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兄の物語[108]価値が違う

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「…………なるほどね。本当にそれらしい石が転がってたり、木が石化したりしてるわね」

最寄りも森に入ってから数十分間、クライレットたちは一般的な形ではない石や石化している木をいくつか発見。

それを見たペトラとしては……エルフの主な故郷が森や樹海なこともあり、見ていてあまり良い気はしなかった。

「そういえば、仮に人が完全に石化しちゃったら、アイテムバッグの中に入れられるのか?」

「無理そうよ」

「あちゃ~~~、無理なのかぁ。でも、アイテムバッグの中に入らないっていう事は、えっと……仮死状態? みたいな感じなのかな」

「……クライレット、そうなの?」

いきなり話を振られたクライレット。

パーティーでは賢い担当ではあるものの、正直なところ……パッとこれだという考えが浮かんでこない。

(…………そうだ、こういう時はゼルートならって考えれば)

少々やんちゃなイメージがあるゼルートだが、兄であるクライレットにとっては戦闘に関して、十を学ばなければならない最初の一を何度も教えてくれた弟であった。

「全身石化したとなれば、おそらく体の内部全てが石化してしまっている筈。振動は動かず、血も流れていない状態。それでも、石化を直すポーションを使えば治る。であれば、多分フローラの言う通り仮死状態になってると思う」

「やっぱりそうなんだね。まっ、接近戦タイプの人たちなら別に背負って走れるか~」

「何を言いたいの、フローラ」

「いやぁ~~、なんて言うかさぁ…………石化して、砕かれた死体って、ある意味普通の死体よりも惨くて……精神的にくるのかなって思ってさ」

「「「「「「…………」」」」」」

フローラの言葉に、今更そんな内容でびくびくするなよ、とからかう者はいなかった。

カルディアやミシェルだけではなく、あのジェリスもほんの少し苦い表情を浮かべていた。
基本的にパーティーメンバーであるカルディアとのみ行動しているジェリスだが、彼以外の冒険者と関わらないという訳ではなく……これまで何度かそれなりに仲良くなった冒険者はいた。

男、女関係無しにそういった友人と言える冒険者はいたのだが……そんな存在を何度か失った経験があり、その悲しみや不快感は知っていた。

「俺はまだ知人が石化を食らって亡くなった経験はないが、人によってはそう感じることがあるかもな」

「やっぱり嫌な攻撃ですね~、石化って………と言うか、今回は試験監督と一緒に行動するんですね」

「まぁな。Bランクの昇格試験を受ける連中たちが、絶対に合格するとは限らねぇからな」

DランクやCランクの昇格試験でもあっても、試験監督たちは受験者たちから見えない様に身を隠して観察している。

では、何故Bランクの昇格試験では特に姿を隠すことなく同行しているのか。
それは……人によっては不公平だと声を上げるかもしれないが、DランクやCランクの昇格試験を受ける者たちとBランクの昇格試験を受ける者たちであれば、その価値が大幅に変わる。

「んだよ、あたし達が落ちるって思ってんのかよ」

「別にそうは思ってねぇって。ただ、せっかくバジリスクを討伐出来たってのに、いきなり乱入者が現れてお前らの誰かが死ぬとかは絶対に避けたいんだよ。だから、こうして普通に同行してんだ」

今回の場合は、万が一のイレギュラーを考慮して……という理由だけではなく、クライレットたちの若さも関係している。

若くしてBランクの昇格試験を受けられる様な者たちは、大抵が癖が強く、生意気な者たちが多い。
先程はクライレットが冷静な判断で対応したが、あのまま喧嘩に発展するケースはあまり珍しくない。

(とはいえ、普通はそんな起こらねぇんだが…………俺の感覚だが、こいつらはある意味持ってるタイプだと思うんだよな~~~)

ある意味持ってる者たち。

そう思うと途端にめんどくささ、責任感に更に重さを感じるものの、ガンツは先輩として守らなければという思いの方がまさり、ぎりぎり顔には出なかった。
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