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連載
少年期[281]そこまで鬼では無い
しおりを挟む「ふぅ・・・・・・こっちはどうにか穏便に済ませる方法が無いか考えてはいたんですけど、無駄になってしまったみたいだな。中々強気な娘さんですねノーザス子爵様」
「申し訳ない。普段はもう少し落ち着いているのだがな、今回ばかりはな・・・・・・本当に申し訳ない」
アグローザが腰を折ってゼルートに頭を下げるが、娘のリサーナは男爵家の次男とはいえ現在は一介の冒険者である少年に頭を下げる父親を見ても、態度は一向に変わらない。
(・・・・・・恋しているって訳では無いよな。初めて味わった憧れ、その対象であるゲイルをずっとそばに置いておきたいっていう心情か? これが俺より年齢が上でもっとこう・・・・・・曇りに曇っている瞳プラス、傲慢な態度の奴なら一切容赦はしないんだけどな)
一先ずゼルートはアグローザに頭を上げるように促す。
「俺は今ただの冒険者なんでそんな簡単に頭を下げないでください」
「そう言ってもらえると助かるよ。それで、以前のパーティーの時と似たような状況になったんだが、娘の提案を受け入れてくれるかな」
「娘さんが出してくれた提案は、自分達も考えていた内の一つなんで大丈夫ですよ」
出来れば力づくでの解決の方が楽だと思っていたゼルートには有難い提案だった。
後ろに立っているバレスという騎士を見て、ゼルートは客観的な評価を下す。
(弱いとは思わない。訓練をサボるような奴にも見えないし臆病って訳でも無さそうだ。でも突出したセンスや才能が有る様には思えない。というか、もしそんなのが有ればもう少し堂々としてる筈だしな。そんで実力は冒険者のランクで考えればEからDの間ってところか。・・・・・・いや、対人戦だけを考えればDランク相当か?)
正確な実力は実際に戦う様子を見ておらず、鑑定眼も使っていないため解らないが、負ける気だけはしなかった。
とはいえ油断大敵な状況に陥るかもしれないので、ゼルートは開始直前の一撃だけは警戒しようと一応の作戦を立てた。
「それで、俺が勝った場合の報酬は用意していた金貨五百枚で良いですか?」
「あ、ああ。勿論それで構わないが・・・・・・それだけで良いのか?」
アグローザはゼルートが三バカ貴族と戦った時の賭けの報酬を考えると、本当にゼルートが買った時の報酬が金貨五百枚で良いのか不安だった。
寧ろもっと金貨を増やすか、何かしらのマジックアイテムを用意した方が良いのかと考えていた。
「今回は状況が状況・・・・・・というより相手が相手なんで。それに自分の家族や仲間を侮辱した訳では無いので、無茶な要求はしませんよ」
「そ、そうか。こちらとしてもそれは有難い。それでは早速訓練場に移動しよう」
「ゼルート、ちゃんと手加減しなさいよ。あなたが少し本気を出したら絶対に重傷を負わせる可能性が高いんだから」
「別にそうなっても俺は文句を言われる立場ではないと思うんだけどな。それでゲイル、あいつがどれぐらい強いのか知っているのか?」
もしかしたら滞在中に子爵家の私兵や騎士たちと摸擬戦をしたのではと思い、参考程度にゼルートはゲイルに尋ねた。
「対人戦は歳を考えればそこそこ腕が立つかと、ただ戦い方がまっずぐ過ぎると言いますか、搦め手には弱いですね。まぁ、ゼルート様の強さを考えれば搦め手など使わずとも直ぐに勝負は着くかと」
小声で自身の見解を答えてくれたゲイルと大体考えが同じだったので、自分の負けは完全に無いと確信してしまった。
そんなゼルートの考えを聞いて傲慢だ、慢心が過ぎると思う者もいるかもしれないが、これからゼルートが戦う相手とゼルートの実力は正確に把握できる者ならそうは思わないだろう。
それ程までにバレスとゼルートには大きな力の差があった。
それを一番分かっておらず、バレスが勝負に勝つと疑っていないリサーナの表情は変わらず強気なまま。
娘の表情を確認したアグローザはバレスが勝負に負けた後、どうやって娘を宥めるかを既に考え始めていた。
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