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第54話 我が道を行く
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オールドファッションド・グラスにウィスキー45、角砂糖とアンゴスチュラ・ビターズ、スライスしたレモンを使ったカクテル。
オールド・ファッションド。
「マスター、本当に奢りで良いのか?」
「えぇ、勿論です。お二人だけにサービスです」
えぇ~~~~、というルーキーたちからの不満が零れることはなく、グラスを手に取った二人は……苦笑いを浮かべながら、グラスを合わせ、まずは一口。
「っ、ふっふっふ……良いな。匂いはそこまで強くない。ただ、重厚さはこれまで呑んで来たカクテルの中でも、かなり強い」
「そうだな。お前の言う通り……良い重さだ。ただ、なんと言うか……思ったよりも呑みやすいが、アルコールの重さではなく、これは……ウィスキーの重さと言うべきか」
二人はもう一口呑み、互いに満足そうな顔を浮かべた。
「っ…………アス、じゃなくてマスター、俺も二人と同じカクテルをください!」
「お、俺も!!」
「私も同じのをください」
カッコイイ大人二人が美味しそうに呑む姿を見て、自分たちの呑みたくなってしまった三人。
(ん、ん~~~~~…………まぁ、大人が二人もいるんだし、大丈夫か)
人が子供の頃、タバコや酒……ピアスなどに憧れるのと同じ気持ちだろうと、昔を思い出しながらふと笑みを零し、三人からの注文を受けて再度オールド・ファッションドを作った。
「お待たせしました」
目の前に置かれたオールド・ファッションドを手に取り、三人は恐る恐る……口に含み、飲み込んだ。
「「「~~~~~~っ!!」」」
そして三人共、なんとも言い難い……渋い表情をした。
「お、美味しい、です」
「はは、無理しなくても大丈夫ですよ。カットしたレモンを入れているとはいえ、好んで呑む人が居るかと言われれば、そうではないものですから」
カクテルというドリンクが……全て美味しい訳ではない。
カクテルが好きな人でも、全てのカクテルを好んで呑むことはない。
アストの場合は……カクテルという存在に惚れ込んでいるため、基本的に好き嫌いはないという、ちょっと珍しいタイプ。
三人はアルコールを、エールこそ何度も呑んできたが、重さが強烈なカクテルはこれまで呑んだことがなかった。
「なっはっは! 確かに、まだお前らにはきつかったかもな。まっ、大人になれば解る味なのかもな」
「若い頃から中々に酒豪だったお前が言っても、あまり説得力はないな」
懐かしい記憶が蘇る。
忘れていた筈の記憶でさえ、鮮明に思い浮かんでくる。
「んだよ。ルンバートだって、若い頃から酒豪だったじゃねぇか」
「ふふ……それもそうだな」
親友と言える関係になってからは、仲間内だけではなく、二人で呑みに行くことも珍しくなく……そんな過去まで思い出してしまったルンバートは、思わず涙を流しそうになった。
(っ……ふっふっふ。私も歳を取ったものだ、なんて言葉をこんなにも早く思ってしまうとは)
バレないように零れた涙を拭きとり……もう一度友人に、親友に尋ねた。
「フランツ…………冒険者は、楽しいか?」
「ん? なんだよ、さっきも聞いたぞ、その質問。楽しいに決まってるだろ。まるでガキの頃にしか感じられないワクワク感? それを味わい続けてる感じだ」
「子供の頃にしか感じられないワクワク感、か…………三十を過ぎても、そういった楽しさは忘れてないものだな」
「へっへっへ、そうだろ……なぁ、ルンバート。お前こそ、教師生活を楽しんでるか?」
返された質問。
質問をした親友の顔には……自分を楽しんでいたと。
教師生活に飽きたから冒険者という新たな道に進んだのではないと、ハッキリ記されていた。
「……当然だろ。確かに、毎日同じ様なことを繰り返している様に見えるかもしれない。それでも……私は、生徒の努力が花開く瞬間を見る時が……たまらなく、自分の
ことのように嬉しい」
学生の時……騎士として活動していた時期。
それぞれの時期にしか感じられない楽しさ、嬉しさというのはある。
だが……今、ルンバートは胸を張って、教師という生徒に寄り添い、導き、育て……時には気付かされる。
そんな生活を、心の底から楽しんでいる。
「はっはっは!!!!! いやぁ~~~、それを言われちまうとあれだなぁ……へっへっへ、俺もって言いたくなっちまうな」
「そうだろ……フランツ、私はこれからも未来の騎士を育て続ける。例え……彼等の中に、騎士ではなく別の道に進む者がいたとしても、寄り添い……導けるように、私自身も研鑽を続けていく」
「教え子が、急に冒険者になりたいって言いだしてもか?」
「それなら、お前に臨時教師として依頼しよう」
「っ……だっはっは!!!! んだよ、随分と頭が柔らかくなったんじゃねぇの?」
「かもしれないな。だから、お前はお前で冒険者として、騎士の時以上に大成するんだぞ。その方が、臨時教師として呼びやすいからな」
「任せろ!!! これから二十年は現役で活動し続けるつもりだからな!!!」
