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第133話 崩れてはいない。知らなかっただけ
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「性欲豚の聖騎士、か…………イシュドが片腕を犠牲にしなきゃ倒せなかった相手って時点で、マジで強いんだなってのは解るんだけどよ、本当にこう……上手くイメージ出来ないぜ」
「ザ・未知のモンスターって感じだったからな。フィリップが上手くイメージ出来ねぇのも仕方ねぇよ。でもなぁ、マジで本当……こう……修行僧? みてぇな顔してたぜ」
「……イシュド、それは本当にオークだったのか?」
人型のモンスターが、パラディンという名を持つ。
その事事態に違和感を持たざるを得ない。
ただ、ディムナの中ではまだ他の人型モンスターであればという思えるが、オーク……ついでにゴブリンでその様な個体がいるとは、とても思えない。
「鑑定のマジックアイテムを身に付けて視たから、マジだぞディムナ。筋肉はムキムキのバキバキで今日戦った元オーガの剣鬼みてぇな感じだったが、間違いなくオークだった……聖光纏うだけじゃなくて、聖剣技のスキルまで持ってたからな、あいつ」
聖剣技は、たとえ聖騎士などの聖なる職に就こうとは思ってない男の子でも、一定の憧れを持つ剣技の一つ。
「…………今日ほど、常識が崩れた日はない、な」
「同感だよ、ディムナ。しかし、そのオークは何ゆえに聖なる心に目覚めたんだろうね。やはり、イシュドの言う通り守りたい心……同族を守りたいという心が要因となったのかな」
「あぁ~~~……アドレアス、さっき自分でそんな感じの事を言っといてあれなんだが、多分ちげぇと思う」
「そうなのかい? それなら……生理的に認められないけど、モンスターが信仰心に目覚めた、ということかな?」
モンスターが信仰心に目覚めた。
これに関しては、アドレアスたち貴族だけではなく、平民であるガルフも中々納得出来ない内容である。
「さぁな……もしかしたら、女性……雌という存在の偉大さ? みたいなものに気付いたのかもな」
「?????? イシュド兄さん、考え過ぎてちょっと頭痛くなってきたんだけど」
「はっはっは!!! んな難しく考える必要はねぇよ、ヴァルツ。ただ……俺がオークパラディンと遭遇した時、周りに他のオークはいなかったんだよ。今日戦った元オーガの時みたいにな」
周りに同族がいなかった。
それが何を意味するのか……ディムナがいち早く気付いた。
「つまり、他の同族とは考え方が根本から違う、ということか」
「おそらくだけどな。オークってのは、雌に……人間の女に対して間違いなく発情するもんだ。ただ、それを良しとしない個体がいれば、どれだけその個体が強くても、付いて行こうと思うか?」
特別強さに憧れを持っていなくても、ただ純粋に強烈で強大な強さへとひた走る男の背を見て……その背中に憧れ、自分もと前へと向かうことは、人間ではなくても起こりうる感情の変化。
しかし、人間の雌が大好きで、巣に持って帰ってはぶっ壊れるまで本能を爆発させるのが……オークという個体。
その行動は、本能に……オークという生命に刻まれた思考、行動と言っても過言ではない。
それを、オークパラディンは否定する考えに至ってしまった。
そんなイシュドの予想は……見事、的を得ていた。
「多分、無理だろ。人間の女を敵として殺すのであればまだしも、手を出すなと言われ……手を出せば、ぶった斬られるかもしれない。そんな個体に、普通のオークが付いて行こうと思うか?」
「付いて行くことはないだろうな。そうか……そう考えるならば、辻褄が合うというか…………ディムナの言う通り、常識が思いっきり崩れた感覚ではあるが、ただ俺たちがそれを知らなかっただけとも捉えられるな」
常識が崩れた、という感覚は間違っていない。
ただ、本人たちが知識として知らなかったからこそ、そう感じたとも捉えられる。
「ねぇ、イシュド。この辺りでは、今日の剣鬼やオークパラディンみたいなモンスターが珍しくないの?」
「珍しい個体だとは思うぜ。今俺らがうろちょろしてるエリアであんな個体がばんばん出現されたら、さすがに異常事態だ。もっと奥に行けば……また別かもしれねぇけどな」
