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兄の物語[101]本当のメインディッシュは食えるかも?

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「…………」

「バルガス、何そんなに不満気な顔してるの?」

Bランク昇格試験を共に受ける面子との顔合わせを終えた翌日、クライレットたちはコカトリス対策に必要なポーションなどを探していた。

「……あれなんだよな~~~。ペトラが昨日話した内容自体は理解出来んだけど…………せめて、どう視ても俺より強いよな~~って解るぐらいの奴なら良かったんだが……そうは視えねぇからよ」

「バルガスにしては、随分と落ち着いてるじゃない」

共に昇格試験を受ける面子と顔合わせをした際、ミシェルは元々友人に近い仲。
竜人族の中では珍しい魔術師タイプのカルディアも一般的な礼儀を持ち合わせている。

ただ……一人、カルディアのパーティーメンバーである豹の獣人族であるジェリスは最初からクライレットをバカにする様な態度を取っており、基本的に態度が悪い。

「俺だってお前に言われて、確かにあいつの動きに合わせて戦う訓練をするのには時間が足りねぇ……つーか、個人的にそんな事したくねぇ。だから、俺らが本番で適当に合わせるってのには賛成したけど……なんだかな~~~って感じだ」

「…………私的な考えとしては、同意よ」

ペトラとて、ジェリスを気に入ってはいない。
ジェリスがバカな態度を取った時、その度にカルディアが杖で頭部を叩いたこともあって溜飲が下がったものの……カルディアの制裁がなければ、ペトラ自身が動いていた可能性は十分にあった。

「ただ、今回の戦いはあくまで試験。初顔合わせの冒険者の動きに合わせて上手く戦えるというのも、一つの評価基準よ」

「逆に、あんまり自分勝手な行動をしてる冒険者は、評価を下げられるかもしれないよ~~」

「それに、今回の昇格試験で討伐する魔物はコカトリス。ジェリス単体で倒せるほど甘い敵ではないわ」

見せ場に関しては平等にある。
ペトラがそう説明するも……バルガスとしては、クライレットよりも強いとは思えない者が中心となって戦うことに対して、僅かな不満が残り続けていた。

「……クライレット。お前は不満に思わねぇのか?」

「そうだね……合わせられるのも一つの技術だと思ってる。それに、評価に関して言えば、僕たちはおそらくミシェルやカルディア、ジェリスよりも多くのBランクモンスターを討伐してきてる。ギルドもそこら辺は当然考慮してくれてるだろうから、そこまで気にする必要はないと思ってる」

実際にところ、遭遇した回数であれば……Aランク冒険者であるグレイスとコーネリアと共に活動していたミシェルの方が良い。

だが、戦闘の主力として戦った甲斐数が多いのはクライレットたちである。

「試験……そうだよなぁ。試験なんだよなぁ…………俺の我儘か~~」

「ダメな我儘ではないと思うよ。でもさ、バルガス。昨日話してたでだろ」

「何をだ?」

「楽しそうに話してたじゃないか。もしかしたら、コカトリスが成長してるかもしれない。もしかしたら……戦闘中にイレギュラーで別の魔物が乱入してくるかもしれないって」

そうそう起こることがないからこそ、イレギュラーなのである。

ただ、冒険者として活動してれば……よほど幸運に恵まれていなければ、必ずどこかでイレギュラーに遭遇する。

「標的であるコカトリスが成長していれば、そもそもジェリスを中心とした戦闘スタイルが成り立つかどうか解らない。そして戦闘が終わった後に乱入者が……良いとこ取りをしようとしてくる魔物が現れれば、おそらく一番披露するであろうジェリスは前に出て戦えない」

「つまり……俺たちがメインで戦えるって訳か…………最高だなっ!!!!」

「ふふ、そうだろ。だから、俺たちはそのチャンスを逃すことがないように、冷静に試験を合格してBランクに昇格出来るように頑張れば良いんだ」

リーダーの言葉を聞いてテンションが戻ってきたバルガス。

ペトラとしてはそもそもイレギュラーなど起きてほしくないのだが、バルガスのテンションが落ちたままなのは……それはそれで困る。

リーダーのフォローにナイスと思いながらも、出来ればイレギュラーは起きてほしくない。
その気持ちが変わることはなかった。
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