オールド・ファッションドのカクテル言葉は……我が道を行く。
道を別れれど、彼らを後悔することなく、自らが選んだ道を歩み続ける。
オールド・ファッションド。
「マスター、本当に奢りで良いのか?」
「えぇ、勿論です。お二人だけにサービスです」
えぇ~~~~、というルーキーたちからの不満が零れることはなく、グラスを手に取った二人は……苦笑いを浮かべながら、グラスを合わせ、まずは一口。
「っ、ふっふっふ……良いな。匂いはそこまで強くない。ただ、重厚さはこれまで呑んで来たカクテルの中でも、かなり強い」
「そうだな。お前の言う通り……良い重さだ。ただ、なんと言うか……思ったよりも呑みやすいが、アルコールの重さではなく、これは……ウィスキーの重さと言うべきか」
二人はもう一口呑み、互いに満足そうな顔を浮かべた。
「っ…………アス、じゃなくてマスター、俺も二人と同じカクテルをください!」
「お、俺も!!」
「私も同じのをください」
カッコイイ大人二人が美味しそうに呑む姿を見て、自分たちの呑みたくなってしまった三人。
(ん、ん~~~~~…………まぁ、大人が二人もいるんだし、大丈夫か)
人が子供の頃、タバコや酒……ピアスなどに憧れるのと同じ気持ちだろうと、昔を思い出しながらふと笑みを零し、三人からの注文を受けて再度オールド・ファッションドを作った。
「お待たせしました」
目の前に置かれたオールド・ファッションドを手に取り、三人は恐る恐る……口に含み、飲み込んだ。
「「「~~~~~~っ!!」」」
そして三人共、なんとも言い難い……渋い表情をした。
「お、美味しい、です」
「はは、無理しなくても大丈夫ですよ。カットしたレモンを入れているとはいえ、好んで呑む人が居るかと言われれば、そうではないものですから」
カクテルというドリンクが……全て美味しい訳ではない。
カクテルが好きな人でも、全てのカクテルを好んで呑むことはない。
アストの場合は……カクテルという存在に惚れ込んでいるため、基本的に好き嫌いはないという、ちょっと珍しいタイプ。
三人はアルコールを、エールこそ何度も呑んできたが、重さが強烈なカクテルはこれまで呑んだことがなかった。
「なっはっは! 確かに、まだお前らにはきつかったかもな。まっ、大人になれば解る味なのかもな」
「若い頃から中々に酒豪だったお前が言っても、あまり説得力はないな」
懐かしい記憶が蘇る。
忘れていた筈の記憶でさえ、鮮明に思い浮かんでくる。
「んだよ。ルンバートだって、若い頃から酒豪だったじゃねぇか」
「ふふ……それもそうだな」
親友と言える関係になってからは、仲間内だけではなく、二人で呑みに行くことも珍しくなく……そんな過去まで思い出してしまったルンバートは、思わず涙を流しそうになった。
(っ……ふっふっふ。私も歳を取ったものだ、なんて言葉をこんなにも早く思ってしまうとは)
バレないように零れた涙を拭きとり……もう一度友人に、親友に尋ねた。
「フランツ…………冒険者は、楽しいか?」
「ん? なんだよ、さっきも聞いたぞ、その質問。楽しいに決まってるだろ。まるでガキの頃にしか感じられないワクワク感? それを味わい続けてる感じだ」
「子供の頃にしか感じられないワクワク感、か…………三十を過ぎても、そういった楽しさは忘れてないものだな」
「へっへっへ、そうだろ……なぁ、ルンバート。お前こそ、教師生活を楽しんでるか?」
返された質問。
質問をした親友の顔には……自分を楽しんでいたと。
教師生活に飽きたから冒険者という新たな道に進んだのではないと、ハッキリ記されていた。
「……当然だろ。確かに、毎日同じ様なことを繰り返している様に見えるかもしれない。それでも……私は、生徒の努力が花開く瞬間を見る時が……たまらなく、自分の
ことのように嬉しい」
学生の時……騎士として活動していた時期。
それぞれの時期にしか感じられない楽しさ、嬉しさというのはある。
だが……今、ルンバートは胸を張って、教師という生徒に寄り添い、導き、育て……時には気付かされる。
そんな生活を、心の底から楽しんでいる。
「はっはっは!!!!! いやぁ~~~、それを言われちまうとあれだなぁ……へっへっへ、俺もって言いたくなっちまうな」
「そうだろ……フランツ、私はこれからも未来の騎士を育て続ける。例え……彼等の中に、騎士ではなく別の道に進む者がいたとしても、寄り添い……導けるように、私自身も研鑽を続けていく」
「教え子が、急に冒険者になりたいって言いだしてもか?」
「それなら、お前に臨時教師として依頼しよう」
「っ……だっはっは!!!! んだよ、随分と頭が柔らかくなったんじゃねぇの?」
「かもしれないな。だから、お前はお前で冒険者として、騎士の時以上に大成するんだぞ。その方が、臨時教師として呼びやすいからな」
「任せろ!!! これから二十年は現役で活動し続けるつもりだからな!!!」
オールド・ファッションドのカクテル言葉は……我が道を行く。
道を別れれど、彼らを後悔することなく、自らが選んだ道を歩み続ける。
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