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兄の物語[123]公平性を保つ

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「んじゃ、ドーウルスに帰るぞお前ら」

昇格試験の対象であるバジリスクを見事討伐し、いざドーウルスへと帰還。
約二名ほど二日酔いから立ち直れていないが、吞み過ぎも自己管理の内。

走って戻る必要はないが、約二名とも道中でリバース。

「なっはっは!!! 今度呑みトレでもしたらどうだ、ペトラ」

「別に……今よりも、呑めるようになりたいとは、思ってないわ」

「ミシェル~、大丈夫~~?」

「う、うん。大丈夫……とりあえず楽には、なったから」

乙女二人がリバースしたが、冒険者であれば特に珍しい事も出ない。

外見に似合わず酒豪の美女であっても、キャパを越えてしまえば普通にリバースしてしまう。

「お前ら~~、一応帰るまでが昇格試験だからな」

「えぇ、分かっています。いざという時に、足手纏いになりはしません」

九割以上、昇格試験は終っている。

だが、街に戻るまでにも魔物……ついでに盗賊たちは、彼らの事情を考えずに襲ってくる。

過酷な冒険にイレギュラー積み重なった結果などであればまだしも、ただ街から街に移動してる際に下手をこくのは一応減点対象に入ってしまう。

しかし、そこは二人ともド素人ではない。
呑み過ぎた結果吐いてしまったことは一度や二度ではない。

一度吐いてしまった時に、無理矢理にでも全て出してしまい、今後の行動に支障が出ない様にした。

そして道中、何度か魔物から襲撃を受けるも、無事ペトラとミシェルも戦闘に参加し……数日後に無事全員、ドーウルスに到着。

「そんじゃあ一応結果が出るのは三日後だ」

「えぇ~~~、全員合格じゃないんすか~~?」

冒険者ギルドの一室に入り、ガンツは三日後にまたギルドに来てほしいと伝えた。

それにジェリスはなんでだと、わざわざ発表に時間を置く必要があるのかと、文句をぶーたれる。
未だにクライレットたちと仲良くなったなったなどとは思っていないが、それでも戦場で背を預けられるぐらいの強さを持っている連中だとは認めていた。

「一応、俺はこれから上の人たちに今回の結果、詳細を報告しなきゃならねぇんだよ。めんどくせぇっちゃめんどくせぇんだが、それでも他の昇格試験でも毎度やってることだ。お前らの時だけやらない訳にはいかないんだよ」

正直なところ……ぶっちゃけた話……ガンツも今回に関しては話しをするだけ無駄だろうとは思っていた。

目的地に到着するまで。
そして標的の魔物を探し始め、遭遇してから討伐し終わるまで……討伐を終え、ドーウルスに戻ってくるまで。

それらをザっと脳内で振り返っても、特に減点する要素は見当たらない。
それでも、冒険者ギルドという組織としては、基本的に公平に冒険者たちに対して対応しなければならない。

(実力云々だけでランクを上げられるなら、ゼルートの奴はどう考えても初っ端からBランクスタートだ。当然、そんなことすれば他の連中が暴動を起こすだろうな…………起こすだけ無駄だろうけど)

もしもを想像したガンツ。
仮にゼルートがBランクからスタートして、同業者たちが暴動を起こせば、結果として血の池が生まれるだけである。

容易に思い浮かべられてしまい、思わず体が震えた。

「それまで基本的に自由にしててくれ。つか、がっつり休んでろ。どうせ、お前ら結果が伝え終わったら、派手に動くんだろうからよ」

ガンツが最後に伝えておきたい事を伝え、クライレットたち七人はロビーへと戻る。

「クライレット! 試験はどんなのだった!!!」

「酒奢るから教えてくれよ、カルディア!!!」

当然の様に多くの冒険者たちが彼等に群がり、酒や飯を奢る代わりにどんな試験だったのか教えてくれた頼んできた。

「どうする、クライレット」

「折角奢ってくれるって言ってるんだし、良いんじゃないかな」

今回の昇格試験は特に機密性の高い昇格試験などではないため、試験が終われば特に内容について零してはいけないという決まりはなかった。

その為、結局ドーウルスに戻ってからも宴会が行われ、その日はギルドに併設されている酒場で十名近い冒険者たちが酔い潰れ、床に寝転がることになった。
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