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兄の物語[43]太る心配なし

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「こちら、依頼達成の報酬金額です」

「ありがとうございます」

無事、グラッシュバッファーを殆ど無傷で倒したクライレットたち。
完全に剝製化を行う職人たちから見ても一切問題はなく、これで三体のCランクの魔物、リザードマンとフォレストリザード、グラッシュバッファーを仕留め終え……指名依頼を達成。

ギルド職員は用意されていた金額、金貨三十枚を……袋に入れて渡した。

大きさは……それなりに入っていると解るであろう量。
しかし、中に入っている硬貨は金貨ではなく白金貨。
金貨三十枚と白金貨三十枚では、文字通り桁が違う、

Cランクの冒険者であっても、一つ依頼を達成しただけでここまでの大金を受け取ることはなく、好きな様に狩りを行っても、ここまでの大金を手に入れる機会はまずない。

「いやぁ~~~、あれだな。今日はいつもより美味い飯が食えるな」

最近……いや、これまでバカバカバカバカと言われ続けたことで、意識し始めたのか……大きな声で、大金が手に入ったと宣言しなかった。

「そうね。とりあえず、今日はいつもより良い店で食べても良さそうね」

「時間的にはいつもより帰ってくるの早かったし、今から良い店に入っても空いてるんじゃないかな」

パーティー貯金の方に半分を入れても大金が残る。

「っしゃ!!! 食って食って食いまくるぜ!!!!」

「…………私、あんたがどれだけ、何を食べたのかちゃんと覚えておくから」

「げっ!!! 纏めて払うんじゃねぇのかよ!!」

「いつも通り酒場とかで食べるならまだしも、それなりに良いところで食べるのよ。自分の分は自分で払いなさい」

以前、本当にペトラはバルガスが食べた料理の種類、数を覚えていたため……どう頑張っても誤魔化せない。

とはいえ……それでも個人個人の懐に心底驚く大金が入ってきた。
直ぐに悩むのを止め、それはそれでいいかと思い、バルガスは三人と一緒に良さげな店を探す。

「ここにしようか」

「良いわね」

四十分後、ペトラやクライレットの頭にも入っていた有名店を発見。

アポも無しに入ったが、まだ時間が早いこともあり、四人分のテーブルは空いていた。
それなりの有名店ともなれば、客として逆に冒険者が来店することも分かっており、有名どころ……もしくは最近調子が良い冒険者パーティーなどの情報を頭に入れており、絶対に良客を逃さないようにしていた。

今回訪れた客……クライレット、バルガス、フローラ、ペトラはここ最近ドーウルスに訪れた新進気鋭の若手冒険者。
パーティーのリーダーであるクライレットがあのガレンの息子であり、彼ら自身もBランク昇格候補に入っている。

Cランクでもそれなりに稼げる部類だが、その中でも上位の存在……そして冒険者ともなれば、たらふく食ってくれること間違いなし。

そんな従業員たちの思惑は……最初の注文で見事的中。

「これ二人前で。それでこっちは三人前で、こっちは……四人前でお願いします」

「かしこまりました」

バルガスもこういった外装、内装が綺麗な店の料理は美味さのグレードは高いが、量が物足りないと解っているので、とりあえず気になったメニューを二人前以上頼む。

「相変わらず最初から食べるわね」

「いやいやあれだぜ、ちゃんと味わうぜ? ただ、ペトラより食べるのが早いってだけだ」

「この中ではペトラが一番少食だからね~~」

「私、別にそんな小食ではないのだと思うけど」

本人が言う通り、ペトラはそこまで小食ではない。
ただ、それは一般人レベルで考えた話。

寧ろ一般人レベルなら食べる量は多い方であり、冒険者という動いて動いて戦っての職業に就いてるからこそ、勝手に消化してくれるので気にせず食べられる。

それでも……冒険者という枠で見れば、確かに小食の部類に入る。
一度に一つのメニューを二人前以上頼むのはバルガスだけではなく、フローラやクライレットも同じような形で注文していた。

「まっ、それは今知ったことではないのだし、どうでもいいわ。それより……私たち、そろそろ声が掛かるかしら」
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