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第43話 本当にそれだけで構わない
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「オオオオォォアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」
エイジグリズリーに足りなかったのは……経験。
野性を、本能を全開にして戦う人間がいるという事を知らなかった。
そうなった人間の身体能力が同変化するのか、知らなかった。
「ハァ、ハァ、ハァ、はぁ…………ふぅーーーー。討伐、完了」
最終的に手刀でエイジグリズリーの喉を貫くことで、死合いが終わった。
「ま、マスター。大丈夫ですか」
「えぇ、大丈夫ですよ、カイン様。使うと、かなり体力が消耗する技を使用しただけでのすので、問題はありません」
「そうでしたか……本当に良かった」
いったいどういった技なのか、冷静に最後のアストとエイジグリズリーの戦いを振り返れば、ある程度は理解出来る。
(まさか、マスターがあのような技を持っていたとは……本当に底知れない方だ)
この後、アストたちはひとまずエイジグリズリーの死体を回収し、森の浅い場所へと移動。
そしてある程度悪くない状態で全身が残っているエイジグリズリーの死体の解体を始めた。
まだそれなりに疲れが残っているアストも当然参加。
カインたちは休んでくれと伝えたが、この中でアストが一番解体慣れしているのも確かであった。
「よし、こんなところですね。では……素材をどう分配するか話し合う前に、食事にしましょう」
夕食にエイジグリズリーの肉を使うということに異論はなく、アストは亜空間から野菜や調味料を取り出し、料理を始めた。
「カイン、もしかしてこの人が、前に話してた……バーテンダー、なのか?」
「そうだよ。私が抱えていた心のモヤモヤを取り払ってくれた、素敵なバーテンダーさ」
学友が、友人が嘘を言っている様には思えない。
しかし……彼等にとっては、恐ろしく強いバーテンダー? という印象の方が強い。
「お待たせしました。さぁ、空いた腹を満たしてください」
それでも、野営とは思えない料理を目の前に出されては……僅かな疑問など完全に吹き飛んでしまう。
「う、うめぇ……マジでうめぇ」
彼等はカインと同じく、貴族の令息。
実家にいる時、学園に居る時も平民たちが簡単には食べられない高級な料理を食べてきた彼らが……モンスターがいる森の中で、思わず叫びたくなるほどの美味さを感じた。
(彼らの言う通り、本当に……美味い。噛みやすいのだが、程よく硬さもある。いや、部位によってか……それでも、この食べ終えても舌に……口の中に美味さが残る味……ふふ、エイジグリズリーがBランククラスまで成長していたことに、心の底から感謝しなければな)
結果として、いつも以上に疲労してしまったアストだが、Bランクにまで実力が成長したエイジグリズリーにはそれだけの価値があった。
そしてそんなエイジグリズリーの肉と、アストが調理した料理を食べ終えた後……ようやく素材の分配に関する話し合いが行われる。
「それでは、エイジグリズリーの素材分配について話し合いましょうか」
カインたちはしっかりと目的があって、街から離れた森を訪れていた。
しかし、エイジグリズリーとの遭遇は完全に想定外。
分配もなにも、戦闘内容からして自分たちが貰えるわけがないと思っていた。
「俺はエイジグリズリーの肉や内臓が欲しくて、一人でここまで来て探索してた。だから、できれば残りの肉や内臓が欲しい」
「…………え、えっと。カインから少し話を聞いてるんだが、あんたは……あ、アストさんは、冒険者でもあるんだよな」
アストは平民……村出身の冒険者であり、実は貴族の隠し子といった存在でもない。
基本的に権力的な意味での立場は彼等の方が上だが……彼等は見てしまった。
結果的に一人でエイジグリズリーを仕留めるアストの姿を。
決してアストは狙っていた訳ではないが、ブレイブ・ブルを使った状態で倒したこともあり、彼らは初対面のアストに敬意を持つようになった。
「はい、そうです。でも、冒険者は副業で、バーテンダーが本業なので」
エイジグリズリーの肉が欲しいと思ったのは私的な理由ではあるが、冒険者が副業で本業はバーテンダーというのは決して間違ってはいない。
「なので、肉や内臓を頂ければ問題ありません」
「マスター」
「カイン様、ここはミーティアではありませんので、是非気軽にアストと呼んでください」
「……解った。では、ここではアストと呼ばせてもらいます。素材に関してですが、さすがに肉や内臓以外の素材を全て受け取ることは出来ません」
自分たちの力で討伐したモンスター。
それは彼らが学園内で生活する上で、非常に重要な評価になる。
とはいえ、世の中には噓を見抜くマジックアイテムやスキルが存在する。
そういった理由も含めて、カインたちはエイジグリズリーの素材を受け取れない。
「では、魔石だけ頂きましょう。他の毛皮や爪、歯、骨などは皆さんの為に使ってください。今回戦ったエイジグリズリーは間違いなくBランクの領域まで成長していました。毛皮や骨など、武器や防具を造るのに良い素材になるかと」
目の前のバーテンダー兼冒険者の顔に……貴族の前だから、という見栄などは一切なかった。
エイジグリズリーに足りなかったのは……経験。
野性を、本能を全開にして戦う人間がいるという事を知らなかった。
そうなった人間の身体能力が同変化するのか、知らなかった。
「ハァ、ハァ、ハァ、はぁ…………ふぅーーーー。討伐、完了」
最終的に手刀でエイジグリズリーの喉を貫くことで、死合いが終わった。
「ま、マスター。大丈夫ですか」
「えぇ、大丈夫ですよ、カイン様。使うと、かなり体力が消耗する技を使用しただけでのすので、問題はありません」
「そうでしたか……本当に良かった」
いったいどういった技なのか、冷静に最後のアストとエイジグリズリーの戦いを振り返れば、ある程度は理解出来る。
(まさか、マスターがあのような技を持っていたとは……本当に底知れない方だ)
この後、アストたちはひとまずエイジグリズリーの死体を回収し、森の浅い場所へと移動。
そしてある程度悪くない状態で全身が残っているエイジグリズリーの死体の解体を始めた。
まだそれなりに疲れが残っているアストも当然参加。
カインたちは休んでくれと伝えたが、この中でアストが一番解体慣れしているのも確かであった。
「よし、こんなところですね。では……素材をどう分配するか話し合う前に、食事にしましょう」
夕食にエイジグリズリーの肉を使うということに異論はなく、アストは亜空間から野菜や調味料を取り出し、料理を始めた。
「カイン、もしかしてこの人が、前に話してた……バーテンダー、なのか?」
「そうだよ。私が抱えていた心のモヤモヤを取り払ってくれた、素敵なバーテンダーさ」
学友が、友人が嘘を言っている様には思えない。
しかし……彼等にとっては、恐ろしく強いバーテンダー? という印象の方が強い。
「お待たせしました。さぁ、空いた腹を満たしてください」
それでも、野営とは思えない料理を目の前に出されては……僅かな疑問など完全に吹き飛んでしまう。
「う、うめぇ……マジでうめぇ」
彼等はカインと同じく、貴族の令息。
実家にいる時、学園に居る時も平民たちが簡単には食べられない高級な料理を食べてきた彼らが……モンスターがいる森の中で、思わず叫びたくなるほどの美味さを感じた。
(彼らの言う通り、本当に……美味い。噛みやすいのだが、程よく硬さもある。いや、部位によってか……それでも、この食べ終えても舌に……口の中に美味さが残る味……ふふ、エイジグリズリーがBランククラスまで成長していたことに、心の底から感謝しなければな)
結果として、いつも以上に疲労してしまったアストだが、Bランクにまで実力が成長したエイジグリズリーにはそれだけの価値があった。
そしてそんなエイジグリズリーの肉と、アストが調理した料理を食べ終えた後……ようやく素材の分配に関する話し合いが行われる。
「それでは、エイジグリズリーの素材分配について話し合いましょうか」
カインたちはしっかりと目的があって、街から離れた森を訪れていた。
しかし、エイジグリズリーとの遭遇は完全に想定外。
分配もなにも、戦闘内容からして自分たちが貰えるわけがないと思っていた。
「俺はエイジグリズリーの肉や内臓が欲しくて、一人でここまで来て探索してた。だから、できれば残りの肉や内臓が欲しい」
「…………え、えっと。カインから少し話を聞いてるんだが、あんたは……あ、アストさんは、冒険者でもあるんだよな」
アストは平民……村出身の冒険者であり、実は貴族の隠し子といった存在でもない。
基本的に権力的な意味での立場は彼等の方が上だが……彼等は見てしまった。
結果的に一人でエイジグリズリーを仕留めるアストの姿を。
決してアストは狙っていた訳ではないが、ブレイブ・ブルを使った状態で倒したこともあり、彼らは初対面のアストに敬意を持つようになった。
「はい、そうです。でも、冒険者は副業で、バーテンダーが本業なので」
エイジグリズリーの肉が欲しいと思ったのは私的な理由ではあるが、冒険者が副業で本業はバーテンダーというのは決して間違ってはいない。
「なので、肉や内臓を頂ければ問題ありません」
「マスター」
「カイン様、ここはミーティアではありませんので、是非気軽にアストと呼んでください」
「……解った。では、ここではアストと呼ばせてもらいます。素材に関してですが、さすがに肉や内臓以外の素材を全て受け取ることは出来ません」
自分たちの力で討伐したモンスター。
それは彼らが学園内で生活する上で、非常に重要な評価になる。
とはいえ、世の中には噓を見抜くマジックアイテムやスキルが存在する。
そういった理由も含めて、カインたちはエイジグリズリーの素材を受け取れない。
「では、魔石だけ頂きましょう。他の毛皮や爪、歯、骨などは皆さんの為に使ってください。今回戦ったエイジグリズリーは間違いなくBランクの領域まで成長していました。毛皮や骨など、武器や防具を造るのに良い素材になるかと」
目の前のバーテンダー兼冒険者の顔に……貴族の前だから、という見栄などは一切なかった。
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