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第58話 形だけの
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(さてと、俺の仕事はここからだな)
そもそもな話、今回第五王子であるマティアス・ルーダ・カルダールの護衛依頼を受けたアストではあるものの、少人数とはいえ護衛の騎士や魔術師たちの実力は全員が一級品。
当然ながら鑑定効果が付与されているマジックアイテムなどを使って視ることは出来ないが、それでも自分は護衛としての役目は殆ど意味がないと思ったアスト。
道中……盗賊が襲ってくることはなかったが、モンスターは馬車が王族のものであろうとも、人間という種の事情など関係無しに襲い掛かるが、アストが外に出る必要は一切なく戦闘は終了。
そのまま日が暮れるまで馬車は進み続け、野営タイムに突入。
ここが自分の力を発揮する場だっと思ったアストは、全力で料理に取り掛かった。
「しばしお待ちを」
アストは料理を行う設備を完備している屋台、ミーティアと料理に使う食材を取り出し、全力で調理に取り掛かる。
「……本当に、屋台を持っている? のだな」
「不思議な冒険者だな」
「不思議って言うか、まずいないタイプの冒険者っすよね」
元々護衛として付いていた騎士や魔術師たちも、一応アストの情報に関しては頭に入っていた。
とはいえ、一番若い騎士の言う通りまずいないタイプの冒険者ということもあり、亜空間から馬車が取り出された光景に驚きを隠せなかった。
「アストさん、是非手伝わせていただいてもよろしいでしょうか」
「……では、こちらの野菜の皮むきとカットをお願いします」
「かしこまりました」
メイドとして見てるだけではいけないと思った実力派メイド。
言われた通り、食材に使う野菜の皮をむき、アストに指示された通りのサイズにカットしていく。
その後も戦闘の実力だけあって、それ以外はポンコツ……ではないメイドの手伝いも借り、徐々に料理を作り上げていく。
「ふぅ……お待たせしました」
「わぁ~~~~……す、凄いですね、アストさん!!!!」
「お褒め言葉、光栄です」
凄い。
そんな単純な褒め言葉を、手伝ったメイドや護衛の騎士、魔術師たちも心の中で思いっきり口にした。
「では、冷めないうちに食べましょう」
アヒージョ、サラダ、コーンスープにミートソーススパゲティ、先日討伐したBランク相当まで強くなったエイジグリズリーの肉をメインにしたステーキと特製ソース。
どれも野営で食べるような料理ではなく、酒場などではないそれなりの力を持つ商人や貴族たちが使う様な店で出される料理と、なんら遜色ないでき。
普段であれば、マティアスや騎士たちにとってはそこまで珍しいと思う料理ではないものの……野営が出来る場所ということも相まって、更に食欲がそそられる。
既に実力派メイドが毒の有無などに関しては確認済みであり、マティアスは躊躇なくテーブルに並べられた食事を食べ始めた。
「っ!!! 美味しいです!!!」
「そう言って頂けると幸いです」
マティアスの口から零れた純粋な感想は、決してお世辞ではなかった。
王城にいる間、身分を隠して学園に通っていた間も、良い食事を食べてきた。
そんな料理と比べて……アストが作った料理は、全く負けていなかった。
(まさか、王族の方に料理を振る舞う機会がくるとはな……人生、何があるか分からないものだな)
マティアスだけではなく、騎士たちも美味いという感想を思いっきり顔に出しながら食べる……その光景を見ていると、自然と笑みが零れる。
そして夕食後、アストは見張りを行う……のではなく、何故か空間作用が施されたテントの中で、再びマティアスの話相手になっていた。
(……良いのか? いや、一応俺は先に見張りをするとは口にしたのだから……それでもマティアス様が寝るまで話し相手になってほしいと頼まれたのだから、問題無いんだよな?)
実力派メイドが用意した食後の紅茶を飲みながら、マティアスは改めてアストの料理を褒め始めた。
「アストさん。アストさんが作ってくれた料理、本当に美味しかったです」
「ありがとうございます。とはいえ、本職の方々には及びませんが」
「いえ、そんな事はありません。本当に……心の底から美味しいと感じました」
「……恐縮です」
「正直なところ、スカウトしたいと思いました」
「っ!!!!????」
マティアスが発した言葉に驚愕の表情を浮かべるのは……アストだけであり、実力派メイドとテントの中でマティアスを護衛している騎士は、全く驚いていなかった。
「アストさんが、これからも冒険者として……バーテンダーとして生きていくという、既に人生の目標を持っているのは解っています。なので、これはただの感想です」
ただの感想……それは、アストも解っていた。
それでも実際に、王族からスカウトされたという事実に変わりはない。
(ぎ、ギルドはこうなる事を解っていた、のか? マティアス様が今回のことを無意味に他の人に伝えるとは思わないが……………というか、それよりもメイドさん達、なんでマティアス様の勧誘にツッコんでくれないんだよ!)
