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少年期[976]そこまでは頼れない

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「あっ、ゼルート様。少しお時間宜しいでしょうか?」

「? はい、過ごしぐらいなら」

比較的若い騎士に声を掛けられ、とある部屋へ入ると……そこには戦争のさい、顔話合わせた騎士団団長……ビリーズ・ディスタックがいた。

「済まないな、国王陛下との話が終わって直ぐに呼んでしまって」

「いえ、特に予定がある訳ではなかったので大丈夫です」

「そう言ってもらえると助かる。さて、早速本題に入らせてもらおう」

ビリーズの相談内容は……どうすれば強くなれるか、といった非常に単純な内容だった。

(??? ビリーズさんは、既に十分強いと思うんだが)

実際に手合わせはしたことがないが、ぱっと視だけではあるものの、確実にローレンス・ディスパディアに劣らない実力を持っている。

先日激闘を繰り広げたガラックスと比べても、捧命の指輪を使わない状態であれば、負けることはないと断言出来る。

「えっと……強くなりたいというのは、騎士団の団員を含めてということですか?」

「あぁ、そういうことになる」

「……であれば、やはりモンスターと戦うのが一番だと思いますよ。ダンジョンなんか、最高の狩場です」

「ダンジョンか。過去に何度か探索する機会があったが……その、君たちの邪魔になったりしないか」

それなりに冒険者と交流をしてきたからこそ解る。
冒険者は基本的に騎士という職に就いている人間を、貴族を嫌っていると。

「俺はそんな事思ってませんよ。それに、ダンジョン以外の場所で盛大に狩りを行ってしまうと、その狩場付近の街を拠点にしている冒険者たちから恨みを買う事になると思います」

「うむ……そこまでやり過ぎたとは思っていないが、過去に経験がある」

「そ、そうなんですね。それなら、やはりダンジョンに潜るのが一番強くなる手段として適してると思います」

そこからゼルートは自分がダンジョンで体験してきた話を全て伝えた。

「といった感じで、強くなれるだけじゃなくてお金や装備なども結果的に潤うと思います」

「ホーリーパレスか……興味は出てきたな」

ビリーズの中でダンジョンに挑み、更なる力を得て国を、民を守る力が欲しいという思いが高まる。

しかし、ダンジョンでモンスターと戦うとなれば……当然のことながら、普段訓練場で行っている模擬戦などとは違い、非常に死ぬ可能性が高い。

人に被害を出しているモンスター、盗賊との戦いで死ぬのであれば……良くはないが、まだそれならばという思いがある。
だが……強くなる為の行動で死ぬというのは、いったいどう踏ん切りを付ければ良いのか。

「騎士団として無理せずレベルを上げることに集中するのであれば、三十一階層や四十一階層……もしくは五十一階層といった、頑張ればその日の間に地上へ戻れるエリアを探索すれば、比較的転移トラップなどに引っ掛かって、団員の方々が絶望的な状況に追い込まれるということにはならないかと思います」

「そうか……であれば、そこまでガイド? に優れた冒険者に頼めば良いと」

「そうですね。団員が……ビリーズ様自身が死なないということを考えると、絶対に投資は惜しむべきではありません」

「……上手くやれば、投資した金も戻ってくることだしな」

「その通りです。というか、上手くやれば基本的に戻ってくると思います。もし心配であれば、準備期間の間にモンスターの解体に慣れるのも一つの手かもしれません」

「そうだな。団員の中にも出来る者がいるが、私自身が出来なければな…………」

ここで一つ、ゼルートに案内だけを頼みたい……そういった思いが生まれた。

しかしその考えは直ぐに駄目だと抹消された。

(彼は戦争で驚くほど活躍してくれた。その後、邪教の強者を葬り去った、そして海がある街でバカンスを楽しんでいたところ……主に私たちの都合で、ディスパディア公爵家に向かうことになった……これほどホーリーパレスというダンジョンの情報を頂いたのだ。これ以上頼る訳にはいかない)

ビリーズは情報料だと言って金貨十枚を渡して別れ、その後真剣に自分を含めて騎士団の戦闘力増強に関して副騎士団長たちと共に話し合った。
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