「そういえばこの前、暗黒剣技を使うモンスターと戦ったって言ってたよね、イシュド兄さん」
普通ならば驚くべき内容だが、本日直に剣鬼という存在に出会い、イシュドからオークパラディンという謎が多過ぎるモンスターの話も聞いたため、暗黒剣技を扱うモンスターがいると聞いても、ガルフたちは特に驚かなかった。
「そうだな。そんなモンスターもいたな」
「……イシュド。私たちは、後どれぐらい強くなれば、そういったモンスターと戦える様になるかい」
「それまた難しい質問だなぁ~~~…………とりま、三次転職するまで頑張るしかないんじゃねぇか? Bランクのモンスターならともかく、戦う相手がAランクってなると、レベルがそこまで高くねぇ相手でも相当ムズいんじゃねぇの?」
でも、君は倒したじゃないか、という言葉は出てこなかった。
アドレアスがこれまで、生半可なトレーニングを重ねてきた、という訳ではない。
寧ろ強くあることが義務である環境で育ってきたため、同世代の者たちよりもハードなトレーニングを重ねてきた。
しかし、イシュドと比べれば……どうしても温いと言わざるを得ない。
「後、俺一次職が魔戦士だったからな」
「「「っ!!!???」」」
イシュドの一次職を知らなかった三人は、レグラ家に訪れてから何度目になるか分からない衝撃を体感。
「それ、は……本当なのかい、イシュド君」
「ほんとほんと。んで、二次職で狂戦士になったから、ギリギリオークパラディンに勝てたんだと思うぜ? バーサーカーソウルは身体能力が爆上がりする超良いスキルだけど、使い過ぎれば理性を失うし、ギリギリのところで戻ったとしても、その後パフォーマンスがガクッと落ちるからな」
実際にイシュドはオークパラディンとの戦闘の際、バーサーカーソウルを限界ギリギリまで使用して辛くも勝利を得たが、その後は一歩も動けない状態となり、安全の為に超強固な結界のマジックアイテムを使わざるを得なかった。
「バーサーカーソウル……狂戦士が狂戦士たる所以、か」
「んだ、今更気になり始めたか? まっ、三次職……何を選ぶかは、お前らの自由だ。後悔のねぇ選択をしろよ」
転職とは、文字通り進む道の選択。
基本的に変えることは不可能であり、待ったは許されない。
「ザ・未知のモンスターって感じだったからな。フィリップが上手くイメージ出来ねぇのも仕方ねぇよ。でもなぁ、マジで本当……こう……修行僧? みてぇな顔してたぜ」
「……イシュド、それは本当にオークだったのか?」
人型のモンスターが、パラディンという名を持つ。
その事事態に違和感を持たざるを得ない。
ただ、ディムナの中ではまだ他の人型モンスターであればという思えるが、オーク……ついでにゴブリンでその様な個体がいるとは、とても思えない。
「鑑定のマジックアイテムを身に付けて視たから、マジだぞディムナ。筋肉はムキムキのバキバキで今日戦った元オーガの剣鬼みてぇな感じだったが、間違いなくオークだった……聖光纏うだけじゃなくて、聖剣技のスキルまで持ってたからな、あいつ」
聖剣技は、たとえ聖騎士などの聖なる職に就こうとは思ってない男の子でも、一定の憧れを持つ剣技の一つ。
「…………今日ほど、常識が崩れた日はない、な」
「同感だよ、ディムナ。しかし、そのオークは何ゆえに聖なる心に目覚めたんだろうね。やはり、イシュドの言う通り守りたい心……同族を守りたいという心が要因となったのかな」
「あぁ~~~……アドレアス、さっき自分でそんな感じの事を言っといてあれなんだが、多分ちげぇと思う」
「そうなのかい? それなら……生理的に認められないけど、モンスターが信仰心に目覚めた、ということかな?」
モンスターが信仰心に目覚めた。
これに関しては、アドレアスたち貴族だけではなく、平民であるガルフも中々納得出来ない内容である。
「さぁな……もしかしたら、女性……雌という存在の偉大さ? みたいなものに気付いたのかもな」
「?????? イシュド兄さん、考え過ぎてちょっと頭痛くなってきたんだけど」
「はっはっは!!! んな難しく考える必要はねぇよ、ヴァルツ。ただ……俺がオークパラディンと遭遇した時、周りに他のオークはいなかったんだよ。今日戦った元オーガの時みたいにな」
