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四十六話 下手に奪わない
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「はぁ……楽しかった」
実戦で、モンスターと戦い始めた頃は、あまり骨や肉……内臓を潰す感触が、あまり好みではなかった。
それでも次第に慣れていく。
本当に命を懸けた戦いを楽しめるようになってくると、その感触も悪くないと思い始める。
骨を砕き、内臓を潰す。
その一撃は、確かに自分が勝利へと近づく一手だと感じる。
当然、肘からの感触もしっかりと伝わる。
「とりあえず、残ってる奴から倒そう」
まだコボルトジェネラルの討伐は終っていないが、あと数手で決まりそうだと判断し、それよりもやや押されている。
もしくは戦況がよろしくないDランク冒険者たちのサポートに回る。
「今です!」
「っ! ナイスだぜ!!!!」
足を刈られると、大抵は転ぶ。
コボルトの様な二足歩行は、面白いぐらい転ぶ。
四足歩行のウルフ系モンスターも、一つの足を刈られただけでも、大なり小なりバランスが崩れる。
クランドの力なら、残っているモンスターを一手で狩れる。
しかし、それをやってしまうと、今回の討伐戦に参加した同業者たちの功績を奪ってしまうことになる。
グレートウルフとの戦闘で闘争欲が満たされ、テンションマックス状態ではあったが、それぐらいの事を考えられる冷静さは残っていた。
なので、この討伐戦が終わるまではサポートに徹する。
徹底して足を刈り続け……無事、ジェネラルの方の討伐も終了した。
「お前ら、良くやった!!! この討伐戦は、俺たちの勝ちだ!!!!」
「「「「「「「「うぉぉおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」
そんな大声を出したら、他のモンスターが寄ってきてしまうかもしれない。
当たり前過ぎる常識。
ただ、今回の討伐戦はそれなりに死ぬリスクがあった。
両軍の戦力を考えると、予想外のトラブルが起きなければ、冒険者側が勝利を収めているだろう。
しかし……これも常識といえば常識だが、少なくない死者が出た。
そこにクランドとリーゼという予想していなかったルーキーが戦力として参戦し、なんと今回の討伐戦での死者はゼロ。
重傷者はいるものの、誰一人として死ななかった。
そんな奇跡に、クランドも含めて勝利の雄叫びを上げた。
「リーゼ、お疲れ!!」
「クランド様もお疲れ様です……とはいえ、疲れよりも嬉しさの方が勝ってそうですね」
「おっ、やっぱり解るか」
「えぇ、あなたのメイドですので」
従者になって傍で動くようになってから、もう数年以上は経過している。
森での実戦にも参加しているたため、実戦の後の表情でクランドが満足しているのか否か、ある程度解るようになっていた。
「そっちはどうだった。熱い戦いだったか?」
「私はそういうのを求めていませんが……戦いやすかった、というのが一番大きな感想ですね」
ベテラン……もしくはその領域に突入している前衛たちの動きは、いちいち言葉に出さずとも、どんな攻撃をして欲しいのか伝えてくれ。
今までクランドとばかり一緒に戦っていたので、それが少し不思議で……頼もしいと感じた。
「そっか。つまり、楽しかったってことだな」
「……ためになる戦いではありました」
我が主人ながら呆れる戦闘おバカだと思いながら、視線を倒し終えたモンスターたちに向ける。
「では、次の仕事を行いましょうか」
「おう、そうだな」
冒険者は、依頼であるモンスターを倒し終えれば終わりではない。
そのモンスターを血抜きし、解体して冒険者ギルドに売る。
冒険者ギルドとしても、買い取る素材などを顧慮して、今回の討伐戦に参加した冒険者たちへの報酬金を決めている。
「おうおう、見事なもんだな」
「先輩たちに褒められると、お世辞でも嬉しいですね」
「いや、お世辞じゃねぇよ。マジで上手いって」
血抜きを行い、そこから死体の解体を一斉スタート。
見張組と解体組に別れ、クランドとは解体組として働き続ける。
「解体も、ガキの頃からやってたのか?」
「そうですね。最初中身を見た時は、もう盛大に吐いてしまいました」
「はっはっは! 奇遇だな。俺も同じだ」
クランドも先輩も今は慣れているが、鮮明に当時の状況を思い出そうとすると……ぶるっと体が気持ち悪さを思い出す。
「クランドなら冒険者を引退しても、ギルドの解体士として働き続けられるな」
「そういう選択肢もありますね。ただ、引退なんてまだまだ先の話ですよ」
社会人……生き抜くために仕事を始めれば、どこかしらのタイミングで引退というイベントと遭遇する。
人によっては、両手を上に上げて喜ぶイベントかもしれない。
ただ、翌日からの未来に絶望する者もいる。
「それもそうだな。けど、あんまり無茶ばっかりしてっと、冒険者人生に満足する前に引退しちまうぞ」
引退どころか、人生をリタイアする場合だってある。
「一応、考える頭は持ってるんで、どうしようもない状況なら逃げますよ」
戦闘狂に思われるが、まだまだ生きたい……できれば老衰したいという、人らしい願望もある。
「でも……無茶して勝利を得られる状況なら、多分逃げませんね」
