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兄の物語[6]四人であれば

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「バルガスにしては、割と傷なしで倒せたみたいね」

「だよな!!!! いやぁ~~~、我ながら良い戦いが出来たぜ!!!!」

比較的無茶をすることが多いバルガスは、よく傷だらけになることが多い。

しかし……今回の戦い、ギャンブルという要素もあったが、ほぼ無傷でCランクモンスターとの戦いを勝ち抜いた。

「そうか。どうせなら、しっかり観たかったね」

「最後のスライディングとか、我ながら上手くやれたと思うぜ…………まっ、クライレットが教えてくれたことが活きた結果ではあるけどな」

「……ふふ、嬉しい事を言ってくれるね」

三人がかりということもあり、クライレットたちの方も無事にヒポグリフの討伐を終えており、時間は掛かったが解体を終わらせ、仕事へ戻る。

「ヒポグリフが二体、か……あぁいったモンスターがごろごろいるのよね」

「なんだ、ペトラ。今更ビビってきたのか?」

「バカ言ってんじゃないわよ。丁度良いって思ったのよ」

一人でヒポグリフに挑むと宣言したバルバラに𠮟責を飛ばしたペトラだったが、頭の中ではいずれ自分もそういった戦いを行う予定があった。

クライレットの弟であるゼルートがバカみたいな強さを持っていることは知っている。
であれば、ゼルートのパーティーはゼルートに頼りっきりのワンマン体制なのか?
実際は全くそんなことはなく、残りの二人は他のパーティーであれば十分過ぎるエースクラスの冒険者。

クライレットだけが強くなるだけでは意味がない。

「はぁ~~~、次はグリフォンとか来ねえかな」

「あんたでもひき肉にされて終わりよ」

どこかで無茶をしようとは考えているが、現実が見えていない訳ではない。

「まぁまぁ、私もソロで挑むのはちょっと無茶が過ぎるというか、無謀だと思うけど……でも、四人なら無理じゃないよね」

「……それはそうね」

「はっはっはっは!!! そりゃそうだな!! クライレットもそう思うだろ!」

「そうだね……空の死神、か。倒せたら……空を飛ぶモンスターが相手でも、大抵は苦戦せずに倒せるようになりそうだ」

空の死神というのは、冒険者が呼ばれているグリフォンの二つ名。

鋭い爪とくちばし。
どちらも鋼鉄を貫き引き裂く、高い殺傷力を持っている。
加えてトップスピードはヒポグリフの最高速度と比べて比にならず、更に恐ろしい風魔法とブレスを有している。

ヒポグリフとグリフォン……この二体と実際に戦ったことがある者は、グリフォンとの対戦時……改めて思い知らされる。
戦い方や見た目は似ているが、グリフォンは……完全にヒポグリフの上位互換なのだと。
少し優れている、少しだけ上がった攻撃力や移動速度を気を付ければ良いのではなく、全ての面において警戒レベルを二つは上げなければならない。

「そういえば、ウィンドドラゴンとグリフォン、どっちの方が強い論争ってあるよな」

「今ここでする論争? まぁ……私はグリフォンに一票かしら」

「私は……ウィンドドラゴン、かな」

「俺はペトラと同じだな」

「あら、バルガスが私と同じ意見なんて珍しいわね。それじゃあ、クライレットはどっちの方が強いと思う?」

いきなり始まった同じBランクモンスターであるウィンドドラゴンとグリフォン、どちらの方が強いのか論争。

ドーウルス周辺の森に生息しているモンスターの強さを考えれば、本当に今する話ではない。

だが、クライレットは水を差すような真似はせず、真剣にどちらが強いか考え込んだ。

「…………僕は、ウィンドドラゴンに一票かな」

「一緒だね。でも、なんでクライレットはウィンドドラゴンの方が上だと思ったのかな」

「ある程度の生物には感情がある。ドラゴンであっても、グリフォンであっても怒りという感情がある。ただ……その感情が爆発した場合、より激情が昂るのはウィンドドラゴンの方だと思う。明確な理由は解らないけど……逆鱗という言葉、ドラゴンが激怒した言葉から生まれたという説もあるからね」

条件下次第ではあるが、ウィンドドラゴンの方が勝率は上。
それがクライレットの考えだった。


「おっ、あの木に生ってるな」

数時間後、あれから数回の襲撃に対応しながら、四人はようやった目的の果実がなっている木を発見した。
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