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第184話 イシュドが知らないから
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「にしても、異常に学習能力が高くて、一対多数の戦いに慣れてて、武器の扱いだけじゃなくて素手の練度も半端じゃなかった…………無駄な殺しを好まない性格だったのかもしれねぇけど、逆に常に殺る気満々の個体だったらクソヤバかったな」
残り僅かなシチューをかきこみながら、フィリップは改めて鬼竜・尖のヤバさを思い出し……出来ればあんな個体とは二度と戦いたくないと思った。
「……最後の体の……扱い方? も恐ろしかったですが、真に恐ろしいのは学習能力の高さと知能の高さかもしれませんね」
「イシュドは教えてくれませんでしたけど、私たちの戦う様子を観ていましたのよね」
「おいおい、戦う前にも言ったけどよ、それはお前らが悪いだけだぜ? まっ、学習能力の高さと知能の高さが真に警戒すべき部分ってイブキの考え方には同意だな」
鬼竜・尖はガルフたちの戦闘光景を観察していただけではなく、戦闘中にも四人の動きを学習し……四人が虚を突くためにわざとタイミングをズラすという行動をインプットしていた。
そして規則的な不規則として記憶し、徐々に対応していった。
「モンスターがどこまで人間に対して殺意を持つのかは知らねぇが、仮にあの個体が人間の街を破壊しようと動いて、兵士や騎士、冒険者が大勢動いたとしても……七割五分ぐらいの確率で制圧するだろうな」
「イシュド。それは対応する人たちがそこまで強くないと仮定した場合の話?」
「……ある程度強い奴らがいたとしても、鬼竜・尖はどこから攻めれば良いか理解する筈だ。あの個体は別に騎士道精神とかはねぇだろうから……どういった行動、攻撃が有効なのか見抜きそうだ」
「あぁ~~~~、はいはい、なるほどな。そういう行動までされっと、確かにある程度強い奴らがいたとしても、絶対に討伐出来るとは言えねぇな」
仮定も仮定の話だが、人間は……同じ人間を人質に取られると弱い。
ガルフが盗賊を相手に見せたように、相手が次の思考を選択する前に叩き潰すという手段もあるが、ガルフだけではなくフィリップたちも……鬼竜・尖がそこを考えられないモンスターだとは思えなかった。
「ほんっ、と。イシュドがいてくれて助かったぜ~~~~」
フィリップは友人のガルフが迸る闘争心を発しており、それに当てられて「やれやれ、しょうがないなぁ」といったノリで挑んでいたため、美味しいところイシュドに持っていかれたとしても、特に悔しいという気持ちは欠片もなかった。
「フィリップ、あなた「あっ、そういえばよ。結局あの鬼竜・尖はどうやって生まれたんだろうな」…………ふぅーーーーーーーーー」
意欲のなさにツッコもうとした瞬間、食事の場にそぐわない会話をぶっこまれたミシェラ。
もう我慢ならないと言わんばかりの表情になり、本気でフィリップの襟元を掴み、店の外に放り出そうか悩んだ。
「……………………解らんわ」
「えっ、マジ?」
「おぅ、マジマジ」
鬼竜・尖という特殊過ぎる個体と遭遇した。
そして今回、五人は鬼竜・尖の討伐依頼を受けたのではなく、生態調査……鬼竜・尖に関する情報を集めることが依頼。
その為、どの様な経緯で鬼竜・尖が誕生したのかという内容について話し合う事は、確かに必要だった。
そしてイシュドは一旦食事の手を止め、真剣に考え込むこと約十秒……全くそれらしい考えが浮かばなかった。
「すげぇあり得ねぇけど、オーガかリザードマンかどっちなのかは知らねぇけど、片方の種族を殺しに殺しまくった結果、怨念的な呪いを受けて生まれた子供が、その種族以外の特徴を併せ持って生まれた。みてぇな事は考え付いたけど、結局のところ心臓が二つある理由にはならねぇからな」
「……いや、それだけでも十分あり得そうだな~~って思えたぜ」
「そうか?」
「だって、血ってのは……多分、体の中で重要な要素? だろ」
「そりゃそうだが…………浴びた返り血が、要因の一つになったとか、そういうことを言いたいのか?」
「そういう事だ。ガルフどう思う」
自分はそういった事を考えるのは専門外と思っているガルフだが、受けた依頼の内容を考えれば、こういった話し合いの場で何も言わないのは論外。
それぐらいは解っていた。
「……僕は、生殖行為で生まれたとは思えない派かな」
「やっぱりイレギュラー過ぎるからか?」
「普通に生まれてきたモンスターの中にも、例えばこの前イシュドが戦った剣鬼とかリザードマンキングたちみたいなイレギュラーがいるけど……鬼竜・尖は、さすがにイレギュラー過ぎると思って……だって、イシュドがあんな体の使い方を知らなかったんだし」
イシュドが知らなかった。ガルフにとって、そこが重要なポイントに思えた。
イシュドやミシェラたちに比べれば、自分が遭遇してきたモンスターの種類は圧倒的に少ないと理解している。
故に偉そうに知識をひけらかすことなど出来ない。
だが、五人の中で一番モンスターとの戦闘経験が多く、更に戦闘経験を積んでいる者たちが周囲にいるのもイシュド。
そんなイシュドが知らない体の使い方を、鬼竜・尖は見せた。
モンスターは人間とは違うことはガルフも解っている。
しかし、リザードマンやオーガは人型のモンスターであり、体内の内臓の種類、位置など……全く同じではないが、似ている部分は多い。
「…………はぁーーーーーー。イシュド、あなたは本当にあのような身体能力の上げ方を知らなかったのですね」
「知らんに決まってるだろ。なんとなくそういう理由なんじゃねぇか、みたいなあれはお前らに説明したけど、あくまで俺の想像だ」
「……であれば、ガルフの言う通り生殖行為以外の方法で生まれた線が強そうですわね」
着実に話し合いが進んでいる……とは言えない。
結局のところ、生殖行為以外の方法で生まれましたねというスタート地点に戻ってきただけ。
「そうなりますと、鬼竜・尖は誰かが生み出したのでしょうか」
イブキの発言に、イシュドも含めて四人の大なり小なり驚愕の色が浮かび、そこから更に話し合いが加速するも……最終的に全員の頭がショート。
とりあえず思い付く限りの想像、そして実際の強さを洋紙に記載し、五人の仕事は終了した。
残り僅かなシチューをかきこみながら、フィリップは改めて鬼竜・尖のヤバさを思い出し……出来ればあんな個体とは二度と戦いたくないと思った。
「……最後の体の……扱い方? も恐ろしかったですが、真に恐ろしいのは学習能力の高さと知能の高さかもしれませんね」
「イシュドは教えてくれませんでしたけど、私たちの戦う様子を観ていましたのよね」
「おいおい、戦う前にも言ったけどよ、それはお前らが悪いだけだぜ? まっ、学習能力の高さと知能の高さが真に警戒すべき部分ってイブキの考え方には同意だな」
鬼竜・尖はガルフたちの戦闘光景を観察していただけではなく、戦闘中にも四人の動きを学習し……四人が虚を突くためにわざとタイミングをズラすという行動をインプットしていた。
そして規則的な不規則として記憶し、徐々に対応していった。
「モンスターがどこまで人間に対して殺意を持つのかは知らねぇが、仮にあの個体が人間の街を破壊しようと動いて、兵士や騎士、冒険者が大勢動いたとしても……七割五分ぐらいの確率で制圧するだろうな」
「イシュド。それは対応する人たちがそこまで強くないと仮定した場合の話?」
「……ある程度強い奴らがいたとしても、鬼竜・尖はどこから攻めれば良いか理解する筈だ。あの個体は別に騎士道精神とかはねぇだろうから……どういった行動、攻撃が有効なのか見抜きそうだ」
「あぁ~~~~、はいはい、なるほどな。そういう行動までされっと、確かにある程度強い奴らがいたとしても、絶対に討伐出来るとは言えねぇな」
仮定も仮定の話だが、人間は……同じ人間を人質に取られると弱い。
ガルフが盗賊を相手に見せたように、相手が次の思考を選択する前に叩き潰すという手段もあるが、ガルフだけではなくフィリップたちも……鬼竜・尖がそこを考えられないモンスターだとは思えなかった。
「ほんっ、と。イシュドがいてくれて助かったぜ~~~~」
フィリップは友人のガルフが迸る闘争心を発しており、それに当てられて「やれやれ、しょうがないなぁ」といったノリで挑んでいたため、美味しいところイシュドに持っていかれたとしても、特に悔しいという気持ちは欠片もなかった。
「フィリップ、あなた「あっ、そういえばよ。結局あの鬼竜・尖はどうやって生まれたんだろうな」…………ふぅーーーーーーーーー」
意欲のなさにツッコもうとした瞬間、食事の場にそぐわない会話をぶっこまれたミシェラ。
もう我慢ならないと言わんばかりの表情になり、本気でフィリップの襟元を掴み、店の外に放り出そうか悩んだ。
「……………………解らんわ」
「えっ、マジ?」
「おぅ、マジマジ」
鬼竜・尖という特殊過ぎる個体と遭遇した。
そして今回、五人は鬼竜・尖の討伐依頼を受けたのではなく、生態調査……鬼竜・尖に関する情報を集めることが依頼。
その為、どの様な経緯で鬼竜・尖が誕生したのかという内容について話し合う事は、確かに必要だった。
そしてイシュドは一旦食事の手を止め、真剣に考え込むこと約十秒……全くそれらしい考えが浮かばなかった。
「すげぇあり得ねぇけど、オーガかリザードマンかどっちなのかは知らねぇけど、片方の種族を殺しに殺しまくった結果、怨念的な呪いを受けて生まれた子供が、その種族以外の特徴を併せ持って生まれた。みてぇな事は考え付いたけど、結局のところ心臓が二つある理由にはならねぇからな」
「……いや、それだけでも十分あり得そうだな~~って思えたぜ」
「そうか?」
「だって、血ってのは……多分、体の中で重要な要素? だろ」
「そりゃそうだが…………浴びた返り血が、要因の一つになったとか、そういうことを言いたいのか?」
「そういう事だ。ガルフどう思う」
自分はそういった事を考えるのは専門外と思っているガルフだが、受けた依頼の内容を考えれば、こういった話し合いの場で何も言わないのは論外。
それぐらいは解っていた。
「……僕は、生殖行為で生まれたとは思えない派かな」
「やっぱりイレギュラー過ぎるからか?」
「普通に生まれてきたモンスターの中にも、例えばこの前イシュドが戦った剣鬼とかリザードマンキングたちみたいなイレギュラーがいるけど……鬼竜・尖は、さすがにイレギュラー過ぎると思って……だって、イシュドがあんな体の使い方を知らなかったんだし」
イシュドが知らなかった。ガルフにとって、そこが重要なポイントに思えた。
イシュドやミシェラたちに比べれば、自分が遭遇してきたモンスターの種類は圧倒的に少ないと理解している。
故に偉そうに知識をひけらかすことなど出来ない。
だが、五人の中で一番モンスターとの戦闘経験が多く、更に戦闘経験を積んでいる者たちが周囲にいるのもイシュド。
そんなイシュドが知らない体の使い方を、鬼竜・尖は見せた。
モンスターは人間とは違うことはガルフも解っている。
しかし、リザードマンやオーガは人型のモンスターであり、体内の内臓の種類、位置など……全く同じではないが、似ている部分は多い。
「…………はぁーーーーーー。イシュド、あなたは本当にあのような身体能力の上げ方を知らなかったのですね」
「知らんに決まってるだろ。なんとなくそういう理由なんじゃねぇか、みたいなあれはお前らに説明したけど、あくまで俺の想像だ」
「……であれば、ガルフの言う通り生殖行為以外の方法で生まれた線が強そうですわね」
着実に話し合いが進んでいる……とは言えない。
結局のところ、生殖行為以外の方法で生まれましたねというスタート地点に戻ってきただけ。
「そうなりますと、鬼竜・尖は誰かが生み出したのでしょうか」
イブキの発言に、イシュドも含めて四人の大なり小なり驚愕の色が浮かび、そこから更に話し合いが加速するも……最終的に全員の頭がショート。
とりあえず思い付く限りの想像、そして実際の強さを洋紙に記載し、五人の仕事は終了した。
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