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少年期[1026]次は……
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「フハハハハハハハハッ!!!!!! そう、それだ!! ワイズコングッ!!!!!」
テンションが振り切れたゲイル。
先程まではワイズコングを追い詰める為に斬撃波を放っていたが、現在はもう、戦いを終わらせるために……殺す為の斬撃波を放っていた。
魔法の腕は、ワイズコングの方が上である。
だが、ゲイルとて身体能力と武器術だけが取り柄の魔物ではない。
ゲイルはロングソードに火と風、両方の魔力を纏いながら斬撃を放っていた。
その威力は……チマチマ攻撃するのは止めだと、攻め百パーセントの姿勢を見せたワイズコングであったとしても、避けながら攻めるという選択肢を取らざるを得ない。
「ゴルァアアアアアアッ!!!!」
「ぬううううう!!!!!」
戦いが進む中、遂にワイズコングのコングナックルが炸裂。
ただの拳ではなく、岩石を纏った拳。
いくらゲイルが通常のリザードマンでないとはいえ、ダメージは必死。
左腕を挟んだものの、それでもその場で耐え切ることは出来ず、思いっきり吹っ飛ばされてしまった。
上々の結果であり、ワイズコングは殴り飛ばしたゲイルの元へ駆け出す。
だが……その表情に良い一撃を与えた故の、感情の昂りというのは一切なかった。
寧ろ、逆に冷静さが浮かんでいた。
「ブラッソに、届くかもしれないな」
そう告げるゲイルの瞳に、表情に焦りはなく、ワイズコングはそれを見て確信した。
やはり、先程良い一撃が入ったと思えたにもかかわらず、相手の左腕は折れていなかったと。
今でこそ並の魔法使いよりも何倍もの実力、技術、魔力量を有してはいるが、元は他の同種との差はあれど拳による攻撃を得意とするゴリラだった。
だからこそ、拳を叩きつけて相手の骨を折った時の感触を覚えているのだが、ゲイルの腕を殴った時に……殴り飛ばすことは出来たが、その感触はなかった。
「ゼルート、ゲイルが思いっ切り殴り飛ばされたけど……あれ、大丈夫なの?」
「確かに良い音がしたな。でも、多分竜鱗を発動した筈だから、見た目だけ派手だったねで済んでると思うぞ」
ゼルートは正確にゲイルが竜鱗というスキルを発動するところを見たわけではないが、それでもゲイルが強敵を相手に挑戦するのであればまだしも、間違った選択を取るとは思えなかった。
「……ゼルート。ゲイルは今、いくつのスキルを発動してるのだ?」
「ん~~~……全部で七つぐらいじゃないか?」
「そうか…………ゲイルが普通じゃないリザードマンでなければ、既に勝負は付いていたな」
戦闘者の中でも中堅レベルを越えれば、スキルの同時発動は特に珍しいことではない。
ただ、発動するスキルの数が増えれば、それだけで魔力の消費量が増加する。
当然ながら、ワイズコングはワイズコングでスキルの同時発動を行っているが、先程までバカスカと攻撃を発動していたにもかかわらず……魔力残量はまだゲイルを上回っている。
「しかし、随分と勝負が長くなってきたな」
「それだけあのワイズコングがバカ強いってことだな」
「……………………アレナ、今度Aランク魔物と遭遇したら、共に戦うぞ」
「えっ!?」
当たり前だが、ルウナはゲイルの強さを認めている。
現時点で、自分より強い猛者だと認めている……だからこそ、そんな猛者を相手に、討伐するまで想像以上に戦い続けているワイズコングもまた猛者だと認めるしかない。
やはり、戦ってみたかった。
勝てずとも……あの強さを体験したかった。
(あぁ~~、もう完全に覚悟が決まっちゃってそうね)
別に戦闘大好きバーサーカーではないアレナは、次はAランク魔物と自分も戦いたいであろうゼルートやラル、ラームたちが戦えば良いと思っていた。
だが、既にパーティーメンバーである友人が覚悟を決めてしまっていた。
