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第172話 夜露死苦ぅ~~~
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「そういえば、まだ自己紹介をしてなかったな」
ふと、何かを思い出したかのように……イシュドは自分の名前を告げた。
「俺はイシュド・レグラだ」
「「「「「「「「「「…………っ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
イシュド・レグラ。
その名前を聞いた瞬間、その場にいた冒険者たちだけではなく、ギルド職員たちまでもが震えた。
激闘祭は大きな祭りではあるものの、全員が観れる訳ではない。
王都から離れた場所で活動している冒険者たちからすれば、そもそもわざわざ王都まで激闘祭を観に行こうという考えすら湧き上がってこない。
だが、そのトーナメントで行われた戦いに関しては、確実に広まっていた。
「そういえば、さっき心配してくれたことに関して、俺は素直に嬉しいって言ったけど、やっぱり貴族にはプライドが高い連中が多いから、そもそも話しかけねぇ方が得策まであるから、覚えておいて損はねぇぞ」
「あ、はい」
勿論、イシュドたちに声を掛けた青年冒険者も、激闘祭が終了した後……エキシビションマッチで各学年の優勝者たちを纏めて相手をし、圧勝した人物の名は知っていた。
「って、言いつつ俺もそんなに気高く理性的なメンタルとか、知性を持ってる訳じゃあ~ねぇんだよな」
ギョロリと眼が動き、自分を心配してくれた冒険者たちをロックオン。
「だから、二度目はねぇから……そこんとこ、夜露死苦ぅ~~~~」
明らかに……明らかにただのよろしくとは違う意図を感じ取り、彼らは震え固まざるをえなかった。
「イシュド、最後に脅す必要はありましたの?」
冒険者ギルドから出た後、ミシェラはあそこまでする必要があったのか尋ねた。
「……さぁな」
「なっ!? 考え無しに脅しましたの?」
イシュドは一応、最後の方に彼らを煽ったという自覚はあった。
故に、街中で行動してる際にバカ共が絡んでくる可能性を予想していた。
しかし……改めて現在、共に行動している友人たちに目を向けると……そのバカ共に負けるとは思えない。
(あの連中の中に三次職になってる奴らがいねぇってのもあるが、今のこいつらなら連中が姑息な手を使ってきても多分負けねぇだろうな)
あのまま放っておいても、問題無いと言えば問題無かった。
「んな怒るなっての。あのバカ共がバカな真似をしたとしても問題ねぇかもしれねぇけど、邪魔っちゃ邪魔になるだろ」
「そ、それはそうでしょうけども……というより、私たちが貴族の令息や令嬢だと解っても、彼らはバカな真似をしますの?」
「前に話したかもしれねぇけど、お前らと平民のあいつらとでも、備わってる常識が違うんだよ」
備わっている常識が違えば、考え方も異なる。
そこが冒険者が貴族たちから野蛮な連中、無法者と呼ばれる所以。
「安易に殺そうという考えには至らねぇだろうが……そのプライドがあるのは、どっちも同じだ」
「つまり、恥をかかせてしまえば、大手を振って助けを呼べないと考える……ってことか」
「そういうこった。全員が全員そういう考えを持ってる訳じゃない。それは間違いねぇんだが、世の中貴族は貴族で容赦なく権力を振りかざすバカもいることだしな」
フィリップとミシェラは苦い表情を浮かべるしかなく、イブキも似た様な表情を浮かべ……ガルフも入学当日に自分に理不尽な暴力を振るってきた同級生のことを思い出し、思わず強く拳を握りしめた。
「とりあえず、情報は手に入ったんだ。ちょっくら周辺を散策してみるか」
まだ日は高く、時間に余裕があるため五人は街の外に出て周辺の森を探索し始めた。
「……そこまで、強くないね」
ガルフの周辺には、上位種のコボルトも含めて十体近い数の死体が転がっていた。
「そりゃ普通のコボルトだからな」
「上位種も混ざってたと思うんだけど」
「ナイトとファイターだけだろ。うちの領地に生息してるコボルトならともかく、別の地域に生息してる連中なら、もうお前の敵じゃねぇよ」
十体近いコボルトはガルフたちで討伐したのではなく、ガルフ一人で討伐した。
Dランクモンスターも混ざっていたことを考えれば、見事な功績と言える。
