか)
目的の鉱石が出るまで、掘って掘って掘りまくる。
モンスターの討伐もそれなりに重労働ではあるが、アストの中で一番体を動かして働いてるな~~~と思うと仕事は、間違いなく採掘作業だった。
「……ここら辺を掘るか」
今現在、人肉大好きアイアンイーターがコルバ鉱山に住み着いているという情報が出回っていることもあって、ライバルは非常に少ない。
とはいえ、アストはドワーフの様に鉱石の気配、匂いを感じることは出来ず、エルフの様に土の精霊の力を借りて……などといった事は出来ず、ただ直感を信じて採掘するのみ。
「…………まだまだ全然足りないな」
結果、途中途中で襲い掛かって来たモンスターを倒しながら採掘し続け、漆黒石は樽の十分の一ぐらいしか採掘出来なかった。
(あと何日掛かることやら)
人肉大好きアイアンイーターが怖いため、その日のうちにスルパーへ帰還して夕食を食べて即爆睡……することはなく、逆にバーを開きたくなり、明日も採掘するというのに営業を始めた。
走って走って走り続け、次の目的地……スルパーに到着。
「採掘は明日からだな」
街からも見える位置に、コルバ鉱山という漆黒石が採掘出来る鉱山がある。
まだ昼から数時間程度しか経っておらず、アストなら……やろうと思えば今からでも採掘に向かえるが、その日は大人しく宿を取って早めに爆睡。
翌日、軽く情報を得る為にギルドへ向かうと、やや雰囲気が沈んでいた。
(? 何かあったのか? 鉱石の採掘量が急激に減ったとか、そういうのは止めてほしいんだが)
考えるよりも聞いた方が早い。
アストは直ぐに近くにいたギルド職員に声を掛けた。
「すいません。先日スルパーに来たばかりなんですけど、もしかしてコルバ鉱山で何か問題でも起こりましたか?」
「えぇ、そうですね。実は、アイアンイーターが出現しまして」
「アイアンイーターが、ですか」
アイアンイーターとは、鉄を好むワーム。
ランクはCと、簡単に倒せるモンスターではない。
鉱山を縦横無尽に動き回ることができ、戦う場所が鉱山ではなくとも、地面に潜ることが出来るため、動きを捉えるのが厄介な難敵。
(けど、ここにいる冒険者たちが、そこまで深刻になるほどか?)
鉱山を有する街、冒険者ギルドにとって、アイアンイーターはまさに天敵、最悪のお邪魔虫。
即刻排除するべき害虫。
「……見た感じ、この街で活動してる冒険者の方々なら、討伐は深刻な雰囲気になるほど難しくはないと思いますけど」
「実は、今回コルバ鉱山に現れたアイアンイーターは、鉱石だけではなく人を好んで食すタイプのようなんです」
「い゛っ……なる、ほど。それは悩みの種と言いますか」
アイアンイーターが何故鉱石ではなく、人も好んで食べるようになるのか。
この世界では、まだ鉄分という存在が幅広く認識されていない。
その為、過去の例から稀にそういったタイプのアイアンイーターが現れる、という認識しかされておらず、明確な理由は解明されていなかった。
(人を好んで食べるアイアンイーター、か。そりゃこれだけ冒険者たちが沈むわけだ)
鉱山には幅広いランクの冒険者たちが採掘に向かっている。
採掘出来る鉱石にもよるが……手に入れた鉱石によっては、懐が一気に温かくなる。
場合によっては、人生が変わると言っても過言ではない。
だからこそ……いつ、自分を狙って現れるかもしれないアイアンイーターを警戒するのは、非常に危うい。
「これからコルバ鉱山に採掘へ向かうのであれば、例のアイアンイーターが討伐されてから向かうことをお勧めします」
「分かりました。ありがとうございます」
非常にバッドニュースではあるが、知っていると知らないとでは心構えが変わってくる。
ただ、変わらないことがあると言えば……人の肉を好むアイアンイーターが住み着いていると知っても、アストがコルバ鉱山へ向かうのを止めない事。
厄介なモンスターがいる事を知ることが出来た。
人を好んで狩る個体の多くは、何故か人を……冒険者や兵士、騎士を狩るのが上手い。
対象がCランクのモンスターであれば、Bランクのモンスターに挑むつもりぐらい心構えでなければ……あっさり食われてしまうこともある。
(とはいえ、関わらないで済むなら、それが一番なんだけどな)
副業として活動してるから、という訳ではない。
そもそも冒険者とは正義のヒーローではなく、英雄や勇者でもない。
稀にそう呼ばれる猛者が現れることもあるが、それは外野がそう呼んでるだけであり、冒険者たちにそういった称号に見合う行動をしなければならない理由はない。
個人的に命を懸けて戦わなければならない戦いは、先日終えた。
後は目的の漆黒石を採掘することに全力を尽くすだけであり、基本的に人肉大好きアイアンイーターの討伐などしたくない。
「鉱山に来るのも久しぶりだな」
まだ冒険者になって数年のアストだが、当初からまんべんなく依頼を受けており、既に採掘経験は十分ある。
採掘用のツルハシも亜空間の中にしまっているので、何かを準備する必要は一切ない。
(そんじゃ、がっつり肉体労働といきますか)
目的の鉱石が出るまで、掘って掘って掘りまくる。
モンスターの討伐もそれなりに重労働ではあるが、アストの中で一番体を動かして働いてるな~~~と思うと仕事は、間違いなく採掘作業だった。
「……ここら辺を掘るか」
今現在、人肉大好きアイアンイーターがコルバ鉱山に住み着いているという情報が出回っていることもあって、ライバルは非常に少ない。
とはいえ、アストはドワーフの様に鉱石の気配、匂いを感じることは出来ず、エルフの様に土の精霊の力を借りて……などといった事は出来ず、ただ直感を信じて採掘するのみ。
「…………まだまだ全然足りないな」
結果、途中途中で襲い掛かって来たモンスターを倒しながら採掘し続け、漆黒石は樽の十分の一ぐらいしか採掘出来なかった。
(あと何日掛かることやら)
人肉大好きアイアンイーターが怖いため、その日のうちにスルパーへ帰還して夕食を食べて即爆睡……することはなく、逆にバーを開きたくなり、明日も採掘するというのに営業を始めた。
278
お気に入りに追加
714
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる