51 / 167
第51話 重用すべき意思
しおりを挟む
「どうぞ」
「「「……」」」
既に日が暮れており、野営の準備を行っていたアストたち。
そんな中でアストはというと、当然の様に……当たり前の様に夕食の準備を始めた。
「あ、アスト……さん」
「ん? どうした。冷める前に食べてくれよ」
「う、うん…………あのさ、俺ら今そんなに金持ってないんだけど」
調理中、アストは平然と調味料に塩や香辛料、チーズなどを使用していた。
ルーキー三人からすれば、目の前の料理は……下手すれば酒場で食べる料理よりも豪華に思える。
「うん、美味い!!!!」
「フランツさん。あまり大きな声を出すと、モンスターに気付かれてしまいます」
「おっと、そうだったな。いや、しかし大絶賛したくなるこの料理も罪だな~」
ルーキーたちが本当に金を払わず、目の前の料理を食べても良いのかと悩んでいる中、フランツは一切遠慮せずに食べていた。
「フランツさんもこうしてがっつり食べてるんだ。ほら、冷める前に食べちまいな」
「う、うっす」
三人とも非常に固い動きをしながらも、ゆっくりを目の前のトロッとしたチーズが掛かった肉料理に手を伸ばす。
「っ!!! ……や、やべぇ…………や、ヤバい、っすね」
「ふっふっふ、そう言ってくれると嬉しいよ。ただ、この料理に関しては塩や胡椒がなくても、チーズがあれば良い触感になる。気に入ったくれたなら、野営にチーズを持参すると良い」
野営という場所で食べるからこそ、チーズの悪魔的な美味さ、満足感が体を満たしていくが……これに関しては、アストが何か特別スキルや技術を持っているからではない。
「昼前に言わなかったが、金に余裕があるなら。冒険中にテンションを上げる為に、多少金をかけても良いと思うよ」
「………………俺、これからちょっと酒に使う金を減らします」
「俺もだなわぁ……酒代減らしって、野営でこんな美味い飯を食えるなら、我慢する価値ありだな」
「おいおいお前ら、酒代を減らしちゃったら、アストの美味い酒……カクテルが呑めなくなるぞ」
「あっ! そういえばアストさんって、一つの街に長期間滞在しないっすもんね」
「一応な」
今回はアストにしては珍しく一つの街に長期間滞在しているが、そろそろ移動しようかなとは考えていた。
「財布に余裕があるなら、来てくれると嬉しいよ」
「アストの店は超安いぞ!! なんなら、今回の依頼が終わったら俺が奢ってやるぞ!!」
「「「良いんですか!!!!」」」
「おうよ! 勿論だぜ!!!」
(……酔ってないよな?)
フランツがもしや酔っているのでは? と疑うも、元々の性格が出ていただけであった。
そして翌日、夜中の間にモンスターや盗賊に襲われることなく、朝を迎えた。
「……アストさん、今度絶対にお店に行かせてもらいます」
「そうか? 楽しみに待ってるよ」
朝食は簡素なサンドイッチ……ではあるが、非常に温かい。
加えて肉厚であり、悪くない満腹感を得られ……ルーキー三人は、本当にこれをタダで食べられることに対して、金を払わないことに罪悪感を感じてしまう。
そのため、フランツに奢って貰うのとは別の機会で、必ずアストの店を訪れようと決めた。
「おっ、アスト。ありゃあ、目当てのモンスターだよな」
「そうですね。ただ……ちょっと数が多いですね」
昼食を食べ終えてから約一時間後、標的のモンスター……グレーウルフを発見。
しかし、その数が十を越えていた。
(半分で良いんだが……ちょっと多いな)
離れた場所で固まって行動しているグレーウルフたちは……まだアストたちの方に気付いていない。
(……俺は助っ人みたいな立場だし、優先すべきか三人とフランツさんの意思だよな)
チラッと視線を向けると、フランツは戦る気満々な表情を浮かべているが……アストと同じく、ルーキー三人の意思を窺っていた。
「……どうする、戦るか?」
「…………戦りたいっす。逃げたくないっす」
「俺も同じですね」
「私もです」
「オッケー。フランツさんは……」
「全力で戦ろうか!」
全員の意思が決まったところで、襲撃開始。
アストは前に出てロングソードを振るわず、遠距離で攻撃を行いながらサポートを行う。
フランツも前には出るが、ルーキーたちの成長の機会を奪わず……器用に立ち回り続けた。
その結果……ルーキーたちが重傷一歩手前の傷を負うも、三人の中で誰一人欠けることなく討伐に成功。
「っしゃ!!!!!」
リーダーの青年が喜びに震えながらガッツポーズを行い、残り二人もそれに釣られる。
(懐かしいな……バーテンダーとして活動するっていうのは、この世界に生まれてからの目標は変わらなかったけど、危機を乗り越えてモンスターを討伐出来た時はあんな感じで盛り上がってたよな……本当に懐かしいな)
完全に爺臭い……保護者的な眼を向けていることに気付かないアスト。
「「っ!!!!」」
だが、伊達に経験は積んでおらず、フランツとほぼ同じタイミングである方向に体を向けた。
「「「……」」」
既に日が暮れており、野営の準備を行っていたアストたち。
そんな中でアストはというと、当然の様に……当たり前の様に夕食の準備を始めた。
「あ、アスト……さん」
「ん? どうした。冷める前に食べてくれよ」
「う、うん…………あのさ、俺ら今そんなに金持ってないんだけど」
調理中、アストは平然と調味料に塩や香辛料、チーズなどを使用していた。
ルーキー三人からすれば、目の前の料理は……下手すれば酒場で食べる料理よりも豪華に思える。
「うん、美味い!!!!」
「フランツさん。あまり大きな声を出すと、モンスターに気付かれてしまいます」
「おっと、そうだったな。いや、しかし大絶賛したくなるこの料理も罪だな~」
ルーキーたちが本当に金を払わず、目の前の料理を食べても良いのかと悩んでいる中、フランツは一切遠慮せずに食べていた。
「フランツさんもこうしてがっつり食べてるんだ。ほら、冷める前に食べちまいな」
「う、うっす」
三人とも非常に固い動きをしながらも、ゆっくりを目の前のトロッとしたチーズが掛かった肉料理に手を伸ばす。
「っ!!! ……や、やべぇ…………や、ヤバい、っすね」
「ふっふっふ、そう言ってくれると嬉しいよ。ただ、この料理に関しては塩や胡椒がなくても、チーズがあれば良い触感になる。気に入ったくれたなら、野営にチーズを持参すると良い」
野営という場所で食べるからこそ、チーズの悪魔的な美味さ、満足感が体を満たしていくが……これに関しては、アストが何か特別スキルや技術を持っているからではない。
「昼前に言わなかったが、金に余裕があるなら。冒険中にテンションを上げる為に、多少金をかけても良いと思うよ」
「………………俺、これからちょっと酒に使う金を減らします」
「俺もだなわぁ……酒代減らしって、野営でこんな美味い飯を食えるなら、我慢する価値ありだな」
「おいおいお前ら、酒代を減らしちゃったら、アストの美味い酒……カクテルが呑めなくなるぞ」
「あっ! そういえばアストさんって、一つの街に長期間滞在しないっすもんね」
「一応な」
今回はアストにしては珍しく一つの街に長期間滞在しているが、そろそろ移動しようかなとは考えていた。
「財布に余裕があるなら、来てくれると嬉しいよ」
「アストの店は超安いぞ!! なんなら、今回の依頼が終わったら俺が奢ってやるぞ!!」
「「「良いんですか!!!!」」」
「おうよ! 勿論だぜ!!!」
(……酔ってないよな?)
フランツがもしや酔っているのでは? と疑うも、元々の性格が出ていただけであった。
そして翌日、夜中の間にモンスターや盗賊に襲われることなく、朝を迎えた。
「……アストさん、今度絶対にお店に行かせてもらいます」
「そうか? 楽しみに待ってるよ」
朝食は簡素なサンドイッチ……ではあるが、非常に温かい。
加えて肉厚であり、悪くない満腹感を得られ……ルーキー三人は、本当にこれをタダで食べられることに対して、金を払わないことに罪悪感を感じてしまう。
そのため、フランツに奢って貰うのとは別の機会で、必ずアストの店を訪れようと決めた。
「おっ、アスト。ありゃあ、目当てのモンスターだよな」
「そうですね。ただ……ちょっと数が多いですね」
昼食を食べ終えてから約一時間後、標的のモンスター……グレーウルフを発見。
しかし、その数が十を越えていた。
(半分で良いんだが……ちょっと多いな)
離れた場所で固まって行動しているグレーウルフたちは……まだアストたちの方に気付いていない。
(……俺は助っ人みたいな立場だし、優先すべきか三人とフランツさんの意思だよな)
チラッと視線を向けると、フランツは戦る気満々な表情を浮かべているが……アストと同じく、ルーキー三人の意思を窺っていた。
「……どうする、戦るか?」
「…………戦りたいっす。逃げたくないっす」
「俺も同じですね」
「私もです」
「オッケー。フランツさんは……」
「全力で戦ろうか!」
全員の意思が決まったところで、襲撃開始。
アストは前に出てロングソードを振るわず、遠距離で攻撃を行いながらサポートを行う。
フランツも前には出るが、ルーキーたちの成長の機会を奪わず……器用に立ち回り続けた。
その結果……ルーキーたちが重傷一歩手前の傷を負うも、三人の中で誰一人欠けることなく討伐に成功。
「っしゃ!!!!!」
リーダーの青年が喜びに震えながらガッツポーズを行い、残り二人もそれに釣られる。
(懐かしいな……バーテンダーとして活動するっていうのは、この世界に生まれてからの目標は変わらなかったけど、危機を乗り越えてモンスターを討伐出来た時はあんな感じで盛り上がってたよな……本当に懐かしいな)
完全に爺臭い……保護者的な眼を向けていることに気付かないアスト。
「「っ!!!!」」
だが、伊達に経験は積んでおらず、フランツとほぼ同じタイミングである方向に体を向けた。
278
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる