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第201話 疑われる要因

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「はぁ~~~~~~? バイロン先生、それマジで言ってんすか?」

「あぁ、大マジで言っている」

現在、イシュドは生徒の進路相談などで使われる部屋にいた。

バイロンから呼ばれ、何の用かと思っていると…………その内容を聞かされた直後、大きく顔を歪ませた。

内容は、先日「それは無理っスからね」と伝えた同級生や上級生たちへの直接指導といったものではない……ないのだが、イシュドが顔を歪ませるのに納得の内容だった。

「……それは上の指示ってことっすか?」

「そうだ、と答えたところで、その方々を殺しに行くのか?」

「拳骨を一発ぶち込むぐらいは許されるんじゃないっすか」

全くもって許されない。冗談にしても度が過ぎている。
しかし、担任の教師として関わる様になり、ある程度イシュドのことを把握出来てきたバイロンは……冗談ではなく本気で口にしているのだと解っていた。

「止めておけ」

「チッ!! それ、学園長も了承したんすか」

「随分と悩まれたそうだ。それだけ、学園長から見てもガルフたちは将来を期待出来る逸材と認識してるのだろう」

バイロンがイシュドに伝えた内容とは、今度の依頼ではガルフたちに……主に、ガルフがイシュドと組まずに依頼を達成しろという内容だった。

「……学園長のそういう認識はある程度信用出来っけど、他の連中も同じこと言ってんだろ…………なぁ~~に企んでんだか」

「イシュド、お前がそういった事を考える気持ちは理解出来なくはない。ただな……お前は激闘祭のエキシビションマッチで、圧倒的な実力を見せつけた」

「それが学園長からの注文みたいなもんだったからな。一対三のエキシビションマッチ、悪くなったでしょ」

「そうだな。諸々を含めて良い戦いだった。だが、その時の戦闘光景が、あまりにも衝撃的過ぎたのだ」

激闘祭が行われて以降、ガルフたちが成長しているのはバイロンも認めている。
ただ、イシュドはエキシビションマッチでは基本的に素の身体能力のみでフィリップ、ダスティン、クリスティールの三人と戦い、勝利を収めた。

故に、上の者たちはガルフたちが今のところ一度も依頼を失敗せずに達成出来ているのは、イシュドの力が大きいのではと思ってしまっていた。

「ガルフやフィリップたちだってキッチリ結果を残してるじゃないっすか」

「いきなりリングの結界を破って入場して、強烈なインパクトを残したのはどこのどいつだ」

「………………」

それを言われてしまっては、何も言い返すことが出来ないイシュド。

「はぁ~~~~~~。けどよ、冒険者ギルドとかに鬼竜・尖の死体を売らずに、フラベルト学園に関りがある学者に死体を渡してやったってのによぉ……」

「あれには随分と感謝されていたが、それはそれでこれはこれという奴だろう」

「………仮に俺抜きでガルフが依頼を受けるなら、バイロン先生は誰と組ませるつもりなんだ」

「私としては、フィリップとイブキ、アドレアスの三人と組ませようと思っている」

元々アドレアスも特例で一年生ではあるものの、依頼を受けさせても良いのではという話自体は出ていた。

しかし、学園から見た限り……アドレアスはイシュドと特に関わりはなく、アドレアスの周りにいる腰巾着の強さを考えれば、もう少し様子を見てからにしようという流れになっていた。

だが、ここ最近アドレアスが大まかに言うと腰巾着を切り捨て、イシュドたちと関わるようになったことで、特例枠で依頼を受けても問題無いという判断が下された。

「ふ~~~~~ん……まぁ、悪くはないっすね。パーティーバランスで言えば相変わらず全員前衛タイプだから……鬼竜・尖の時みたいに、フィリップが後衛を担当する形になんのか?」

「そうなるだろうな。せめて、依頼の中でぐらい苦労して貰わないとな」

(……不良っちゃ不良みたいなタイプだったから、しゃあないのか?)

フィリップに南無南無と思いながら、イシュドは改めて今回伝えられた件に関して考え込む。

「その間、俺らは俺らでなんかしてろって話っすか?」

「そうなるな。不正を疑う訳ではないが、そういった方向になるだろう」

「……ぶっ殺してやろうか」

「ストレートが過ぎるぞ、イシュド」

「へいへい。けどなぁ~~~、色々と信用出来ねぇもんはしかたねぇんっすよ、バイロン先生。入学式が始まる前に、ガルフがあんな扱いを受けてたんだ……俺が入学して力を示したからっつって、屑が真面目に反転するとは限らないでしょう」

「………………」

裏の人間を使えばバレない。
そう考えることは……権力者であれば、そこまでおかしいことではない。

ただ、イシュドは平凡な狂戦士ではなく、異常な狂戦士。

その気になれば、同じく裏で対象に地獄を与えてから殺すことも出来る。

「はぁ~~~~……まっ、上の連中の気持ちも解らなくはねぇんで、こっちの条件を飲んでくれるなら良いっすよ」

「どういった条件だ」

「ガルフたちが依頼を受けてる間、シドウ先生が陰から同行すること。第五とはいえ、王子が依頼を受けてるんだから、別にそれぐらいは許容範囲っすよね」

「……そうだな」

イシュドはあまりバイロンとシドウ以外の教師との関りがないため、信用出来る相手が教師陣の中にはあまりいなかった。

「そんで、俺からシドウ先生に金を渡します」

ザっとこれぐらい、という金額をアイテムバッグの中から取り出すイシュド。

「………………過保護だと、言われたことはないか?」

「貴族の中に屑な連中が多くなかったら、ここまで過保護にならないんすけどね~~~」

今度はバイロンの方がぐうの音も出なくなった。

因みに、イシュドがテーブルの上に置いた硬貨の中には金貨だけではなく、白金貨も混ざっていた。

「あいつらを守る為に、好きに使ってもらいます」

「……形的には、お前とシドウ先生の個人間のやり取りだ。特に私が口を挟めることではない」

「話が早くて助かるっすね。まっ、あいつらがどんな依頼を受けるかまでは、俺も口を挟まないっすよ」

この後、二人が事情を聞かされたシドウはイシュドからの頼みに対して、直ぐに頷き受け入れたものの……その後に渡された現金の額を見て、面白いぐらいに全身が驚き固まってしまった。
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