上 下
676 / 998
連載

少年期[833]取り乱すことはない

しおりを挟む
王城で開かれるパーティー当日……ゼルートたちはガレンとレミアと一緒に、王城に来ていた。

王城で働く者たちによって、色々とセットされたゼルート。

「とてもお似合いです、ゼルート様」

「そ、そうですか? ありがとうございます」

過去に来た動きやすい正装を身に纏い、髪型はヘアメイクスタイリストたちによって、普段は絶対しないような髪型にセットされていた。

(確かに変だとは思わないけど、俺に似合っているかどうかは……いや、王城で働く人たちの腕を疑うのは良くないな)

王城で働ける者たちは、使用人の中でも限られたエリートたちのみ。
当然、仕事の腕が並であるはずがない。

(この方が今回の戦争で活躍した英雄様なのよね……噂通りの外見だけど、あまり強そうには思えないわね)

(活躍の内容が本当のか疑わしいけど……横柄な態度じゃないところは好感が持てる子ね)

(こ、この人の魔力……いったいどうなってるのかしら? どうやら、戦争で活躍した内容は全部本当……なのかもしれないわね)

王城で働いていれば騎士たちと遭遇することは何度もあるが、彼女たちは戦力を測ろう……なんて考えで彼ら彼女たちを見ていないので、一目で戦力を見抜ける眼など持っていない。

だが、貴族の娘である者たちが多く、当然……貴族の娘というだけあり、魔法の腕はそこそこあるというメイドもいる。
そんなメイドの中でも魔力の感知力が高い者であれば、ゼルートの異質さに気付く者も……僅かにいた。

しかし、そこは王城で鍛えられたメイド。
予想外な事実が目の前にあろうと、取り乱すことはなく、淡々と自分の仕事を行った。

そしてヘアセットなどが終わったゼルートはアレナたちと合流。

「うん、やっぱり綺麗だな。母さんも凄く似合ってるよ」

「褒めてくれて嬉しいわ、ゼルート」

当然、今回の戦争に参加したレミアも祝勝会のパーティーに参加する。

ゼルートほどではないが、レミアも超強力な移動砲台としてディスタール王国側の戦力を削り、前で戦う兵士や騎士たちの援護も行っていた。

その戦闘力の高さは国に仕える魔法師団、宮廷魔術師たちの耳にも入っており、是非とも我が師団に入団してもらうべきだ!!!! と考える者も幾人かいるが……レミアは例え本当に勧誘されたとしても、入団する気は一ミリもなかった。

ゼルートたちが集合した後、直ぐに国に仕える騎士の一人が現れ、国王陛下が待つ場所へと案内される。

「まずはゲインルート様からお入りください」

「分かった」

ディスタール王国との戦争が始まった時すらあまり緊張していなかったガレンだが、これから国王陛下と会う……その未来にとても緊張しており、入る前に二度深呼吸をし……完全に心を落ち着かせてから入場。
勿論、この時一緒に活躍したレミアも一歩後ろを歩きながら中へと入る。

「父さんもこれで子爵か伯爵か」

「冒険者から貴族になり、一代で子爵か伯爵……改めてとんでもないわね」

「……ふむ、その通りだな」

アレナとルウナの言葉に同意するかのように、ゼルートたちを案内した騎士と、扉の前に立って侵入者を撃退する騎士二人も頷いた。

「とんでもないんだろうけど……まっ、時代が時代だったから、と言える面はあるだろうね」

爵位を上げるには当然、領地の発展や功績が必要となる。

今回の戦争に関しては、必要な功績になりうる可能性が大きかった。
領地もゼルートが生まれた頃と比べてかなり発展しているので、ゼルートとしては当然の流れと感じる部分がある。

「というか……これ、俺じゃなくて二人も中に入るんだよな」

「そういう指示ね」

「ということは、やっぱり二人も爵位を貰うことになりそうだな」

「そ。そうなりそう……ね」

ゼルートとの言葉はまさにその通りであり、二人に用がなければ……アレナとルウナがゼルートと一緒に国王陛下の御前に向かうことはないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います

みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。 当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。 今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。 それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。 だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。 そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

あなたが幸せになれるなら婚約破棄を受け入れます

神村結美
恋愛
貴族の子息令嬢が通うエスポワール学園の入学式。 アイリス・コルベール公爵令嬢は、前世の記憶を思い出した。 そして、前世で大好きだった乙女ゲーム『マ・シェリ〜運命の出逢い〜』に登場する悪役令嬢に転生している事に気付く。 エスポワール学園の生徒会長であり、ヴィクトール国第一王子であるジェラルド・アルベール・ヴィクトールはアイリスの婚約者であり、『マ・シェリ』でのメイン攻略対象。 ゲームのシナリオでは、一年後、ジェラルドが卒業する日の夜会にて、婚約破棄を言い渡され、ジェラルドが心惹かれたヒロインであるアンナ・バジュー男爵令嬢を虐めた罪で国外追放されるーーそんな未来は嫌だっ! でも、愛するジェラルド様の幸せのためなら……

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

幸せを望まなかった彼女が、最後に手に入れたのは?

みん
恋愛
1人暮らしをしている秘密の多い訳ありヒロインを、イケメンな騎士が、そのヒロインの心を解かしながらジワジワと攻めて囲っていく─みたいな話です。 ❋誤字脱字には気を付けてはいますが、あると思います。すみません。 ❋独自設定あります。 ❋他視点の話もあります。

婚約破棄!? ならわかっているよね?

Giovenassi
恋愛
突然の理不尽な婚約破棄などゆるされるわけがないっ!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。