周りにイシュドやフィリップ、ミシェラやイブキといった実力者がいるため、やや勘違いしているところがあるが、ガルフの年齢で無傷で十体近いコボルトと上位種の群れを討伐出来るの者はそう多くはない。
「今回、殆ど魔力を使ってなかった訳だしな。いやぁ~~~、マジで強くなったよな、ガルフ」
「あ、ありがとう……でも、オーガとリザードマンの特徴を併せ持つモンスターは、もっともっと強いんだよね」
「だろうな~~。ギルドのロビーに居た冒険者たちも、別に弱いって訳じゃなさそうだもんな」
フィリップの言う通り、残念ながらイシュドの実力を正確に測れる眼は持っていなかったものの、決して口先だけのクソゴミ屑ではない。
「Cランクモンスターの強さを併せ持つモンスター……単純計算で考えると、Bランクモンスターぐらいの強さはありそうだな」
「本当に単純ですが、おそらくその通りなのでしょうね。けど、今考えるべき内容は、何故その強力な力を持つモンスターが、わざわざ戦った冒険者や騎士を殺さずに見逃したのかについてですわ」
命を懸けて戦った相手を見逃す。
それに関して、ミシェラ以外の四人も思うところはあった。
「人間を食うつもりがねぇからとか?」
モンスターは基本的に殺した人間を食らう。
木の魔物、トレントといった口や消化器官がない生物であれば、人間の生命力……はたまた血を養分として吸収する。
「……そういった個体もいるかもしれませんけど、それでも自分を殺しに来た相手を殺さない理由になるとは思えませんわ」
「無益な殺生は好まないということでしょうか」
イブキ的には、その点だけを考えれば、やはり自国の武士に通ずるものがあると思えなくもない。
「イシュドはどう思う?」
「モンスター学者じゃねぇから詳しいことは解らねぇけど、モンスターも俺らと一緒で本能的に敵と呼べる存在を倒して殺してこそ強くなれるってのは解ってる筈だ」
「つまり、オーガとリザードマンの融合体は、その……身体能力や魔力的な意味での強さ以外の何かを求めてるってこと?」
「あくまで、個人的な予想だけどな」
普通以外の何かを求めている。
そんな不気味さも……イシュドにとっては、闘争心を煽るスパイスでしかなかった。
ふと、何かを思い出したかのように……イシュドは自分の名前を告げた。
「俺はイシュド・レグラだ」
「「「「「「「「「「…………っ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
イシュド・レグラ。
その名前を聞いた瞬間、その場にいた冒険者たちだけではなく、ギルド職員たちまでもが震えた。
激闘祭は大きな祭りではあるものの、全員が観れる訳ではない。
王都から離れた場所で活動している冒険者たちからすれば、そもそもわざわざ王都まで激闘祭を観に行こうという考えすら湧き上がってこない。
だが、そのトーナメントで行われた戦いに関しては、確実に広まっていた。
「そういえば、さっき心配してくれたことに関して、俺は素直に嬉しいって言ったけど、やっぱり貴族にはプライドが高い連中が多いから、そもそも話しかけねぇ方が得策まであるから、覚えておいて損はねぇぞ」
「あ、はい」
勿論、イシュドたちに声を掛けた青年冒険者も、激闘祭が終了した後……エキシビションマッチで各学年の優勝者たちを纏めて相手をし、圧勝した人物の名は知っていた。
「って、言いつつ俺もそんなに気高く理性的なメンタルとか、知性を持ってる訳じゃあ~ねぇんだよな」
ギョロリと眼が動き、自分を心配してくれた冒険者たちをロックオン。
「だから、二度目はねぇから……そこんとこ、夜露死苦ぅ~~~~」
明らかに……明らかにただのよろしくとは違う意図を感じ取り、彼らは震え固まざるをえなかった。
「イシュド、最後に脅す必要はありましたの?」
冒険者ギルドから出た後、ミシェラはあそこまでする必要があったのか尋ねた。
「……さぁな」
「なっ!? 考え無しに脅しましたの?」
イシュドは一応、最後の方に彼らを煽ったという自覚はあった。
故に、街中で行動してる際にバカ共が絡んでくる可能性を予想していた。
しかし……改めて現在、共に行動している友人たちに目を向けると……そのバカ共に負けるとは思えない。
(あの連中の中に三次職になってる奴らがいねぇってのもあるが、今のこいつらなら連中が姑息な手を使ってきても多分負けねぇだろうな)
あのまま放っておいても、問題無いと言えば問題無かった。
「んな怒るなっての。あのバカ共がバカな真似をしたとしても問題ねぇかもしれねぇけど、邪魔っちゃ邪魔になるだろ」
「そ、それはそうでしょうけども……というより、私たちが貴族の令息や令嬢だと解っても、彼らはバカな真似をしますの?」
「前に話したかもしれねぇけど、お前らと平民のあいつらとでも、備わってる常識が違うんだよ」
備わっている常識が違えば、考え方も異なる。
そこが冒険者が貴族たちから野蛮な連中、無法者と呼ばれる所以。
「安易に殺そうという考えには至らねぇだろうが……そのプライドがあるのは、どっちも同じだ」
「つまり、恥をかかせてしまえば、大手を振って助けを呼べないと考える……ってことか」
「そういうこった。全員が全員そういう考えを持ってる訳じゃない。それは間違いねぇんだが、世の中貴族は貴族で容赦なく権力を振りかざすバカもいることだしな」
フィリップとミシェラは苦い表情を浮かべるしかなく、イブキも似た様な表情を浮かべ……ガルフも入学当日に自分に理不尽な暴力を振るってきた同級生のことを思い出し、思わず強く拳を握りしめた。
「とりあえず、情報は手に入ったんだ。ちょっくら周辺を散策してみるか」
まだ日は高く、時間に余裕があるため五人は街の外に出て周辺の森を探索し始めた。
「……そこまで、強くないね」
ガルフの周辺には、上位種のコボルトも含めて十体近い数の死体が転がっていた。
「そりゃ普通のコボルトだからな」
「上位種も混ざってたと思うんだけど」
「ナイトとファイターだけだろ。うちの領地に生息してるコボルトならともかく、別の地域に生息してる連中なら、もうお前の敵じゃねぇよ」
十体近いコボルトはガルフたちで討伐したのではなく、ガルフ一人で討伐した。
Dランクモンスターも混ざっていたことを考えれば、見事な功績と言える。
周りにイシュドやフィリップ、ミシェラやイブキといった実力者がいるため、やや勘違いしているところがあるが、ガルフの年齢で無傷で十体近いコボルトと上位種の群れを討伐出来るの者はそう多くはない。
「今回、殆ど魔力を使ってなかった訳だしな。いやぁ~~~、マジで強くなったよな、ガルフ」
「あ、ありがとう……でも、オーガとリザードマンの特徴を併せ持つモンスターは、もっともっと強いんだよね」
「だろうな~~。ギルドのロビーに居た冒険者たちも、別に弱いって訳じゃなさそうだもんな」
フィリップの言う通り、残念ながらイシュドの実力を正確に測れる眼は持っていなかったものの、決して口先だけのクソゴミ屑ではない。
「Cランクモンスターの強さを併せ持つモンスター……単純計算で考えると、Bランクモンスターぐらいの強さはありそうだな」
「本当に単純ですが、おそらくその通りなのでしょうね。けど、今考えるべき内容は、何故その強力な力を持つモンスターが、わざわざ戦った冒険者や騎士を殺さずに見逃したのかについてですわ」
命を懸けて戦った相手を見逃す。
それに関して、ミシェラ以外の四人も思うところはあった。
「人間を食うつもりがねぇからとか?」
モンスターは基本的に殺した人間を食らう。
木の魔物、トレントといった口や消化器官がない生物であれば、人間の生命力……はたまた血を養分として吸収する。
「……そういった個体もいるかもしれませんけど、それでも自分を殺しに来た相手を殺さない理由になるとは思えませんわ」
「無益な殺生は好まないということでしょうか」
イブキ的には、その点だけを考えれば、やはり自国の武士に通ずるものがあると思えなくもない。
「イシュドはどう思う?」
「モンスター学者じゃねぇから詳しいことは解らねぇけど、モンスターも俺らと一緒で本能的に敵と呼べる存在を倒して殺してこそ強くなれるってのは解ってる筈だ」
「つまり、オーガとリザードマンの融合体は、その……身体能力や魔力的な意味での強さ以外の何かを求めてるってこと?」
「あくまで、個人的な予想だけどな」
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そんな不気味さも……イシュドにとっては、闘争心を煽るスパイスでしかなかった。
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