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少年期[909]その言葉で済ますとは

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ゼルートは地面に着地すると同時に駆け出し、目的に到着するまでに襲い掛かってきた数人を、複数の属性魔法で瞬殺。

当然、ワイバーンスコールや煉獄の凶弾、天竜の戯れの様な超高火力の魔法は使っていない。
それでも一般的な中級クラスの攻撃魔法でも、ゼルートとクラスの腕を持つ戦闘者が使えば、それなりに戦える者を瞬殺することも不可能ではない。

「あんたが、この海賊団の頭、で良いんだよな」

標的に接近成功した瞬間、ロングソード状に変形させたミスリルデフォルロッドで斬りかかる。

「あぁ、そうだよ!! んで、てめぇらはいったい誰だ!!!」

先程殺した、それなりに戦える者を十分に殺せる速さを重さが乗った斬撃を、海賊団の頭である青年は一応受け止めた。

「あんたらを殺すために来た冒険者だ」

「んなことは、言わなくても解るってんだ! もっと詳しいこと、教えろや!!!!」

随分と図々しいセリフを吐きながら押し返し、一振り二振りと反撃に出る。

「……俺に良い一撃を入れられたら、教えてやるよ」

「調子に乗ってんじゃ、ねぇぞガキが!!!!」

誰が聞いても調子に乗ってると思う言葉ではあるが、ゼルートにはそれだけ調子に乗れる実力があり、数回斬り結んだ青年は……不本意にもそれを理解出来てしまった。

(あいつらを、一瞬で潰す攻撃魔法の使い手、にも拘らず! このロングソードの扱い、そんで身体能力……こいつ、マジでいったい誰なんだよ!!!!)

海賊である彼らは、あまり陸の情報が耳に入らない。
中にはこまめに情報収集している海賊団もいるが、現在ゼルートたちと交戦中の海賊団は、陸の情報にかなり疎い。

しかし、ゼルートと三分ほど斬り結ぶ中……目の前の子供の仲間である、ドラゴンとリザードマン。
そのセットから、一つの答えが青年の頭に浮かんだ。

「てめぇ、もしかしてゼルートって冒険者か!!」

「おっ、やっと気づいたか」

敢えて自分の正体を教えなかったゼルートが、いずれ気付くだろうと思っていた。

それでも、頭目が思い出すまである程度時間が掛かったことに、ほんの少し驚き呆れた。

(もっと早く気付くと思ったんだが、こんな場所にいるからか、全く情報が入ってこないのか?)

まだ見た目は子供。
そしてドラゴンとリザードマンという珍しい従魔を隣に従える冒険者。

ある程度冒険者として活動……しておらずとも、そんな冒険者が他にいないと気付く。

「ちっ!! 面倒な奴らを、よこしやがって!!」

「……はっはっは!!」

自分たちを「面倒な奴ら」という言葉で片づけられた。
そんなまさかの反応に、笑わずにはいられない。

「なに、笑ってんだ!!!!」

馬鹿にされたと思った青年は声を荒げるが、ゼルートは彼らの情報収集力の皆無さを笑ったのではない。

戦争での一件で大きく名が広まった自分たちを、面倒な奴らと言う言葉で片づけられたことに対し、つい笑ってしまった。

(まだ冒険者になって……二年ぐらいか? それでも、それなりに名が広まってきたと思ってたんだけど、まだまだみたいだな)

頭目の情報収集力の無さや、ただ口がデカいだけ……もしくは威勢を張っているだけかもしれない。

しかし、何はともあれ面白い存在であることに変わりはない。

(海賊行為だけで、ここまで強くなれるか? 周辺の海中にいるモンスターを狩ったりしてなきゃ、ここまで強くなることはないだろう)

ゼルートは青年の身体能力に、相手が海賊ということは解っていつつも、少なからず敬意を持った。
加えて、更に驚く点がある。

(あと……この武器を一時とはいえ盗られた商会の人には申し訳ないが、もしかしたらこの頭目は、天性の刀使いなのかもしれないな)

現在頭目が振るう刀は、盗まれてから三か月も経っていない。
にも拘わらず、青年の刀捌きは、既に一流の刀剣使いと変わらない。

その事実が、ゼルートの表情に薄っすらと笑みを浮かべさせた。
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