そんな表情を見て、アレナはやれやれと思いながらも、友人からの誘いを承諾……した次のタイミングで、大地が……山の一部が斬り裂かれた。
テンションが振り切れたゲイル。
先程まではワイズコングを追い詰める為に斬撃波を放っていたが、現在はもう、戦いを終わらせるために……殺す為の斬撃波を放っていた。
魔法の腕は、ワイズコングの方が上である。
だが、ゲイルとて身体能力と武器術だけが取り柄の魔物ではない。
ゲイルはロングソードに火と風、両方の魔力を纏いながら斬撃を放っていた。
その威力は……チマチマ攻撃するのは止めだと、攻め百パーセントの姿勢を見せたワイズコングであったとしても、避けながら攻めるという選択肢を取らざるを得ない。
「ゴルァアアアアアアッ!!!!」
「ぬううううう!!!!!」
戦いが進む中、遂にワイズコングのコングナックルが炸裂。
ただの拳ではなく、岩石を纏った拳。
いくらゲイルが通常のリザードマンでないとはいえ、ダメージは必死。
左腕を挟んだものの、それでもその場で耐え切ることは出来ず、思いっきり吹っ飛ばされてしまった。
上々の結果であり、ワイズコングは殴り飛ばしたゲイルの元へ駆け出す。
だが……その表情に良い一撃を与えた故の、感情の昂りというのは一切なかった。
寧ろ、逆に冷静さが浮かんでいた。
「ブラッソに、届くかもしれないな」
そう告げるゲイルの瞳に、表情に焦りはなく、ワイズコングはそれを見て確信した。
やはり、先程良い一撃が入ったと思えたにもかかわらず、相手の左腕は折れていなかったと。
今でこそ並の魔法使いよりも何倍もの実力、技術、魔力量を有してはいるが、元は他の同種との差はあれど拳による攻撃を得意とするゴリラだった。
だからこそ、拳を叩きつけて相手の骨を折った時の感触を覚えているのだが、ゲイルの腕を殴った時に……殴り飛ばすことは出来たが、その感触はなかった。
「ゼルート、ゲイルが思いっ切り殴り飛ばされたけど……あれ、大丈夫なの?」
「確かに良い音がしたな。でも、多分竜鱗を発動した筈だから、見た目だけ派手だったねで済んでると思うぞ」
ゼルートは正確にゲイルが竜鱗というスキルを発動するところを見たわけではないが、それでもゲイルが強敵を相手に挑戦するのであればまだしも、間違った選択を取るとは思えなかった。
「……ゼルート。ゲイルは今、いくつのスキルを発動してるのだ?」
「ん~~~……全部で七つぐらいじゃないか?」
「そうか…………ゲイルが普通じゃないリザードマンでなければ、既に勝負は付いていたな」
戦闘者の中でも中堅レベルを越えれば、スキルの同時発動は特に珍しいことではない。
ただ、発動するスキルの数が増えれば、それだけで魔力の消費量が増加する。
当然ながら、ワイズコングはワイズコングでスキルの同時発動を行っているが、先程までバカスカと攻撃を発動していたにもかかわらず……魔力残量はまだゲイルを上回っている。
「しかし、随分と勝負が長くなってきたな」
「それだけあのワイズコングがバカ強いってことだな」
「……………………アレナ、今度Aランク魔物と遭遇したら、共に戦うぞ」
「えっ!?」
当たり前だが、ルウナはゲイルの強さを認めている。
現時点で、自分より強い猛者だと認めている……だからこそ、そんな猛者を相手に、討伐するまで想像以上に戦い続けているワイズコングもまた猛者だと認めるしかない。
やはり、戦ってみたかった。
勝てずとも……あの強さを体験したかった。
(あぁ~~、もう完全に覚悟が決まっちゃってそうね)
別に戦闘大好きバーサーカーではないアレナは、次はAランク魔物と自分も戦いたいであろうゼルートやラル、ラームたちが戦えば良いと思っていた。
だが、既にパーティーメンバーである友人が覚悟を決めてしまっていた。
そんな表情を見て、アレナはやれやれと思いながらも、友人からの誘いを承諾……した次のタイミングで、大地が……山の一部が斬り裂かれた。
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