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兄の物語[125]多少は感じていた

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特に予定はなく、酔い覚ましのために散歩をしていたミシェルは四人と適当に話しながら酔いを覚ますことにした。

「昨日はさすがに呑み過ぎたわ」

「同じく。正直……物凄く嬉しかったけど、あれは本当に呑み過ぎてしまいました」

先日、ミシェルも同業者たちから奢りだと言われ、大量のエールを呑み干してしまった。
普段はアルコール飲料を呑むことには呑むが、肝臓五分目から六分目まで抑えていらのだが……その日は嬉しさが爆発し、一切制限しなかった。

ミシェルはクライレットたちよりも圧倒的にドーウルスで活動している期間が長いこともあり、知り合いの冒険者がギルド職員たちが多く……その分大勢の者たちから祝いのエールを貰った。

結果…………当然の様に吐いた。

「確かに昨日はちょっと呑み過ぎたよね~~。あっ、そういえばミシェルはこれからどうするの?」

「これからというのは、試験結果が発表され、Bランクに昇格してからの話ですか?」

「勿論!!」

「…………今までも両親以外の同業者たちと依頼を受けてきましたが、これからはそれ以上に……というより、完全に自立しようと考えています」

冒険者としての経験数はクライレットよりも長く、両親が同じく冒険者ということも考えると……親の七光り云々以前に、単純に自立したいという思いも強くなってくる。

「確かに、ミシェルにとってはそれが一つの目標みたいなところがあるものね」

冒険者の両親を持つ冒険者……というのは、そこまで珍しくはない。
ただ、現役冒険者の両親を持つ冒険者というのは非常に珍しい。

何故かと言えば、単純にミシェルほど子供が大きくなっていれば、既に引退しているから。
仮にまだ働いていたとしても、それは冒険者ギルドの教育係といった立場での仕事を行っている程度、マジの現場に出ることはないのだが……ミシェルの両親であるグレイスとコーネリアは、未だにマジの現場で活動している。

娘であるミシェルがクライレットたちと共にBランク昇格試験を受けている間に、ドーウルス周辺の森の奥で生息していたミノタウロスを二人だけで討伐していた。
勿論、二人に目立った傷はなかった。

といった具合に、二人が元高ランクの冒険者として、未だにギルド内で幅を利かせているなどではなく、バチバチに現役冒険者として活動を続けている。
少し前に行われたディスタール王国との戦争でも、Aランク冒険者に相応しい活躍を見せた。

「二人の娘として、尊敬してるからこそ追い付きたいって思いがやっぱりあるからね」

重荷、プレッシャーに感じなかったことがなかったのかと言えば…………正直なところ、多少はあった。
グレイスとコーネリアは肉体的に全盛期ギリギリのタイミングでAランクに昇格したのではなく、本当に若い頃から活躍し続け、全盛期を迎える前にAランクという頂きに到達した。

一人だけでも優秀なのに、超優秀な男女二人から生まれた子供となれば……周囲が期待してしまうのも当然と言えば当然。
この世界にはまだ遺伝子という言葉はないが、血統という言葉は存在する。

そんな周囲からの無意識にハッスルプレッシャーはあれど、親としてグレイスとコーネリアが優秀だったこともあり、グレイスと長男であるダンが自分たちと同じく冒険者を目指すのであれば、まず強くなることよりも生き残ることを重点的に教えた。

グレイスとコーネリアが毒親でなかったこともあり、ミシェルはここまで道を逸れることなく成長することが出来た。

「……解らなくもない思いね。でも、それじゃあこれから本格的にパーティーを探し始めるのかしら? さすがにソロ行動でAランクを目指すのは危険が大き過ぎるでしょう」

約一名、リーダーの弟であるゼルートという存在が頭に思い浮かんだが、例外だと即判断して消した。

「ミシェルぐらい魔法の腕がありゃあ、どのパーティーも是非とも入ってくれって感じだろうな…………つかさ、うちに来りゃ良くねぇか」

「バルガス、勿論私もミシェルが入ってくれたら嬉しいけれど、こういうのは本人の意志が大事……」

本人であるミシェルの方を向くと、先に言いたいことを言われてしまい、どう反応すれば良いのか解らなくなっていた。
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