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第29話 もっと貪欲に
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「そして、これは考えに関するアドバイスではなく、冒険者としての個人的なアドバイスです」
カイン・ルナリアスは強い。
現時点で、得物のぶつかり合いとなると、技術力では負けるという確信に近い感覚があった。
それでも……一つだけで、アストに出来るアドバイスがあった。
「もっと、戦闘に関して貪欲に学べば、こえから先救える命が多くなるかもしれません」
「貪欲に学ぶ、ですか」
「はい。戦いというのは、敵を倒すだけでは完結はしません。後ろに守るべき存在などがいる場合は特に」
「守りながら勝つ方法が必要になる、という訳ですね」
理解が早くて助かると思いながら、助言を続ける。
「その通りです。どう守るか……そういった物事に目を向けると、貴族の令息であるカイン様であれば色々と頭に考えが浮かばれるでしょう。勝つことも、守ることも単純ではない…………既にご理解しているかもしれませんが、大事な事かと思い、伝えさせていただきました」
「……店主よ、そんな事はありません。先程とあなたが教えて頂いた通り、他人に伝えられなければ、そういった知っていた筈の知識、常識を思い出せません。あなたのお陰で……心が晴れました」
「そう言って頂けると、幸いです」
カインはまだ残っていたラムコークを飲み干し……広がる甘い後味がもう一度アストからのアドバイスを反芻させる。
(私は……今よりも更に強くなる。そして広く、深く知識を得る。今学べる物を全て学ぼう!!!! 貪欲に、強くなろう)
黒く大きなモヤモヤを晴らしてくれて店主、アストの為にともう数種類、料理かカクテルを頼もうと思ったが、一旦懐中時計を確認したカインの顔が……少し面白いほど青くなった。
「っ!!!! す、済まない店主。本当はもう少しあなたのカクテルを呑みたかったのだが」
「門限ですね。お強いとはいえ、それなりに吞まれてますので、走るのでなく早歩きで戻られた方がよろしいかと」
「そうさせてもらう! では、また呑ませてもらいます!!!」
慌てて代金を支払い、アストに言われた通り早歩きで退店したカイン。
その後、彼はややフラフラしながらも、誰かに衝突することなく無事門限に間に合った。
ただ…………トイレに入った瞬間、盛大に吐いてしまった。
「……ちょっと遠いんだよな~~」
カイン・ルナリアスという学生の客が訪れてから数日後、アストは冒険者ギルドのクエストボード前で悩んでいた。
街から少し離れた場所にもモンスターはちらほらいる。
しかし、少し遠出した方が金になるモンスターが生息している。
だが……夜はバーテンダーとして働きたい、本業であるバーテンダーとしての活動が重要であるアストとしては、街から街への移動以外で野営をしたくない。
(金にはまだ全然余裕あるけど……ん~~~~~~)
ネットスーパーのお陰で、アストは調味料系のこの世界では価値が高い物を販売し、一時大金を稼いでいた。
しかし、その当初から関係を続けているのは一つのかなり力を持っている商会のみ。
諸々の利益を考えた場合、安易に他の商会に調味料を買い取ってもらおうとはしない。
(それに、金になるモンスターがそれなりにいる場所まで行くと、Bランクとか面倒なモンスターに遭遇する可能性あるよな……)
モンスターの死体を丸ごと持って帰ってこれるアストにとって、Bランクモンスターの方が当然金になるが、Cランクのモンスターだけでも十分金になる。
名誉よりも当然、自身の命の方が大切なアスト。
「よぅ、バーテンダー。何悩んでるんだ」
いきなり声を掛けてきた男は、アストがこの街に来てから客であり、同業者。
「ちょっと遠出しようか悩んでるんですよ」
「あぁ~~~、なるほどな。確かに近場だと、あんまり金になる依頼はねぇもんな」
「そうなんですよ」
無理して強いモンスターと戦う必要はないと考えているアストだが、それなりに強い者との経験自体は必要であり、多少の刺激は求めていた。
「んじゃ、俺らと一緒に討伐依頼でも受けるか?」
「……何日ぐらいの予定になりますか」
「早くて三日。長くて四日じゃねぇか?」
「…………分かりました。よろしくお願いします」
「おっ、マジかよ!! んじゃ、ちょっと待てよ」
アストに声を掛けた男の名はロルバ。
歳はアストより少し上。ランクはCと、アストと同じ。
年齢を考えれば、まだまだ上に上がれる可能性を秘めた有望株。
そんなロルバは以前、アストが一人で数体のDランクモンスターと戦う姿を見ていた。
その戦いではシェイクやストレート、アルケミストなどのカクテル技は一切使用していない。
ただ、特別な技を使わずに得意な得物であるロングソードを使用しながら討伐した。
強く、動ける人物だと判断するには、十分な戦闘光景だった。
(どうせなら、金になる依頼……加えて、依頼達成にそんな時間が掛からない依頼……は、さすがにねぇか)
自分の考えに矛盾が生じてると思い、ロルバは依頼達成にそこまで日数が掛からず、それなりに稼げる依頼書を手に取った
カイン・ルナリアスは強い。
現時点で、得物のぶつかり合いとなると、技術力では負けるという確信に近い感覚があった。
それでも……一つだけで、アストに出来るアドバイスがあった。
「もっと、戦闘に関して貪欲に学べば、こえから先救える命が多くなるかもしれません」
「貪欲に学ぶ、ですか」
「はい。戦いというのは、敵を倒すだけでは完結はしません。後ろに守るべき存在などがいる場合は特に」
「守りながら勝つ方法が必要になる、という訳ですね」
理解が早くて助かると思いながら、助言を続ける。
「その通りです。どう守るか……そういった物事に目を向けると、貴族の令息であるカイン様であれば色々と頭に考えが浮かばれるでしょう。勝つことも、守ることも単純ではない…………既にご理解しているかもしれませんが、大事な事かと思い、伝えさせていただきました」
「……店主よ、そんな事はありません。先程とあなたが教えて頂いた通り、他人に伝えられなければ、そういった知っていた筈の知識、常識を思い出せません。あなたのお陰で……心が晴れました」
「そう言って頂けると、幸いです」
カインはまだ残っていたラムコークを飲み干し……広がる甘い後味がもう一度アストからのアドバイスを反芻させる。
(私は……今よりも更に強くなる。そして広く、深く知識を得る。今学べる物を全て学ぼう!!!! 貪欲に、強くなろう)
黒く大きなモヤモヤを晴らしてくれて店主、アストの為にともう数種類、料理かカクテルを頼もうと思ったが、一旦懐中時計を確認したカインの顔が……少し面白いほど青くなった。
「っ!!!! す、済まない店主。本当はもう少しあなたのカクテルを呑みたかったのだが」
「門限ですね。お強いとはいえ、それなりに吞まれてますので、走るのでなく早歩きで戻られた方がよろしいかと」
「そうさせてもらう! では、また呑ませてもらいます!!!」
慌てて代金を支払い、アストに言われた通り早歩きで退店したカイン。
その後、彼はややフラフラしながらも、誰かに衝突することなく無事門限に間に合った。
ただ…………トイレに入った瞬間、盛大に吐いてしまった。
「……ちょっと遠いんだよな~~」
カイン・ルナリアスという学生の客が訪れてから数日後、アストは冒険者ギルドのクエストボード前で悩んでいた。
街から少し離れた場所にもモンスターはちらほらいる。
しかし、少し遠出した方が金になるモンスターが生息している。
だが……夜はバーテンダーとして働きたい、本業であるバーテンダーとしての活動が重要であるアストとしては、街から街への移動以外で野営をしたくない。
(金にはまだ全然余裕あるけど……ん~~~~~~)
ネットスーパーのお陰で、アストは調味料系のこの世界では価値が高い物を販売し、一時大金を稼いでいた。
しかし、その当初から関係を続けているのは一つのかなり力を持っている商会のみ。
諸々の利益を考えた場合、安易に他の商会に調味料を買い取ってもらおうとはしない。
(それに、金になるモンスターがそれなりにいる場所まで行くと、Bランクとか面倒なモンスターに遭遇する可能性あるよな……)
モンスターの死体を丸ごと持って帰ってこれるアストにとって、Bランクモンスターの方が当然金になるが、Cランクのモンスターだけでも十分金になる。
名誉よりも当然、自身の命の方が大切なアスト。
「よぅ、バーテンダー。何悩んでるんだ」
いきなり声を掛けてきた男は、アストがこの街に来てから客であり、同業者。
「ちょっと遠出しようか悩んでるんですよ」
「あぁ~~~、なるほどな。確かに近場だと、あんまり金になる依頼はねぇもんな」
「そうなんですよ」
無理して強いモンスターと戦う必要はないと考えているアストだが、それなりに強い者との経験自体は必要であり、多少の刺激は求めていた。
「んじゃ、俺らと一緒に討伐依頼でも受けるか?」
「……何日ぐらいの予定になりますか」
「早くて三日。長くて四日じゃねぇか?」
「…………分かりました。よろしくお願いします」
「おっ、マジかよ!! んじゃ、ちょっと待てよ」
アストに声を掛けた男の名はロルバ。
歳はアストより少し上。ランクはCと、アストと同じ。
年齢を考えれば、まだまだ上に上がれる可能性を秘めた有望株。
そんなロルバは以前、アストが一人で数体のDランクモンスターと戦う姿を見ていた。
その戦いではシェイクやストレート、アルケミストなどのカクテル技は一切使用していない。
ただ、特別な技を使わずに得意な得物であるロングソードを使用しながら討伐した。
強く、動ける人物だと判断するには、十分な戦闘光景だった。
(どうせなら、金になる依頼……加えて、依頼達成にそんな時間が掛からない依頼……は、さすがにねぇか)
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