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兄の物語[57]一流の先

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(はっはっは!!!! 強ぇ魔物はいるだろうとは思ってたが、まさかこんな大蛇が潜んでいたとはな!!!!)

(こうなるだろうとは思ってたけど、この蛇結構デカいね。まっ、おそらくペトラが戻ってくるまでの時間稼ぎがメインだから、焦らずじっくりいこう)

フローラは相変わらず冷静に状況を判断しており、バルガスも……がっつり戦り合いたいところではあるが、戦況的にも無理に攻めてはならない場面だと本能が理解している。

前日、雨が降っていた訳ではないが、アクアヴァイパーが勢い良く水中から飛び出したことで、地面が濡れた。

地面が濡れている……それなりに実戦経験がある者であれば、その戦況がどれだけ恐ろしさが嫌でも解る。

「二人とも、もう直ぐペトラが戻ってくる。落ち着いて、やろう」

「しゃあねぇ、な!!!」

「バルガス。言葉だけじゃなくて、ちゃんと戦い方にも、表してよ」

「解ってる、って!!!!」

勝負を決めようと焦らず、仲間が戻ってくるまで戦おうとする判断自体は悪くない。

しかしアクアヴァイパーは文字通り大蛇であり、その攻撃力は並以上。
長い尾から繰り出される打撃と噛みつき。
そして水中でクライレットに向けて放っていた水弾や水槍……水のブレスを放ち、蛇らしく毒も使う。

時間稼ぎの戦闘スタイルを取ったとしても、容易に対処出来る相手ではない。

「お待たせ!!!!」

「っしゃッ!!!! こっからだぜ!!!!!!」

クライレットがアクアヴァイパーにちょっかいを掛け、囮役を買って出た買いもあって、ミレアナは無事に水漣華の
回収に成功。

パーティーメンバーが戻ってきたことで、後はアクアヴァイパーを倒すだけ。

受けた依頼のことを考えれば撤退するという選択肢もある。
濡れた足場という状況を考えれば、その選択肢は賢い撤退と言える。

だが……この戦闘において、ペトラも含む全員の頭に撤退の二文字はなかった。

フローラが鋭い尾撃を受け止め、ペトラが風のバリアで水のブレスを弾き、バルガスが重撃がアクアヴァイパーの内部を突き抜け、骨を砕く。

そしてクライレットの疾風の剣技が鱗を裂き、放たれる水槍を交わし……その太く長い胴を切断した。

「はぁ、はぁ、はぁ…………ふぅ。危なかった、ね」

Cランクのモンスターであればソロでも倒せるクライレットだが、水中では力関係が逆転する。

地上に戻ってきたとはいえ、いきなり水中から地上に変わった……濡れた体に熱さが戻るまでは少々時間が掛かる。
そういった要因もあって、クライレットにとってアクアヴァイパーとの戦いは少々厳しいものであった。

「クライレット、大丈夫かしら」

「あぁ、大丈夫だよ。それよりペトラ、戻って来たっていうことは、あれは本当に水漣華だった……って事で良いんだよね」

「えぇ、勿論よ」

アイテムリングから水漣華を取り出し、仲間たちに見せる。

「綺麗……」

「ふ~~~~ん? なんか、悪くねぇって感じだな」

「そうだね。なんと言うか、綺麗じゃなくて強さも感じる……そんな華だね」

アクアヴァイパーという強敵と戦うことになったが、それでも無事に水漣華を回収することに成功。

「つかよ、水漣華をゲットしたって事は……俺ら、Bランクになれるのか?」

「…………やっぱりあんたはバカね」

水漣華の採集。
そして水の大蛇、アクアヴァイパーの討伐。

どちらも並の冒険者では成し遂げられない功績ではある。

しかし、Bランクとは……一般的な一流の、更に先の領域。

「うっせ。バカバカって言うんじゃねぇっての。確かに今回頑張ったのは主にお前ら二人だけど、俺らドーウルスに来てから結構頑張っただろ」

バルガスの一番の目的は、強く信頼出来る仲間たちと、強敵に挑み……戦う事。
討伐依頼などを受けて魔物と戦うことは、あまり頑張りという認識がなかった。

それでも、これまで何かを積み重ねてきた実感があった。

「それはそうね。でも、Bランクに上がるにはやっぱり試験を受けなきゃ駄目よ」

「試験……やべぇ、すっかり忘れてた」

本気で忘れていたパーティーメンバーの顔を見て、ペトラはやっぱりこいつはバカだと思った。
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