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少年期[405]動けない一瞬

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序盤はほぼ互角の戦いを見せるディリアとフーラ。
しかし徐々にフーラの速度が上がり始める。

「もしかしてあの短剣には速度強化の効果でもあるのか?」

「ディリアの方が少し防戦的になっているのをみると、その可能性はあるわね」

手数がディリアより上回り始めたことで、ディリアの体に複数の切傷が生まれる。
だがそんな小さな動揺する事は無く、防御に徹し始める事で切傷を抑える。

「お互いに頭に血が上っているように思えたが、ディリアという奴は随分と冷静だな。傷つけられた事にムキにならず防御に徹している。だが攻める事も忘れていないみたいだな」

傍から見れば押しているのは完全にフーラなのだが、徐々に後方へと下がり始めた。

「あれは体格の差を優位に生かした技術と言ったところかしら。攻撃だけじゃなくて随分と防御の技術も高いじゃない」

攻撃を防御しながらも相手を圧迫して後退させる。
その状況にフーラの表情が曇り始める。

動く速度が上がった事で多少は攻撃の威力も増しているのだが、二人の筋肉量を覆すほどには至っていない。

そしてタイミングを見計らって後方へ跳んだディリア。

攻撃が空ぶった事に驚く事は無く、逃がさないと言わんばかりの表情をしながら駆ける。
しかしそれがどうやらディリア狙いだったようで口端が吊り上がり、悪い笑みを浮かべる。

そこでゼルートは次にディリアが何をしようとしているのかが解った。

(本当に力だけじゃなく、戦い慣れしているんだな。獣人は基本的に力でゴリ押しとか考えていた訳じゃ無いけど、ちょっと脳筋的なところがあると思っていたんだが、それは間違いだったな)

駆けるフーラに向かってディリアは強く地面を踏みしめる。
いや、踏み砕くといった方が正しいだろう。

体術スキルによって習得出来る技の内の一つ、震脚を使ったことでディリアとフーラを繋ぐ一直線に大きな亀裂が入り、地面が割れる。

それによって足場が崩れ、態勢が崩れた。
その一瞬を突き、フーラの懐に潜り込んだディリアは片方の手斧の側面で頭をかち上げた。

平面とはいえ、鉄の塊をモロに喰らったら意識は途切れずとも脳が揺れ、視界が崩れる。
だが寸でのところでフーラは短剣を挟んでガードした事で直撃は防いでいた。

(行動速度が上がっているから無事に直撃は防げたみたいだけど、ノーダメージって訳では無いみたいだな)

下から振り上げられた事によりフーラの体は宙を飛んだ。
倒れる事無く地面に着地したフーラだが、鼻から血が垂れていた。

「虎人族は獣人の中でも力に優れた種族だ。大盾やバックラーで防いでいるのなら衝撃を体に通す事は少ないが、短剣程度であれば威力が刃を通り抜け、人体にダメージを与えるのは必然だ」

「手斧のマジックアイテムの効果で腕力が上がってるって可能性もあるけど、どちらにしろ力勝負で不利なのは変わり無いわね」

「一回防御に回ると中々抜け出せないみたいだな」

先程までとは攻守が逆転し、ディリアの連撃がフーラを追い詰めている。

「やっぱりマジックアイテムの効果で腕力が上昇してるのかもな。幾らなんでも身体強化に加えて短剣の効果で更に速度を上げたんだったら一撃を防いでその場から脱出することが出来るだろ」

「それ程までに一撃一撃が体に響いて即座に次の行動に移れないんじゃないかしら。あれだけ速く動いていたらそういった一瞬が命取りになるでしょうしね」

「だろうな・・・・・・こりゃ決まったか?」

身体強化もスキルなので徐々に体内の魔力は減っていくので、何時までも今の速度が維持できない。
何か一つ手が無ければこれだ終わりだろうと思っていたゼルートだが、一つ疑問があった。
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