転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第243話 お出迎え

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イシュドたちが入国してから……僅か数日。
たった数日で、彼らはカラティール神聖国の聖都に到着していた。

空飛ぶ絨毯……それは確かに一般人からすれば警戒すべき物に見える。
だが、この国にもマジックアイテムは存在し、空飛ぶ絨毯という貴重なマジックアイテムを知っている者はいる。

その為……彼等は騎士団などに通報されることはなく、そういった事が切っ掛けで、アンジェーロ学園の学生たちとよりも前に問題を起こすことなく、無事に聖都へ到着していた。

「チッ!!! ……なぁ、アドレアス。サックっと中に入れないのか?」

当然、聖都に入ろうとする者の数は多い。

イシュドは……守るべきルールは守らなければならないと思ってはいるが、それでも面倒な事はハッキリと面倒だと告げるタイプである。

「ん~~~~……無理じゃ、ないかな」

「んでだよ。お前、一応俺たちの国じゃあ、王子だろ。こう……あれじゃん、本来は国賓扱いとかされるもんなんじゃねぇの?」

「さぁ、どうだろうね」

意外にも、イシュドが語る内容は間違っていない。
本来であれば、第五王子と言えど、アドレアスは国賓扱いされるべき存在。

ただ……アドレアスはこれから先のことを考えていた。

ここで権力による早技を行使すれば、後にイシュドが起こすであろう問題が本当に起こってしまった場合、少しでも事を良い方向に運びたい。
そういったちゃんとした考えを持っているからこそ、イシュドからの提案に対し、曖昧に対応した。

「……まっ、しゃあねぇか。確かに、こういうのに権力を使うのは、ぶっちゃけ良い気しねぇしな」

仕方ない仕方ないと思いながら列に並ぶこと十数分。
一つの団体が、イシュドたちの方に近づいてきた。

その者たちは、イシュドたちと見た目は違えど、間違いなく制服と呼べる服を着ていた。

「フラベルト学園の方々……で合ってるでしょうか?」

「あぁ、そうだ。そう尋ねるあんたらは……アンジェーロ学園の学生たちで合ってるか?」

「えぇ、その通りです。あっ、申し遅れました。私、アンジェーロ学園の三年生、ステラ・アスティーウと申します」

ステラ・アスティーウと名乗る女子学生が名乗り終え、笑みを浮かべた瞬間……何故か、彼女の後ろか光った様な……後光が放たれたような錯覚を感じた。

それはイシュドだけではなく、ガルフたちも……周囲の聖都に入ろうとする者たちも同じ錯覚を見ていた。

「あんたがそっちのトップか……俺はイシュド・レグラ。フラベルト学園の一年だ。よろしくな」

「はい、これから数日間、よろしくお願いします!!!」

再び後光を錯覚させる元気ハツラツな笑みを浮かべ、イシュドのクソ生意気な態度に対して普段通りに対応するステラ。

(ほ~~~ん? ちょっとは歳下に生意気な態度を取られて、怒りや苛立ちが表に出ると思ったが……マジでなんとも思ってねぇみてぇだな。それに、この手…………ハッハッハ、色んな意味で流石戦う聖女ってところか)

色々と把握したイシュドは無意識に口端を吊り上げていた。

「んで、ここまで来た……わざわざ出迎えてくれたってことは、俺たちを中に入れてくれるってことか?」

「はい! わざわざこちらに出向いてもらったので、これぐらいは当然です」

上が何を考えているのかは知らない。
それでも、ステラ・アスティーウ個人は、自分たちが聖都を出てバトレア王国に、フラベルト学園に向かうべきではないかと考えていた。

「はっはっは!! そりゃ有難いこった」

こうして、イシュドたちは更に十数分待つことなく、聖都へと入ることが出来た。

「……あの、一応今回の代表は、アリンダ先生なのではなく?」

聖都に入ってから、ミシェラは目の前で行われた光景に関して疑問に思った事を、アリンダ本人に尋ねた。

「完全にタイミングを見失った、ってところね~~」

本当にそのままであり、アリンダは自分が今回イシュドたちの引率者であるとステラに伝えるタイミングを間違えた。

(まぁ、でも~~~……実力的にはイシュドが代表ってのは間違ってなさそうだし、別にそれはそれで構わないって感じかな~~)

三次職、精霊魔導士に転職しているアリンダ・アミーレは、間違いなく強者である。
だが、名前から解る通り、アリンダが実力を発揮出来るのは頼もしい前衛がいたらの話。

雑魚が相手であれば容易に蹴散らせるものの、イシュドほど物理的に優れた戦闘力を持つ相手であれば、話しは別。

シドウは……元々イシュド贔屓のところがあるため、特にどうこう思ってはいなかった。

「なぁ、ステラさんよ。もしかして、そっちの黒髪の奴が、二次職で聖騎士に転職したってやつか?」

「ふっふっふ。えぇ、まさにその通りです!! ほら、ご指名よ!」

「は、はい!!! は、初めまして。エリヴェラ・ロランドと申します! イシュドさんと同じ、高等部の一年です」

「はっはっは!!! やっぱりお前がそうだったか!! いやぁ~~、会いたかったぜ、エリヴェラ!!!!」

今回の交流戦を行うに当たって、アンジェーロ学園から参加する学生たちには、事前に参加候補となる人物の情報が得られる範囲で伝えられていた。

その中でも、絶対に参加する学生であるイシュドは、特に要注意人物として彼らに伝えられていた。

そんな人物が……自分たちのトップであるステラよりも、自分に興味を持っていたと知り、エリヴェラは若干混乱していた。

「わ、私にですか?」

「おぅ、そうだぜ。だって、お前みたいな奴がいるって聞いたから、俺らがわざわざこっちに来ても良いって思ったんだぜ」

「そ、そうっだったんですね。それは、その……ありがとうございます?」

文脈からして、ステラに喧嘩を売ってると思われなくもない内容だが、そのステラは一切に気にしておらず、寧ろ誇らしげな顔をして胸を張っていた。

「チッ……」

そんな中、二人と共にイシュドを出迎えに来た集団の中に……一人、不機嫌な雰囲気を隠そうともしない男がいた。

「……なんか、さっきから不機嫌な感情をぶつけてくる奴がいんなぁ……おいてめぇ、喧嘩売ってんのか?」

当然と言えば当然なのだが……色々とあれこれ言われようが、結局喧嘩を売られれば、イシュドとしては丁寧に、ガッツリ買ってやるつもりだった。
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