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兄の物語[102]大人になった?

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「よ~~~し。ちゃんと全員いるな!!!」

昇格試験開始日、約束の時間までに全員集合場所に揃っており、最後に試験監督であるガンツが到着。

「んじゃ、出発するぞ」

目的の最寄り街まで馬車……ではなく、徒歩で向かう。

目的地まで向かう道中での行動も、改めて評価される。

「あれだな~~、ゼルートたちの昇格試験で試験監督をしたのを思い出すな~~」

「……確か、色々と問題を抱えた状態でスタートしたって聞いた気がしますが」

「そうなんだよクライレット。ゼルートたちが昇格試験を受ける前にちょっと問題が起こってな~~。いや、あれに関しては別に……うん、ゼルートは悪くなかったな。ちょっとやり過ぎかもしれなかったが、あいつが絡まれた側だったからな」

まだゼルートが冒険者としてドーウルスで活動を始めたばかりの頃、ドウガンというベテラン冒険者に絡まれたことがあった。

ただのダル絡みというよりは、嘘を付くんじゃないという説教が混じった絡みだった。

しかし、結果として二人はタイマンで勝負することになったのだが、ゼルートの圧勝で終わった。
その後……ゼルートがドウガンがお守りとして隠し持っていた白金貨を発見してしまい……報酬として奪い、その場にいた同業者たちの呑み代、食い代として使った。

そしてDランクの昇格試験には、そんな自業自得ではあるが、やや可哀想な目にあったドウガンを慕うルーキーたちが参加した。

「とにかく、他の参加者たちとちょっとバチバチになっててな。ゼルートも最近は大人になった? って聞くが、当時は喧嘩上等!!! 売られた喧嘩は爆買いだ!!!! ってスタイルだったからな~~~」

(……大人になった? 確かにこの前会った時、成長しているとは感じたけど………………大人に、なった???)

クライレットの記憶に残っているゼルートは、戦争が始まると特大の遠距離攻撃魔法を放った後、最前線まで跳び……敵軍に向かって盛大な煽りをぶちかまして突撃。

他にも、本来争うべきではない……と言うより、争うこと自体おかしい味方の貴族と衝突。
勿論、ゼルートに非はなく……向こうがゼルートの交友関係に嫉妬した結果起きた衝突なのだが、そこでも容赦ない制裁を叩き込んだと聞いた。

(あの戦争の時以降、ゼルートと会ってないけど……成長、したのかな?)

指名依頼が来たのであれば、文句を押し殺して一日中海鮮丼を作り続けており……忍耐力は成長しているかもしれない。

「結果、あいつは当然ながら盗賊団との戦いで大活躍して、ドーウルスに戻って来てから文句がある一緒に試験を受けた同期と戦って…………まぁ、一方的に倒したよな」

「そ、そうなんですね……その人は、今も冒険者を続けてるでしょうか」

「そこは心配しなくて良いぜ。面倒な絡み方をしたベテランもまだ現役で活動してるし、試験後に一方的に倒されたルーキーも、もう少し功績を積めばCランクの昇格試験を受けられるかもしれないってところまで来てる」

「……ゼルート君との出会い、衝突がそのルーキーたちにとって、良い刺激になったということですね」

ゼルートが冒険者になった頃と言えば、ここ数年以内の話。

一般的なルーキーであれば、数年でDランクからCランクに手が届くところまで成長出来るのは……稀も稀。
そもそもCランクの昇格試験を受けられない冒険者もそれなりにいるため、彼らにとってゼルートとの出会いは、ペトラの言う通りまさに良い刺激……起爆剤と言えた。

「まっ、そう言うこったな。ゼルートやアレナ、ルウナたち出会って力の差を感じれば、腐る奴は腐る。ただ、そっからクソふざけんなて、俺だって私だってって思えて行動出来る奴らは、本当に強くなれる……つっても、先輩としてはあんまりダッシュで頑張り続けようとする姿勢は心配だけどな」

本当の意味で強くなれる。
その可能性を秘めていたとしても、その強さを手に入れるまでに死なない可能性がゼロとは言えないため、ルーキーたちを心配に思う先輩冒険者としては、とりあえず休憩もしっかり確保してほしいという気持ちが大きい。
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