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少年期[998]心配はさせない

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(……もう、うじうじ考えるのは止めよう。なんつーか、俺らしくない)

ベランダでルウナと今回の一件について話し合ってからも、ゼルートのテンションは普段と比べてやや下がり気味。

そして両親やラガールとも同じような話をし…………結果として、完璧と言える結論は一つも出てこなかった。
ただ……これ以上自分のテンションがいつもより下がった状態が続くと、アレナが余計な心配をさせてしまうそれだけは解った。

「ブラッソ、ちょっと肉弾戦しようぜ」

「ふむ、肉弾戦か……良いぞ、戦ろうか」

主人の珍しい提案に、好戦的な笑みを浮かべ……三分間の肉弾戦がスタート。

肉弾戦とはいえ、一応模擬戦。
お互いに殺す様な攻撃を行うのはアウト。

用意したリングと結界を破壊しない程度の戦いというルールを設けているのだが……二人の肉弾戦が始まってから約一分、リングは一応耐えているが……結界がもう一押しで壊れそうになっていた。

「ラーム、少し手伝ってください」

「りょーかい!!!」

即座に結界崩壊の危機を察知した二人によって修復され、なんとか結界とリングも二人の肉弾戦が終わるまで耐えた。

「はぁ~~~~、スッキリしたぜ!!! 付き合ってもらって悪いな、ブラッソ」

「構わん。ゼルートとの肉弾戦も悪くない」

今回、ゼルートは行動の選択肢に回避を入れておらず、殆ど受けるか受け流すかのどちらかで対応していた。
そのため……ゼルートの体には青痣がちょこちょこできていた。

「ちょっとゼルート、いきなりギア上げすぎじゃない!!! リングが壊れて結界まで破壊したらどーするのよ!!!」

「はは、すまんすまん。ちょっと熱くなってた」

実際に……もやもやを振り払うだけではなく、ブラッソとのガチガチの肉弾戦は闘争心を確実に着火させていた。

「まぁ~~~、あれだ。ちょっと良い感じに動きたくなってな」

「ゼルートお兄様っ!! 超凄かった!! 私、全然目で追えなかった!!!!!」

二人に会話に突っ込んで来たセラルは目を輝かせながら楽しさを体全体で表現。

そこまで特別性のリング全体を使った攻防ではなかったが、それでもブラッソとゼルートがそこそこ本気になって動いた肉弾戦。

セラルに戦闘センスがあるとはいえ、眼で追える速さではない。

「私も二人みたいに、シュッ! って倒したい!!!」

「えっ……そ、それは……うん、まぁ自衛としてはり、かな?」

セラルは長女のレイリアと同じく、魔法の才能に長けている。
武器術のセンスもあるにはあるが……得意分とはならないレベル。

(個人的にはそこまで手を出さなくても良いと思うんだけど……出来るのと出来ないとでは生存率は変わってくるだろうから、とりあえず基礎だけは教えておくか)

基礎だけ……と考えておきながらも、それはゼルート基準での基礎。

「父さん、セラルが体術にもちょっと興味を持ってたんだけど、教える内容はこんな感じでどうかな」

「ふむ………………こっちの攻撃は、モンスターを想定しての攻撃だな」

教える内容を洋紙に記し、父親であるガレンに提出。

内容的に、もう少し軽い内容にしたらどうだと変更するような言葉を口にする者だが、ここには止める者が一人もいなかった。

「はい、そうです。やっぱり、敵を殴るのって人だけじゃないんで、サイズ感とか考えるとこういう攻撃も出来て損はないかなって」

「そうだな。幸い、セラルもそろそろ魔力を纏った強化が安定してくる……本人にその気があるなら、こういう攻撃方法を教えるのもありだな」

俗に、二人の会話内容は魔改造と呼べる分類なのだが……母親であるレミアもその洋紙に書かれてある内容を読んでも、全く反対しない。
つまり……ゲインルート家にとってはただの一般的な戦闘教育だった。

因みに、子供の頃はセラルほど体術に興味を持っていなかったレイリアは……冒険者としての旅の中で、徐々に知り合う体術がメインスタイルの者から色々と技術を盗み、独自に成長していた。
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