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兄の物語[105]本当か?

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「んじゃ、宿を取るぞ~~~」

道中、モンスターに襲われることはあれど、盗賊に襲われることはなくドーウルスから離れた街へ到着したクライレットたち。

「……ちょっと、雰囲気が暗いわね」

「そうだね。もしかしなくても、コカトリスが暴れてる? ことが影響してそうだね」

「クライレットの言う通りだろうな。そもそも石化の状態異常攻撃を使うモンスターの数が少ねぇが、Bランク魔物の状態異常攻撃となれば、そう簡単に回復魔法でも治せない。後、治せるポーションを造るのにも、それなりの素材が必要になってきやがる」

冒険者との戦闘になれば、当然コカトリスは石化の攻撃を使用してくる。

人間の中には戦闘を楽しむ一部の者がいるが、コカトリスにそういった考えはない。
自分を襲ってくる相手には、必殺の石化ブレスを浴びせて殺す。
気まぐれに他の攻撃で殺せば、死体を食べる。

そうして冒険者、騎士たちが石になり、殺されていった。

ただ……問題なのはそこだけではない。
コカトリスが放つ石化のブレスは当然ながら、人間だけではなく木々や地面も石に変えてしまう。
その結果、果実や薬草の採集量が減少してしまう事態に繋がった。

「でも、石化はコカトリスを討伐すれば、治療に必要なポーションを造れますよね」

「その通りだ。まっ、そこに関しては試験内容に含まれてはねぇけどな」

石化という、毒や麻痺よりも厄介な状態異常攻撃を放つ強個体。

クライレットたちはBランクに昇格できると見込まれている有望株だが、それでも現在はまだCランクの冒険者。
合計で七人の有望株が集まっているとはいえ、魔物の素材を気にしていれば……誰かが死ぬかもしれない。

「……どうするの、クライレット」

「どうする、と言われてもね…………可能なら、どうにかする。今の僕にとって大切なのは、ペトラたちだ。他の人の命を優先して、仲間の命を犠牲にすることは出来ない」

仮に誰かを助ける為に何かを犠牲にするのであれば、クライレットは己の体が……命を犠牲にすると決めている。

(パーティーメンバーとしては嬉しい感想ね。でも、クライレットの今後を考えれば、そういった部分で良い印象を持ってもらっておいた方が良いのだけど……とはいえ、今更陣形を変えるのは……彼女が納得しないでしょうね)

接近戦では豹の獣人族、ジェリスを中心として戦うということは決まっている。

当然、ジェリスは納得している……というより、ノリノリである。

(素材を優先させるなら、クライレットが鳳竜を使ってメインで戦ってくれる方が手に入る確率が高くなる……けど、さすがにそれは私情よね)

クライレットたちだけで対応する依頼であれば、強者との戦闘を好むバルガスを説得し、短期決戦でコカトリスを討伐するという選択肢を取れた。

だが、今回……コカトリスを討伐するメンバーはクライレットたち四人だけではなく、ミシェルとカルディア、ジェリスたちがいる。
戦闘内容が評価に繋がるということもあり、鳳竜を使用して短期決戦で討伐するというのは、三人が活躍出来るチャンスを潰すことに繋がる。

「なぁペトラ、ポーションを造るのにどんな素材が必要なのかは知らねぇけど、ぶっちゃけコカトリスをぐちゃぐちゃにぶっ潰すとかしなきゃ、素材が使い物にならないことはねぇんじゃないか」

「……バルガスにしては、ちゃんとした事を言うじゃない」

扱う武器的にぐちゃぐちゃにしてしまう筆頭だが、今回は基本的に狙った箇所にしか攻撃しないと決めており、うっかりやってしまう可能性は低い。

「それでも、実際に私たちがこれから討伐するコカトリスの力量によって、その辺りを気にせず戦っても良いのか変わってくるわ」

ペトラ自身、コカトリスを強敵と強く認識ているため……当然ながら、素材の事を考えながら戦えるとは思っていない。

(でも……ギルドがどこまで評価するつもりなのか…………はぁ~~~、疲れるわね)

ガンツは、確かにそこまで試験内容に含まれていないと口にした。
だが、ペトラはそれを鵜呑みにはしていなかった。
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