上 下
783 / 998
連載

少年期[940]それが戦争

しおりを挟む
「それで、結局ディスタール王国に行くの?」

「行くしかないだろうな」

「こっちが向こうに行くのか? 向こうから決闘を頼み込んで来たのだから、そのディスパディア家の連中がこちらに来るのが筋というものではないのか?」

ルウナの言葉は正しい。
普通に考えれば、それが当然なのだが……ゼルートの頭には最悪の展開が浮かんでいた。

「普通はそうだろうな。俺も手紙を読んだ時は、そうであるべきと思ったけどな……ディスパディア家の連中に、過激派がいたらどうする」

「過激派というのは……どういうことだ?」

「そういう事ね~」

ルウナは首を傾げるが、アレナはゼルートが何を言いたいのか直ぐに理解した。

「どういう事なんだ、アレナ」

「本当にゼルートがローレンス・ディスパディアを倒したのか、その身をもって確認したい人たちはいるでしょう。でも、過激な騎士とかはこちらの住人や冒険者、運が良ければ騎士たちを殺して、少しでも自分たちの無念を晴らそうと考えて、暴走する人が現れてもおかしくないでしょ」

「………………」

開いた口が塞がらなくなる。

数秒ほど、仲間が言っている言葉の意味を理解出来なかった。

「それは……騎士として、貴族としてどうなのだ?」

「あり得ないでしょうね。でも、人は理屈で動く生物ではない……それはルウナも良く解ってるでしょ」

「いや、それは……まぁ…………しかし、状況が異なるというか」

「自分たちの行動のせいで、国が……使える主人の立場がどうこうって考えられない。そういった連中がいてもおかしくない。というか……個人的に、普通の人間をそういう思考に変えてしまうのが戦争だと俺は思う」

相変わらず子供らしくないセリフを口にするゼルート。

しかし、今のゼルートには数々の修羅場を潜り抜けてきた実績もあって、その言葉に確かな重みと説得力があった。

「まっ、そういう訳だから俺たちが向こうに出向くんだよ。そうすれば……仮に襲撃を受けるにしても、俺たちだけで済むだろ」

「それは……そうなるな。私としても、私たちを狙う様な強者との戦闘は大歓迎だ」

「ルウナ、本当にあなたは相変わらずね」

なにはともあれ、ゼルートたちのこれからの予定は決まった。

「んじゃ、さっさと返事を書いちまおう」

了承の胸を伝える返事を印、冒険者ギルドへ王都までの配達を頼む。

書類の内容が内容であるため、ギルドは現時点で用意出来る最強の護衛を用意した。

「よ~~し、それじゃ予定に間に合わせるために、攻略を進めるぞ!!!」

面倒事に巻き込まれながらも、直近の目標は忘れていない。

そう……ゼルートたちはここ最近、ダンジョン攻略に勤しんでいた。
そして遂に、数日もあれば四十階層に到着出来る。

予想通り、三日後には四つ目のボス部屋前に到着。

「ふっふっふ……さすが中の様子は解らないけど、結構ヤバい気配を感じるな」

「Bランク魔物が四体か?」

「ルウナとしては、Aランク魔物の方が嬉しいんじゃないの?」

二人も同様にボス部屋の中から、薄っすらとただならぬ気配を感じていた。

「今回、僕は遠慮するよ。ブルーシーサーペントとの戦いで楽しめたからね」

「ふむ……それなら、自分もサポートに徹した方が良さそうですな」

ラームとゲイルは、強敵と自分メインで戦うのを辞退。
そして当然の如くアレナも自体。

「まっ、参加の有無はボスの数が分かってからじゃないとな」

壁の前に立つだけでは、中にどんな魔物が待ち構えているのか分からない。

全員大なり小なりドキドキワクワクしながらボス部屋の中へ入場。

「わぉ……で、デカいな」

ボス部屋の中でゼルートたちを待ち構えていたのは、一体の超巨大亀だった。

Aランクの魔物、フォーシックタートル。
まず地上では殆ど遭遇することはない、超巨大な怪獣。

個体さはあれど、比較的好戦な種族であり……ゼルートたちが誰をメインにするか決める前に、水のバズーカ砲を放った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います

みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。 当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。 今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。 それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。 だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。 そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

あなたが幸せになれるなら婚約破棄を受け入れます

神村結美
恋愛
貴族の子息令嬢が通うエスポワール学園の入学式。 アイリス・コルベール公爵令嬢は、前世の記憶を思い出した。 そして、前世で大好きだった乙女ゲーム『マ・シェリ〜運命の出逢い〜』に登場する悪役令嬢に転生している事に気付く。 エスポワール学園の生徒会長であり、ヴィクトール国第一王子であるジェラルド・アルベール・ヴィクトールはアイリスの婚約者であり、『マ・シェリ』でのメイン攻略対象。 ゲームのシナリオでは、一年後、ジェラルドが卒業する日の夜会にて、婚約破棄を言い渡され、ジェラルドが心惹かれたヒロインであるアンナ・バジュー男爵令嬢を虐めた罪で国外追放されるーーそんな未来は嫌だっ! でも、愛するジェラルド様の幸せのためなら……

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

幸せを望まなかった彼女が、最後に手に入れたのは?

みん
恋愛
1人暮らしをしている秘密の多い訳ありヒロインを、イケメンな騎士が、そのヒロインの心を解かしながらジワジワと攻めて囲っていく─みたいな話です。 ❋誤字脱字には気を付けてはいますが、あると思います。すみません。 ❋独自設定あります。 ❋他視点の話もあります。

婚約破棄!? ならわかっているよね?

Giovenassi
恋愛
突然の理不尽な婚約破棄などゆるされるわけがないっ!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。