上 下
648 / 1,015
連載

少年期[805]ホームランアタック

しおりを挟む
「潰れてもらおうか」

ブラッソはここにきてAランク冒険者たちを確実に潰すために、腕力強化のスキルを使用。

「ふんっ!!!!!」

「ぐっ、ッ!!!???」

何も攻撃技を使用していない。

ただただ強化系のスキルを使用した状態で……思いっきり棘棍棒を振り下ろした。

ロングソード使いが使っているロングソードは確かに業物だった。
ブラッソの振り下ろしを腹で受けても、罅が入らないぐらいには丈夫さもある。

ただ、ブラッソの攻撃に対してロングソードは耐えられても……その持ち主は耐えられるのか?

その答えは……否。
ブラッソの一撃をほんの一瞬だけ耐えたが、直ぐに両腕は潰されてそのまま自身の愛剣の腹で潰された。

「ぶ、ぁ」

「次」

残りの面子はここで全てを使い潰すつもりで挑んだ。

元々は超高火力砲台のレミアを潰すために動いていたが、それと同等な程に目の前のオーガはヤバい、ヤバ過ぎる。
レミアは潰せずとも、目の前のこいつだけでも潰す。

殺気の……覚悟の質が変わった。
当然、それにブラッソは気付く。

「良い心地だ」

全身全霊で、ここで力を使い尽くすつもりで強者が自分の命を取りに来る。

とてつもなく……心が昂る。

(もっと遊びたいが、済まぬな)

速く殺さなければいけない。
逃がしてやることも出来ない。

そんな事をすれば、ガレンが属する国の兵士や冒険者たちが殺される。

ゼルートの従魔であり、ガレンの友人であるブラッソとしては……少しでもその要因を潰しておきたい。

「タイタンスレイヤーッ!!!!」

かつてゼルートがコロシアムタイプの罠で対峙した真紅の毛を持つミノタウロスの亜種が使った斧技、タイタンスレイヤー。

自身に反動が返ってくるとはいえ、その一撃はブラッソとしてもあまり食らいたくない一撃。

体格はミノタウロス亜種に劣るが、研鑽を積み続けてきた怪力に加えてマジックアイテム、スキルによる強化。
その一撃はゼルートが対峙した強敵が放った威力に勝るとも劣らない。

仮に……ブラッソがこれを避けてしまえば、他の兵士や冒険者たちが衝撃波でやられてしまう可能性がある。

(正面突破あるのみ!!!!)

ミスリルの棘棍棒に火炎を纏い、その状態でホームランをかました。

「「「「「ッ!!!???」」」」」

その衝撃音は音が止まない戦場の中でも広く響いた。

ただ、その硬直は一瞬。
ブラッソはゼルートに教わった魔力操作による加速を行い、タイタンスレイヤーがその威力を発揮する前に激突。

その結果、大斧の刃が押し返されて顔面をバッサリ。
そして大斧使いはそのまま吹き飛ばされ、まさにホームランボールのように大きく宙を舞い、百メートル以上飛ばされてから地に落ちた。

「はっ!!!」

「ぜぁあああッ!!!!」

しかし、ホームランアタックなど……攻撃の後隙が大き過ぎる。

まだ残っている双剣使いと槍使いはその隙を見逃さず、同時に刃を放つ。

(この程度だと、やはり気付けるな)

暗殺者でも無い者に、闘志や殺気を隠せと言うのは難しい。
知人が二人もやられては、完全に冷静な状態でいるのも困難。

二人が攻撃してくるタイミングが丸分かりのブラッソは片足でジャンプし、二人の攻撃をあっさりと回避。

「「なッ!?」」

まさかあの状態から片足で跳ぶとは思っておらず、顔が驚きで崩れる。

「悔いは残すなよ」

ブラッソは二人のことを完璧に殺すつもりなので、敵としてそれだけは助言を与え、二人との距離を一気に縮める。

そしてゼルートから貰った大剣をアイテムバッグの中から取り出し、二人を側面から攻撃。

着地したその脚で駆け出し、二人との距離を一瞬で縮め……双剣使いと槍使いはどうやって躱せば良いのか、選択を迫られる。

バックステップか、伏せるか、先程のブラッソの様に上に跳ぶのか。

(違うでしょ!!!)

(ここで逃げてどうする!!!!)

二人が選んだ選択は回避ではなく、前に脚を踏み出し……ブラッソへの攻撃。

(見事な選択、勇気だ)

ブラッソは心の中で二人の選択を褒め称えながらも、その命をくれてやるつもりはない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。 テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。 イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。 イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。 それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。 何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。 捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。 一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。 これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

たんたん
ファンタジー
講談社マンガ原作賞 大賞作品🏆✨ド定番を読み飽きた方にお勧め ⚠️R15作品⚠️ ⚠️過激表現は付けていませんが、エロティックな結構きわどいシーンがチラホラある作品なので15歳以下の方は読まないでください。 15%の復讐劇、5%の笑い、10%のミステリー、70%のキュンキュン💖を詰め込みました。 【あらすじ】 結婚式当日に何者かに殺された主人公は、赤ちゃんになっていた。 早く大きくなって復讐したいと願っていた矢先に―― 謎のコスプレ集団に誘拐されてしまう。 でも誘拐された先は主人公の知る普通の世界ではなく、魔法が存在する世界が広がっていた。 全寮制の魔法学園に強制入学させられてしまった主人公は、父からの「この学園は表向きは魔法使いを育てる学校で、本来の目的は……」というメッセージに頭を悩ます。 本来の目的を知ることも、学園から脱出することも出来ない。 そんな中で、愛や恋を知らない主人公が成長して行くお話です。 【登場人物】 ・タチバナ・シエル 黒髪 黒目 可愛くて美人 復讐に燃える 学園最弱の魔力の持ち主 ・カミヅキ・ディオン 白銀 切れ長の蒼い目 この世のものとは思えない程の美しい容姿の持ち主 人を簡単に殺しそう、というか既に殺してそう シエルが一番会いたくない奴 ・サオトメ・ロレンツォ ふわっとしたアッシュブラウンの髪に、色素薄めの茶色い目 名家の一人息子 100年に1人の凄い魔力の持ち主 中性的で美しい美貌の持ち主で、学園のアイドル的存在 誰にでも優しい ・ジョウガサキ・アラン 突然転校してきた大阪弁の派手で女慣れしてるチャラいイケメン 元T大の医学部生 見た目とは想像できない程にIQが高く賢い ・今世のシエルの両親 優しく、たっぷりと愛情を与えてくれる親の鏡のような人達 異常な程にシエルの長生きを願う 本棚追加してもらえるとやる気がみなぎります🤗 表紙はpixivにあったフリーアイコンになります。 - ̗̀ 📢💭お知らせ 完結前に加筆修正します。こちらは加筆修正前の作品です。 狂愛 すれ違い 両片想い 両片思い

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。