後輩の自信満々な回答に、先輩は相方であるリーゼの方をチラッと見て、小さな苦笑いを浮かべた。
実戦で、モンスターと戦い始めた頃は、あまり骨や肉……内臓を潰す感触が、あまり好みではなかった。
それでも次第に慣れていく。
本当に命を懸けた戦いを楽しめるようになってくると、その感触も悪くないと思い始める。
骨を砕き、内臓を潰す。
その一撃は、確かに自分が勝利へと近づく一手だと感じる。
当然、肘からの感触もしっかりと伝わる。
「とりあえず、残ってる奴から倒そう」
まだコボルトジェネラルの討伐は終っていないが、あと数手で決まりそうだと判断し、それよりもやや押されている。
もしくは戦況がよろしくないDランク冒険者たちのサポートに回る。
「今です!」
「っ! ナイスだぜ!!!!」
足を刈られると、大抵は転ぶ。
コボルトの様な二足歩行は、面白いぐらい転ぶ。
四足歩行のウルフ系モンスターも、一つの足を刈られただけでも、大なり小なりバランスが崩れる。
クランドの力なら、残っているモンスターを一手で狩れる。
しかし、それをやってしまうと、今回の討伐戦に参加した同業者たちの功績を奪ってしまうことになる。
グレートウルフとの戦闘で闘争欲が満たされ、テンションマックス状態ではあったが、それぐらいの事を考えられる冷静さは残っていた。
なので、この討伐戦が終わるまではサポートに徹する。
徹底して足を刈り続け……無事、ジェネラルの方の討伐も終了した。
「お前ら、良くやった!!! この討伐戦は、俺たちの勝ちだ!!!!」
「「「「「「「「うぉぉおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」
そんな大声を出したら、他のモンスターが寄ってきてしまうかもしれない。
当たり前過ぎる常識。
ただ、今回の討伐戦はそれなりに死ぬリスクがあった。
両軍の戦力を考えると、予想外のトラブルが起きなければ、冒険者側が勝利を収めているだろう。
しかし……これも常識といえば常識だが、少なくない死者が出た。
そこにクランドとリーゼという予想していなかったルーキーが戦力として参戦し、なんと今回の討伐戦での死者はゼロ。
重傷者はいるものの、誰一人として死ななかった。
そんな奇跡に、クランドも含めて勝利の雄叫びを上げた。
「リーゼ、お疲れ!!」
「クランド様もお疲れ様です……とはいえ、疲れよりも嬉しさの方が勝ってそうですね」
「おっ、やっぱり解るか」
「えぇ、あなたのメイドですので」
従者になって傍で動くようになってから、もう数年以上は経過している。
森での実戦にも参加しているたため、実戦の後の表情でクランドが満足しているのか否か、ある程度解るようになっていた。
「そっちはどうだった。熱い戦いだったか?」
「私はそういうのを求めていませんが……戦いやすかった、というのが一番大きな感想ですね」
ベテラン……もしくはその領域に突入している前衛たちの動きは、いちいち言葉に出さずとも、どんな攻撃をして欲しいのか伝えてくれ。
今までクランドとばかり一緒に戦っていたので、それが少し不思議で……頼もしいと感じた。
「そっか。つまり、楽しかったってことだな」
「……ためになる戦いではありました」
我が主人ながら呆れる戦闘おバカだと思いながら、視線を倒し終えたモンスターたちに向ける。
「では、次の仕事を行いましょうか」
「おう、そうだな」
冒険者は、依頼であるモンスターを倒し終えれば終わりではない。
そのモンスターを血抜きし、解体して冒険者ギルドに売る。
冒険者ギルドとしても、買い取る素材などを顧慮して、今回の討伐戦に参加した冒険者たちへの報酬金を決めている。
「おうおう、見事なもんだな」
「先輩たちに褒められると、お世辞でも嬉しいですね」
「いや、お世辞じゃねぇよ。マジで上手いって」
血抜きを行い、そこから死体の解体を一斉スタート。
見張組と解体組に別れ、クランドとは解体組として働き続ける。
「解体も、ガキの頃からやってたのか?」
「そうですね。最初中身を見た時は、もう盛大に吐いてしまいました」
「はっはっは! 奇遇だな。俺も同じだ」
クランドも先輩も今は慣れているが、鮮明に当時の状況を思い出そうとすると……ぶるっと体が気持ち悪さを思い出す。
「クランドなら冒険者を引退しても、ギルドの解体士として働き続けられるな」
「そういう選択肢もありますね。ただ、引退なんてまだまだ先の話ですよ」
社会人……生き抜くために仕事を始めれば、どこかしらのタイミングで引退というイベントと遭遇する。
人によっては、両手を上に上げて喜ぶイベントかもしれない。
ただ、翌日からの未来に絶望する者もいる。
「それもそうだな。けど、あんまり無茶ばっかりしてっと、冒険者人生に満足する前に引退しちまうぞ」
引退どころか、人生をリタイアする場合だってある。
「一応、考える頭は持ってるんで、どうしようもない状況なら逃げますよ」
戦闘狂に思われるが、まだまだ生きたい……できれば老衰したいという、人らしい願望もある。
「でも……無茶して勝利を得られる状況なら、多分逃げませんね」
後輩の自信満々な回答に、先輩は相方であるリーゼの方をチラッと見て、小さな苦笑いを浮かべた。
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