周りに同族がいなかった。
それが何を意味するのか……ディムナがいち早く気付いた。
「つまり、他の同族とは考え方が根本から違う、ということか」
「おそらくだけどな。オークってのは、雌に……人間の女に対して間違いなく発情するもんだ。ただ、それを良しとしない個体がいれば、どれだけその個体が強くても、付いて行こうと思うか?」
特別強さに憧れを持っていなくても、ただ純粋に強烈で強大な強さへとひた走る男の背を見て……その背中に憧れ、自分もと前へと向かうことは、人間ではなくても起こりうる感情の変化。
しかし、人間の雌が大好きで、巣に持って帰ってはぶっ壊れるまで本能を爆発させるのが……オークという個体。
その行動は、本能に……オークという生命に刻まれた思考、行動と言っても過言ではない。
それを、オークパラディンは否定する考えに至ってしまった。
そんなイシュドの予想は……見事、的を得ていた。
「多分、無理だろ。人間の女を敵として殺すのであればまだしも、手を出すなと言われ……手を出せば、ぶった斬られるかもしれない。そんな個体に、普通のオークが付いて行こうと思うか?」
「付いて行くことはないだろうな。そうか……そう考えるならば、辻褄が合うというか…………ディムナの言う通り、常識が思いっきり崩れた感覚ではあるが、ただ俺たちがそれを知らなかっただけとも捉えられるな」
常識が崩れた、という感覚は間違っていない。
ただ、本人たちが知識として知らなかったからこそ、そう感じたとも捉えられる。
「ねぇ、イシュド。この辺りでは、今日の剣鬼やオークパラディンみたいなモンスターが珍しくないの?」
「珍しい個体だとは思うぜ。今俺らがうろちょろしてるエリアであんな個体がばんばん出現されたら、さすがに異常事態だ。もっと奥に行けば……また別かもしれねぇけどな」
「そういえばこの前、暗黒剣技を使うモンスターと戦ったって言ってたよね、イシュド兄さん」
普通ならば驚くべき内容だが、本日直に剣鬼という存在に出会い、イシュドからオークパラディンという謎が多過ぎるモンスターの話も聞いたため、暗黒剣技を扱うモンスターがいると聞いても、ガルフたちは特に驚かなかった。
「そうだな。そんなモンスターもいたな」
「……イシュド。私たちは、後どれぐらい強くなれば、そういったモンスターと戦える様になるかい」
「それまた難しい質問だなぁ~~~…………とりま、三次転職するまで頑張るしかないんじゃねぇか? Bランクのモンスターならともかく、戦う相手がAランクってなると、レベルがそこまで高くねぇ相手でも相当ムズいんじゃねぇの?」
でも、君は倒したじゃないか、という言葉は出てこなかった。
アドレアスがこれまで、生半可なトレーニングを重ねてきた、という訳ではない。
寧ろ強くあることが義務である環境で育ってきたため、同世代の者たちよりもハードなトレーニングを重ねてきた。
しかし、イシュドと比べれば……どうしても温いと言わざるを得ない。
「後、俺一次職が魔戦士だったからな」
「「「っ!!!???」」」
イシュドの一次職を知らなかった三人は、レグラ家に訪れてから何度目になるか分からない衝撃を体感。
「それ、は……本当なのかい、イシュド君」
「ほんとほんと。んで、二次職で狂戦士になったから、ギリギリオークパラディンに勝てたんだと思うぜ? バーサーカーソウルは身体能力が爆上がりする超良いスキルだけど、使い過ぎれば理性を失うし、ギリギリのところで戻ったとしても、その後パフォーマンスがガクッと落ちるからな」
実際にイシュドはオークパラディンとの戦闘の際、バーサーカーソウルを限界ギリギリまで使用して辛くも勝利を得たが、その後は一歩も動けない状態となり、安全の為に超強固な結界のマジックアイテムを使わざるを得なかった。
「バーサーカーソウル……狂戦士が狂戦士たる所以、か」
「んだ、今更気になり始めたか? まっ、三次職……何を選ぶかは、お前らの自由だ。後悔のねぇ選択をしろよ」
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基本的に変えることは不可能であり、待ったは許されない。
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