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三十五話 本命はリーゼ

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(本当にあっさり終わってしまったな)

戦闘試験というのだから、もう少しがっつりと戦うのかと思っていたクランド。

しかし、今回の試験はあくまで、Eランク冒険者に相応しい実力があるかを見極める試験。
Eランク相当の実力を試験監督に伝えることが出来れば、その時点で試験は終了。

「クランド様、終わりました」

「みたいだな。お疲れ様」

リーゼの戦闘試験も終了し、無事にEランク相当の実力があると認められた。

イザルクが受付嬢に試験の合格を伝え、現在二人のギルドカードが造られている。

「にしても、あのクランド・ライガーと、その従者がハリストンに訪れるとはな。やっぱり、ここがルーキーたちにとって、それなりに優しい街だからか?」

「はい、そうですね。それなりに戦える力は持っていますけど、冒険者としてはルーキーなので」

相手が人であっても、モンスターであってもそれなりに戦える。
その事実を隠すつもりはない。

だが、冒険者としてルーキーであることに間違いはない……間違いはないが、従者のリーゼは完全にルーキーではないと断言出来る。

(クランド様が身に付けている、懐にしまっている装備品や、解体の腕などを考えれば、そこら辺のルーキーたちとは比べ物になりませんけどね)

とはいえ、ルーキーにとって優しい街から冒険者人生を始めることには賛成。

「お待たせしました!」

「ご苦労さん。それじゃ、これから君たちはEランク冒険者としてスタートする訳だけど……」

何か先輩らしい言葉を伝えたい。
そう思っていたのだが、明らかに二人の実力は普通ではない。

戦闘以外の訓練も積んでいる様に思えるので、先輩らしいアドバイスが中々浮かばない。

「……まっ、変な輩に引っ掛からない様にだけ気を付けてね。君たちみたいな超優秀なルーキーたちが闇落ちなんてされたら、ギルドが処理に追われて大変だからさ」

「はは、解りました。道を反れない様に、精進していきます」

「うん、期待してるよ」

戦闘試験、ギルドカードの手渡しなどが全て終了。
二人がロビーに戻る中、イザルクは一つ……大きなため息を吐いた。

「どうしたんですか? もしかして、あの二人の戦闘試験で怪我でも?」

「さすがにそんなヘマはしないよ。そうならない様に気を付けてたから」

引退したとしても、イザルクはCラックの冒険者。
四肢のどれかが欠損している訳でもなく、今でもたまに体を動かしているので、大きなブランクはない。

「ただ、二人がハリストンにいる間、色々と荒れそうだと思ってね」

「あぁ~~~……そう、なりそうですね」

受付嬢もまだ若いが、もうギルドで働き始めてから数年が経っており、この後どうなるか……ある程度予想出来てしまう。


(そうなるかもとは思ってたけど、やっぱりリーゼは魅力的なんだな)

二人がイザルクからEランクのギルドカードを受け取り、ロビーに戻ると直ぐに多くの冒険者……もとい、ルーキーたちが集まってきた。

「なぁ、君たちって二人でパーティーを組んでるのか?」

「良かったら、俺たちとパーティーを組まないか? 後衛が欲しかったところなんだよ」

「僕は六人パーティーもありだと思ってるんだよね。どうかな、僕たちのパーティーに来ない?」

勧誘が止まらない止まらない。
一般的に考えて、この状況は光栄……有難く感じるもの。

しかし、クランドは勧誘してくる冒険者たちが、殆ど男だということに気付いていた。

(一応俺も含めて誘ってくれてるみたいだけど、どう見ても要件があるのはリーゼだけだよな)

まさにその通り。
そして、それはリーゼも同様に理解しており、徐々に額に青筋が浮かび始める。

「申し訳ありませんが、私はクランド様意外とパーティーを組むつもりはありません」

凛とした声で、ハッキリと宣言した。

「申し訳ないけど、俺も今はリーゼ意外とパーティーを組むつもりはないんだ」

それとなくクランドも同じことを口にし、二人は依頼書が張り出されているクエストボードの前に向かう。

呆気にとられるルーキーたち。
その様子を見て、傍観していたベテラン達は大爆笑。

そんな様子を気にせず、二人はクエストボードの前で、受けられそうな依頼を確認。

「これとこれと……これを受けようか」

「問題無いかと」

同時に三つの依頼書を取り、依頼書を受理する担当の受付嬢の元へ向かい、カウンターに依頼書を置く。

「えっと……本当に三つ同に受けるのかな?」

「はい」

「そ、そう。それじゃあ、薬草の採集経験は既にある?」

「あります」

「……分かったわ」

イザルクと、二人の冒険者登録を担当した受付嬢から、クランドとリーゼの話は聞いている。

なので、いきなりEランクモンスターの討伐依頼を受ける二人を、止めようとはしない。
三つ同時に依頼を受けて、達成できるのか。それだけが不安だった。

「このモンスターたちの討伐証明部位は知ってる?」

「はい、大丈夫です!」

元気良く返事し、依頼書が受理されたことで、二人は少々時間が遅めではあるが、早速冒険者としての依頼をスタート。

ちなみに、色々とツッコみたいところもあり、再度二人に絡もうとするルーキーたちだったが、二人はサラッと波を避けて森へと向かった。
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