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少年期[893]一生自慢出来る

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「なんか、今日も今日とてって感じだな」

「そうね」

ホルーエンを離れ、ラルフロンへ向かう道中の二日目、ゼルートたちは……盗賊と戦っていた。

勿論、盗賊たちからゼルートたちを襲ってはいない。
少し前までは、いかつい紅色のリザードンや小型とはいえドラゴンが傍に居ようとも、関係無しに襲い掛かってきていた。

パッと見強そうなモンスターを従魔にしていても、それはそれで裏と繋がりがある商人に売れば、高値で売れると考えてしまう。

だが……そういった生温い考えを持ってゼルートたちを襲って来た者たちは、全員返り討ちにされ、アジトごと潰されている。

そういった不敗神話に近い話が盗賊たちの間にも流れ始め、向こうからゼルートたちを襲うことはなくなった。

「それじゃ、お前らのアジトを教えてもらおうか……って言っても、素直に教えてくれるわけないよな」

現在、商人を襲っていた盗賊たちを発見し、護衛の冒険者たちがやや不利だと判断したため、即座にゼルートが参戦。

目的地がラルフロンと決まってはいるが、そこまで急ぐほどでもないため、そのままアジトを潰そうと決めた。

「そうか、情報提供ご苦労さん」

不得意ではない闇魔法を使い、情報を引き出してから即座に斬殺。

「これからこいつらのアジトを潰しに行くけど、一人ぐらい付いてくるか?」

同業者とは基本的に仲良くしたい。

そう考えているゼルートは、パッと視で一番強そうな冒険者に視線を向けた。

「お、俺が行きます!」

「分かった。しっかり付いてきてくれよ」

万が一のことを考え、アレナとラームとゲイルが商人たちの護衛として残り、護衛の中でトップの実力を持つ冒険者と共に、ゼルートたちは聞き出したアジトへと向かった。

「呼吸は整ってるか?」

「ふぅ、ふぅ、ふぅ…………はい、大丈夫です!!」

ゼルートより五歳ほど年齢が上の冒険者は、完全に呼吸を整え、気合を入れ直してゼルートたちと共にアジトへ突入。

(う、噂は聞いてたが、本当に、すげぇ!!!!)

冒険者であれば、ここ最近冒険者になったばかりの者であっても、ゼルートという名の冒険者が、一人で戦争を終わらせる程の活躍をしたという噂話は知っている。

戦争に参加していない者は、当然その噂話を疑う。
戦争に参加していた者は………半分ぐらいは、疑えば半殺しにされると、若干恐怖を抱いていた。

そういった同業者の感想話なども耳に入ってくるが、ゼルートの好意でアジトへの突入に参加した男は、それらの噂を改めて事実なのだと理解した。

(これの体験は、一生! 自慢出来る!!!!)

興奮故か、男は今までの人生で最高のパフォーマンスを発揮することが出来た。

「それじゃ、持ち帰るか……どれが欲しい?」

「えっ……俺も、貰っても良いん、ですか」

「先に盗賊たちと戦ってたのはあんた達だからな。その権利はある。ってか、多分どっかにアイテムバッグかポーチがるだろ。さきにそっちを探すか」

盗賊たちが身に付けていたとはいえ、そこそこ質が高い武器や防具が多い。

今まで道行く商人や冒険者たちを襲って蓄えていた物も含めれば、大金になるのは間違いない。
ただ、それらを持ち帰るにはアイテムバッグやポーチが必要になる。

アジト内を探した結果、運良く持って帰りたい分だけの量が入るアイテムバッグがあり、男は超ご機嫌な様子で仲間たちが待つ場所へ戻った。

「「「「「本当にありがとうございます!!!」」」」」

男も含めて護衛を担当していた冒険者たち、全員は再度感謝の言葉をゼルートたちに伝えた。


「なんか、上に立つ人の優しさ? みたいなのが身に付いてきたじゃない」

「俺は元々優しいと思うんだが……まっ、こうやって同業者からの好感度を上げておくのも悪くないだろ」

戦争での一件で自身の評価が上がった。
だが……まだ同業者からそこまで好かれていない事を、無意識に自覚していた。

しかし、これからゼルートが今回の様な優しさを見せても、多くの同業者から好かれる……嫌われない、という状況になることはなかった。
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