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第68話 互いに見抜く

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(良いね良いね。まだ全然若いのに、下手にカッコつけないし、隠しもしない。こんな冒険者が今王都に居るなんて聞いてねぇけど、絶対に上客だな)

鍛冶師兼従業員の男はショーケースに入っている武器を見渡し……これだと思った商品をアストに紹介しておく。

「切り札が欲しいってことは、付与効果も半端じゃない奴が欲しいってことだよな」

「そうですね。もうかなり自分に限界を感じてるんで、危ないと思った時は直ぐにこういったマジックアイテムを装備して戦っています」

「ほ~~~ぅ……兄ちゃん、良いの使ってんね~~」

男は鑑定系のスキルを使わずとも、アストが取り出したマジックアイテムのランクや質を一目である程度把握し、本当に上客だと再確認。

「腕力、圧倒的な力を求めるなら…………この戦斧かな」

一つ目に紹介された武器は、ぱっと見は業物とは解るが、大型モンスターを倒すにはサイズが物足りないと感じる大きさ。

「この戦斧はな、持ち手の長さや刃のサイズを本人の意思で変えられるんだよ。勿論、限界はあるけどな」

「それは……俺としては、かなり有難いですね」

戦斧という武器自体が嫌いではないため、通常時に扱うこともでき、戦況によって一撃必殺の武器に変えることも出来る。

「腕力強化の効果も付与されてるが、そんじょそこらの強化とは上昇値がちげぇ。んで、こいつは火を……いや、轟炎を纏える逸品だ」

「轟炎、ということは通常の火属性モンスターではない、更に強い化け物の素材が使われていると」

「そういうこった。どうやら火の消化も使い手の意思で行えるみてぇだから、山火事や森林火災になる心配もねぇ」

「それは、火を武器として扱う者としては、非常に有難い効果ですね」

「だろだろ」

火魔法を扱う魔法職が専門の者であれば、魔力操作技術が一定レベルに達すれば容易に消すことが出来る。

雷魔法を使う者であっても、雷によって火災が起きても消すことが可能。

しかし、魔法職が専門でないものの場合、そこら辺の操作が非常に難しい。
依頼を受けたモンスターを倒しても、森や山を火事で丸裸にした場合……犯罪者として扱われるのは決して珍しくない。

だからこそ、魔法武器にそういった効果が付与されていると、使い手としては非常に有難い。

「こいつ以外だと……切り札っていうと、あれだよな。超強い攻撃を放つことが一番なんだよな」

「そうですね。格上の敵を倒せる奥の手の攻撃と言いますか」

「オッケーオッケー。そんなら………………やっぱこいつかな」

男は目の前の客ならと見込んで、ある武器を紹介した。

「ッ、これは……」

「おっ、もしかして兄ちゃん。刀を知ってるのかい」

続いて紹介された武器は、刀。
この大陸の人間にはあまり馴染みのない武器ではあるが、前世が日本人であるアスト(錬)にとっては……実物に触れた事こそないが、知識として頭には入っていた。

加えて、この世界に来てから……触れたことは、ある。

「えぇ、多少と言える程度ですが」

「はっはっは!! それだけでも十分物知りってもんだ。刀って武器は、ロングソードとか短剣、双剣とかじゃ出来ねぇ、居合切りって技がある……ってのも知ってるか」

「はい」

「そうかそうか。そんなら話が早ぇぜ。あっちの戦斧が粉砕力に特化してると例えるなら、こっちの刀は切断力に特化してる逸品だ」

「……………………この、刀。もしかして、ダンジョン産の物ですか?」

アストの質問に、男は増々楽しそうな笑みを浮かべた。

「おうおう、そこまで解るのかよ兄ちゃん。さては……ここ最近王都に来た、高名な冒険者か?」

男はまだベテランとは言えないが、それでも多くの客を見てきたため、見た目や年齢だけで戦闘力は測れるものではないと理解している。

「そんな立場のある冒険者ではありませんよ。ただ、同世代の中では少し優秀といった程度です」

同世代の中で少し優秀程度で、多数のリザードマンの行動を阻害し、Bランククラスまで成長したエイジグリズリーをソロで討伐することなど不可能だが……さすがに初対面の冒険者を相手に、経歴までは解る筈がなく……男はそれ以上深くは掘らなかった。

「おけおけ、そういう事にしておくぜ。んで、こいつの説明がまだだったな。この刀は勿論斬る、貫くことも出来るが、居合斬りの技が付いてるんだよ」

「技付き、ですか。さすがダンジョン産の武器と言いますか」

人間が造った場合でも武器に専用の技が付与されることはあるが、鍛冶師の腕だけではなく運も非常に絡まってくる。

「属性が風ってこともあって、俺の師匠が言うにはミスリルのフルプレートアーマーを着て、尚且つミスリル製の大盾を持ったタンクが相手でも、その居合斬りでぶった斬れるらしい」

「なる、ほど……」

アストもアストで、まだ冒険者活動を始めて三年程度ではあるが、ミーティアに鍛冶師の客が訪れることもあり、生産職の者の腕前もある程度把握出来るようになっていた。

(この人が師と呼ぶ人……親方がそう言うなら、多分出来るんだろうな)

一応値段は記されており、決して購入出来ない金額ではないが、非常に悩まされる額。

「………………ふぅーーー、しょうがない」

そのしょうがないという言葉に、諦めの意味が込められている……のではないと、男はアストの笑みを見て直ぐに察した。
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