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少年期[953]現実的に、不可能ではない

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(全く、私たちだけで相手をするですって? 本当に無茶を言うわね。でも、実際にそうなったとして向こうはどれだけの戦力を集められるのかしら。基本的に自分の命を優先する冒険者たちは参加しないでしょうし、前回の戦争の活躍でゼルートがSランクの魔物を一人で倒せるという話を、少なからず信用する人が増えた筈……出来ない話ではなさそうね)

アレナはゼルートが造り出した錬金獣も忘れておらず、それらの総戦力を考えた場合……おのずとそれはいくらなんでも不可能では? という否定の考えがかなり薄らいでいた。

(今度は私たちだけで一国と全面戦争……ふっふっふ。向こうの冒険者たちがどれだけ参加するのかは分からないが、それでもまた思いっきり暴れられそうだな)

ルウナはアレナほど仮にそういった事態に発展したらどう戦うか、詳しく考えてはいない。
本当に普段のルウナ通り、強敵との戦闘を楽しむことしか頭にない。
そして……一応、ルウナの頭の中に錬金獣という存在は消えておらず、それらの戦力も含めた上で、自分たちが負けるとは一切考えていなかった。

「後ろの二人に聞きたいことがある。二人は、率直にリーダーであるゼルートの発言した事態に発展してしまった場合、どうするのだ」

国王陛下からの質問に一瞬キョトンとするアレナとルウナ。

近衛騎士に視線を向けて確認を取り、まずはアレナから自身の考えを口にする。

「一国との戦争。非常に恐ろしく思いますが、まずディスタール王国の多くの冒険者はその戦争には参加しないでしょう。実際に、先日の戦争では多くの冒険者たちがゼルートとの戦闘を避けました」

戦場であれば、わざわざ強い敵と戦わず、自身と同等……もしくは自身よりも弱い敵と戦った方が生き残る確率が上がるのは至極当然。

だが……ゼルートたちだけと戦うとなれば、敵には強敵しかいない。
加えてゼルートの一騎当千っぷりは戦争で生き残った冒険者たちが、肩を震わせながら同僚たちに伝えている。

それを信じない自信過剰なバカ、あるいは猛者がいるが……危機管理力が高い者は、まず参戦しない。

「加えて、元々の原因はゼルートでもディスタール王家でもなく、ディスパディア家です。全ての元凶が自国にあることを認めたくない貴族がいるかもしれませんが、それでも全ての貴族が再度兵力を集結させて我々と戦おうとするかは疑問に思うところです」

最もらしい言葉を口にするアレナだが、それらは建前的な意見。

「それと……やはりゼルートが一対多数とはいえ、負ける姿が想像出来ません。先日の戦争に猛者がいなかった訳ではありませんので、再度ディスタール王国内の猛者を集めたところで……というのが本音です」

「次は私だな」

せっかちなルウナはささっと自分の考えを述べる。

「基本的にはアレナと同じ考えだ。です」

余り敬語に慣れていない為、やや文章がおかしい。

「個人的には強者との戦闘が楽しみであり、例え戦うのが私たちだけであっても、臆する理由にはならない、です」

「そうか……ゼルート、非常に頼もしい仲間を持ったな」

「そこは運に恵まれたと思っています」

国王陛下は……仮に再度ディスタール王国と戦争が起こってしまったとしても、本人が了承しているとはいえ、ゼルートたちだけに任せるつもりはない。

(そうならないことが一番だが、万が一を考えて人選しておいた方が良さそうだな)

一先ず……とりあえずではあるが、国王陛下はゼルートの行動を了承し、一筆書いた。

それを見せることにより、ゼルートの怒りが爆発した際……本当に国の中心人物が殺されてもおかしくないという証明になり、ディスパディア家の者たちがバカな行動を起こさない抑止力となる。

「それでは国王陛下。そして近衛騎士のお二人も、礼をさせていただきます」
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