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少年期[415]偶には頭を使う

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(そういえば侯爵家のチキンお坊ちゃんが阿呆な真似してないか確認しとかないとな)

ゼルートは全力で気配感知を使い、レイリアの周囲に暗殺者がいない確かめる。
すると周囲というほど近くにはいないが、それでもレイリアを観察できる位置に数名の実力者が尾行しているのを発見。

(こうもある程度の実力者が一人の人物に合わせて動いてるってのは絶対に偶然じゃないよな。場所は三か所でそれぞれ二名で行動してるみたいだな)

「ゼルート、何か難しい顔をしているがレイリアに声を掛けないのか?」

「いや、とりあえず面倒事を片付けないとな」

その一言でアレナ達は現在どういった状況なのかを理解し、表情から緩みが消える。

「本当におバカさんだったのね。それで、数は?」

「計六人で、二人ずつに分かれている。だから人数的にはこっちも二人ずつに分かれた方が良いんだろうけど、他にいないか確証がある訳では無いから、三人はこっちに残って姉さんに危害を加える奴がいないか見ておいて欲しい。そうだなぁ・・・・・・俺とルウナとラームで倒しに行く」

「了解した」

『任せてよ!!! ギッタンバッタンに倒すね!!!』

「いや、そこまでボロカスにしなくて良い」

「「『『『えっ?』』』」」

家族や仲間に危害を及ぼす相手には絶対に容赦しないゼルートが、家族を狙う暗殺者に対してボコボコにしなくて良いと言った。
それはアレナ達にとって衝撃的な一言だった。

「お前らなぁーー、俺だって少しは頭を使うんだよ。だから殺さず拘束してくれ。出来なければ行動不能で構わない。アレナとゲイルとラルは引き続き姉さん達見ていてくれ。ルウナとラームはとりあえず移動だ」

大通りから外れたゼルートはまずレイリアを狙っている者達の場所を二人に伝える。

「ラーム、人の姿に成って行動してもらっていいか?」

『了解!!!』

スライム状態から少年の姿に変わり、ラームは腰から短剣を抜いて何度かその場で素振りを行う。

「うん!! この状態でも全然動けるね」

「それは良かった。そんじゃ、とりあえずいきなり攻撃はしなくて良い。ただ向こうから問答無用って感じに攻撃してきたら捕縛か、駆動不能にしても大丈夫だ。そんじゃ、いくぞ」

身体強化のスキルを使い、一気に暗殺者たちとの距離を縮める。

そのころ裏通りの屋根上にて、二人の暗殺者が一つの集団を監視していた。

「貴族の坊ちゃんからはこういった依頼が多いな」

「大抵の場合は近くに飛び抜けて強い護衛が対象の周囲にいるから上手くいく事は無いんだけどな。だが、今回は上手くいきそうだ」

事前に仕入れた情報からターゲットが一般的な貴族の子息や令嬢と違って頭が一つ二つ抜けている事は知っている。
だがそれでも二人は今回の仕事を失敗するとは思っていない。

「さて、問題は何時攫うかだな。連れと丁度離れたタイミングが良いんだが・・・・・・もうちょい粘るか」

「別にその必要は無いんと思うぞ」

「「ッ!!!???」」

突然聞こえた自分達以外の声に二人は声の聞こえた方向に振りかえる。
そこに一人の武装した少年がいた。

年齢はターゲットにしている少女と同じかそれ以下。
にも拘わらず二人の態度に余裕はない。

「へぇーーー、中々賢いんだな。俺が子供だからもう少し横柄な態度を取りながら威嚇してくるかと思ったんだけど」

「・・・・・・ゼルート、だな」

「あの一件で随分と広まったみたいだな。とりあえず正解とだけ言っておくよ」

ターゲットの兄弟にして最大の障害と言える人物。
その存在を忘れていた訳では無いが、完全にレイリアとその友人にしか意識が言っていなかったので、少し離れた場所にゼルート達がいた事に気付けなかった。

「そんで、お二人さんは俺と一戦やるか? 俺としてはあんまりお薦めしないけどな」

ベテランの暗殺者に全く怯える事無く笑顔で戦意を向けるゼルートに身構える二人。

(事前に情報は得ていたが、ここまで規格外なガキだとはな)

二人共裏の仕事に関わっているため、自分達が逆に殺されるかもしれないという事は解っている。
だが、それでも生きたいと思うのが生物の性なので二人は戦って切り開くという選択肢を選んだ。

しかし目の前の少年から予想外の提案を出された。
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