転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第207話 汚れは付いてない

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「「「…………」」」

根が腐っている者。

この言葉を聞き、ミシェラたち三人はなんとも悩ましい表情を浮かべる。

貴族と王族。
そういった立場であるが故に、三人とも根が腐っている者を何人も見てきた。

(確かに、根が腐ってないという点に関しては、その通りですわね……一応)

寧ろ根が腐っている様な者を毛嫌いするタイプ。

「それと、個人的には強さに対する欲求……そういったところも、魅力的に……感じると、思う」

自分で言っていて恥ずかしさを感じるものの、それは紛れもないイブキのイシュドに対する感想だった。

「……そうですわね。そこは、感心せざるを得ない部分ではありますわ」

実際に、イシュドが強さだけの男ではないことはミシェラも知っていた。

何故なら……イシュドが二人で食べていた夜食。
そこにミシェラたちが乱入してきたことで、結局他の面子の分もイシュドが作ることになった。

「しかし、フレア様のような方がイシュドと……もっと言えば、レグラ家と関係を結ぼうと動いた。となると…………カルドブラ王国以外からも、また新たな留学生が訪れそうですわね」

将来の目標は政治関係の役職に就くことではなく、友人や家族、民たちをモンスターや盗賊たちから守る騎士になること。

そんなミシェラだが、政治的なあれこれが解らない訳ではなく、実際にレグラ家に訪れ…………運良くあのイシュドが、亜神と称する者にも出会え、他の者たちよりも強くレグラ家と上手く関われた時のメリットを知っていた。

「他国の王女、もしくは貴族令嬢…………経緯はどうであれ、モテモテもモテモテよね。学園の令息たちから、嫉妬で襲われない?」

「一対数十での戦いで、イシュドが勝利した伝えたでしょう。加えて、激闘祭ではフラベルト学園だけではなく、他の学園の生徒たちもイシュドがフィリップ、ダスティン先輩、クリスティールお姉様との一対三の勝負で勝ちましたのよ。バカでも、個人で挑むのは当然として、徒党を組んでも無駄だと解りますわ」

「そ、それもそうね…………でも、イシュドって、そうだと解ってて乗るのかしら?」

フラベルト学園にフレア、ルドラと共に留学してきたヘレナ、初めてイシュドという人物と出会い……聞いていた話以上に、その他多数とは違うと感じた。

強さは言わずもがな、貴族とは思えない思考。
女性の好み等に関しても、話を聞いていくうちに……当てはまるタイプは、フレアではなく自分なのでは? と、自惚れ抜きで思ってしまった。

ヘレナ自身としては、自分の様な筋肉質で気が強いタイプのどこが? と疑問符が止まらない。
しかし、事実として本当にイシュドはフレアとヘレナ、どちらがタイプだと問われれば、間違いなくヘレナだと答える。

「好みのタイプだったとしても、あの男は相手の狙いが見抜けないバカではない…………難しいですわね」

ミシェラにとっては、イシュドが誰とくっ付こうとも、どうでも良い。

しかし、結果としてぶった斬る機会が失われるのだけは避けたい。

「そういえば話は変りますが、イブキ。今度ガルフとフィリップ、アドレアス様の三人と共に依頼を受けるみたいですわね」

「えぇ、そうですね。イシュドやミシェラがいない状態で依頼を受けるのは初めてですが、上手くやれるかと」

「ガルフ、か……平民の中にも強い者がいるのは解っていたけど、あいつほどあの歳で、あそこまで強い奴は結構珍しいんじゃないの?」

先日、イシュドからの提案により、結果としてガルフとタイマン勝負をすることになったヘレナ。

元はタッグバトルだったのだが、ヘレナは一対一の状況になったとしても、負けるつもりは一切なかった。
だが、結果としてヘレナはガルフに負けてしまった。

フレアの護衛、未来の騎士としてのプライドはあれど、自身の敗北を素直に認められない程、プライドに不必要な汚れはこべり付いていなかった。

「そうですわね。激闘祭で行われた試合の中で、ガルフとサンバル学園のディムナ・カイスの試合がベストバウトだったという声が多かったと聞きましたわ」

ガルフとディムナの試合が行われた時、ミシェラはまだ敗退していなかったため、その戦いを観客席で観ていなかった。
イブキもまだその時には留学していなかったため、この場には実際にガルフ対ディムナの激闘を観た者はいなかった。

「鬼竜・尖との戦いでも、真っ先にリスクを背負ってでもダメージを与えるという姿勢を見せたのはガルフでした」

「良いねぇ……けど、元からあんなに強かったの?」

「素質がなければ、学園に入学出来ませんわ。ただ、その素質が開花し、己の実力に自信を持つ切っ掛けを作ったのは、間違いなくイシュドでしょうね」

「教育者としても才能があるってこと? そういう話を聞くと、ミシェラが異常な狂戦士って呼ぶのも解るわ。でも、イシュドはあぁだとしてもガルフは平民だし、激闘祭っていう大きな舞台で結果を残したのだから、そういった話を持ち掛けてくる令嬢が多いんじゃないの?」

「そういえば…………一度だけ、あの三人が令嬢たちとお茶会をしたと聞いたような……」

ミシェラは自分で口にしながら、ちょっと何を言ってるのか解らなかった。

ガルフはともかく……そして、チャランポラン男であるフィリップも、一応公爵家の令息。
まだ不良になる前は、何度か令嬢たちとのお茶会を経験している。

しかし、あの異常な狂戦士であるイシュドがお茶会?

自分で口にしたミシェラだけではなく、イブキたち三人も上手くその光景を思い浮かべることは出来なかった。

「……ちょっと自分でも何を言ってるのか解りませんが、もしかしたらそういった話が来たことがある可能性はありそうですわね」

「立場的な話になるけれど、男爵家や子爵家の令嬢あたりから好まれそうね」

「あの……イシュドさんとガルフさんは友人……親友と呼べる間柄なのですよね」

「そう、ですわね」

「であれば、ガルフさんの身を案じて、イシュドさんがあれこれ世話をするのでしょうか?」

「「「…………」」」

親友とはいえ、そこまでするか? それはもう友人、親友云々関係無いのでは? と思ってしまった三人。

ただ、そもそもガルフはイシュドという遠い遠い背中を追っている。
それを考えると、まずガルフが相手からの好意を受け取らない様に思えた。

その後もガールズトークは意外にも夕食前まで続き、その頃には完全にミシェラの顔からブスっとした表情が消えていた。
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