実際にここで「そうですか、自分の能力を評価していただき光栄です」と答えるだけで十分なのだが、アストのバクバクと高鳴り始めた心臓は全く落ち着かない。
そもそもな話、今回第五王子であるマティアス・ルーダ・カルダールの護衛依頼を受けたアストではあるものの、少人数とはいえ護衛の騎士や魔術師たちの実力は全員が一級品。
当然ながら鑑定効果が付与されているマジックアイテムなどを使って視ることは出来ないが、それでも自分は護衛としての役目は殆ど意味がないと思ったアスト。
道中……盗賊が襲ってくることはなかったが、モンスターは馬車が王族のものであろうとも、人間という種の事情など関係無しに襲い掛かるが、アストが外に出る必要は一切なく戦闘は終了。
そのまま日が暮れるまで馬車は進み続け、野営タイムに突入。
ここが自分の力を発揮する場だっと思ったアストは、全力で料理に取り掛かった。
「しばしお待ちを」
アストは料理を行う設備を完備している屋台、ミーティアと料理に使う食材を取り出し、全力で調理に取り掛かる。
「……本当に、屋台を持っている? のだな」
「不思議な冒険者だな」
「不思議って言うか、まずいないタイプの冒険者っすよね」
元々護衛として付いていた騎士や魔術師たちも、一応アストの情報に関しては頭に入っていた。
とはいえ、一番若い騎士の言う通りまずいないタイプの冒険者ということもあり、亜空間から馬車が取り出された光景に驚きを隠せなかった。
「アストさん、是非手伝わせていただいてもよろしいでしょうか」
「……では、こちらの野菜の皮むきとカットをお願いします」
「かしこまりました」
メイドとして見てるだけではいけないと思った実力派メイド。
言われた通り、食材に使う野菜の皮をむき、アストに指示された通りのサイズにカットしていく。
その後も戦闘の実力だけあって、それ以外はポンコツ……ではないメイドの手伝いも借り、徐々に料理を作り上げていく。
「ふぅ……お待たせしました」
「わぁ~~~~……す、凄いですね、アストさん!!!!」
「お褒め言葉、光栄です」
凄い。
そんな単純な褒め言葉を、手伝ったメイドや護衛の騎士、魔術師たちも心の中で思いっきり口にした。
「では、冷めないうちに食べましょう」
アヒージョ、サラダ、コーンスープにミートソーススパゲティ、先日討伐したBランク相当まで強くなったエイジグリズリーの肉をメインにしたステーキと特製ソース。
どれも野営で食べるような料理ではなく、酒場などではないそれなりの力を持つ商人や貴族たちが使う様な店で出される料理と、なんら遜色ないでき。
普段であれば、マティアスや騎士たちにとってはそこまで珍しいと思う料理ではないものの……野営が出来る場所ということも相まって、更に食欲がそそられる。
既に実力派メイドが毒の有無などに関しては確認済みであり、マティアスは躊躇なくテーブルに並べられた食事を食べ始めた。
「っ!!! 美味しいです!!!」
「そう言って頂けると幸いです」
マティアスの口から零れた純粋な感想は、決してお世辞ではなかった。
王城にいる間、身分を隠して学園に通っていた間も、良い食事を食べてきた。
そんな料理と比べて……アストが作った料理は、全く負けていなかった。
(まさか、王族の方に料理を振る舞う機会がくるとはな……人生、何があるか分からないものだな)
マティアスだけではなく、騎士たちも美味いという感想を思いっきり顔に出しながら食べる……その光景を見ていると、自然と笑みが零れる。
そして夕食後、アストは見張りを行う……のではなく、何故か空間作用が施されたテントの中で、再びマティアスの話相手になっていた。
(……良いのか? いや、一応俺は先に見張りをするとは口にしたのだから……それでもマティアス様が寝るまで話し相手になってほしいと頼まれたのだから、問題無いんだよな?)
実力派メイドが用意した食後の紅茶を飲みながら、マティアスは改めてアストの料理を褒め始めた。
「アストさん。アストさんが作ってくれた料理、本当に美味しかったです」
「ありがとうございます。とはいえ、本職の方々には及びませんが」
「いえ、そんな事はありません。本当に……心の底から美味しいと感じました」
「……恐縮です」
「正直なところ、スカウトしたいと思いました」
「っ!!!!????」
マティアスが発した言葉に驚愕の表情を浮かべるのは……アストだけであり、実力派メイドとテントの中でマティアスを護衛している騎士は、全く驚いていなかった。
「アストさんが、これからも冒険者として……バーテンダーとして生きていくという、既に人生の目標を持っているのは解っています。なので、これはただの感想です」
ただの感想……それは、アストも解っていた。
それでも実際に、王族からスカウトされたという事実に変わりはない。
(ぎ、ギルドはこうなる事を解っていた、のか? マティアス様が今回のことを無意味に他の人に伝えるとは思わないが……………というか、それよりもメイドさん達、なんでマティアス様の勧誘にツッコんでくれないんだよ!)
実際にここで「そうですか、自分の能力を評価していただき光栄です」と答えるだけで十分なのだが、アストのバクバクと高鳴り始めた心臓は全く落ち着かない。
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