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第123話 ついでに揉み潰される

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(なんだ、便所か?)

いきなりソファーから立ち上がり……イシュドにトイレの場所を尋ねる、のではなく……イシュド方に向き、そのまま膝を折って床に付けた。

「っ!!!???」

それだけでは止まらず、ディムナはゆっくりと頭を下げ……両手を斜めにして構えた。

「頼む。共に、鍛錬をさせてほしい」

(こ、こ、こ、こいつ…………ま、マジか。マジか、マジかよ!!!! アホだろ!!!!!!??????)

顔に驚愕の色が思いっきり出てしまうも、ツッコミだけはなんとか心の中だけで抑えた。

しかし……ディムナが行った土・下・座は、しっかりと頭が地面に付いており……文字通り、地に頭をこすりつけて頼み込んでいる。

「これが、頼み方の最上位だと、最近知った」

(誰がこいつにそんなもん教え込んだんだ!!!!!?????)

拳を握りしめ、猛烈に……怒りで変な顔になっているイシュド。

少し離れた場所にいるフィリップたちもその顔は見えており、普段なら……とりあえずフィリップは爆笑してもおかしくないが、それよりも目の前の信じられない光景に対しる驚きの方が強かった。

(おいおいおい……俺は夢でも見てるのか? さっき起きて、朝食を食った思うんだが……)

頬を軽く抓って確認するが、ちゃんと痛い。
そんな古典的な方法を取ったのはフィリップだけではなく、ミシェラやクリスティール、ダスティンも同じ方法で目の前の光景が夢ではないかを確認した。

だが、全員ちゃんと痛かった。

「なるほど、そのポーズにはしっかりと意味があったんだね」

そう言ってソファーから立ち上がると、アドレアスはディムナの横に並んだ。

「アドレアス様ッ!!!!!「何も言わず、そこで止まっていてくれ」っ……」

何かを察知して声を変えた護衛騎士に対し……重みのある王族としての命を出し、アドレアスはディムナと同じく膝を折り……床に膝を付け、そのまま腰も折っていく。

(こ、この阿呆……正気か?)

本気か? ではなく正気か? とツッコみたくなる光景が今……イシュドの目の前にあった。

「イシュド……頼む。私も共に、この地で訓練させてほしい」

「っ、っ、っ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」

爪が食い込んで流血しそうな勢いで拳を握りしめるイシュド。
更に顔が面白くなるも……やはりこの場にはそれに関してツッコむ者は誰一人としていない。

先程、アドレアスの行動を止めようとした護衛騎士も……本来であれば、いつまで王子であるアドレアスにその様な格好をさせ続けるのだ!!!! と怒鳴っているところだが……イシュドの顔を見れば、目の前の光景に対して迷惑としか思ってないのが眼に見えて解り、共感心もあってただ固く口を閉じる事しか出来なかった。

「……………………はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~」

肺の中にある酸素を全て出し切る様な溜息を吐出し……面倒そうな表情を一切隠さずに口を開いた。

「わぁ~ったよ」

「「っ!!!」

許しの言葉を、確かに耳にした二人は勢い良く顔を上げた。

「けど、その前に確認だ。お前らがここに来てる話は……お前らの親は知ってるんだろうな」

「あぁ、父には……当主には伝えている」

「私も父である国王陛下にはしっかり伝えてるよ」

「オッケー、とりあえずその言葉は信じてやる」

うちの子が誘拐された!! 無理矢理連れて行かれた!!! なんて事件に発展しないと確認。

「他の奴らに何してたのか聞かれても、俺らと一緒に行動してたとは答えるな。特に王子さん」

「勿論!!」

「よし……ん? どうした、フィリップ」

「いや、とりあえずその二人がここで活動するなら二十日間ぐらいは家に帰らないってことだろ。なら、最低限の言い訳? みたいなのは必要なんじゃねぇのか」

「そんなもん、激闘祭での結果に悔しさを感じたので、高みを目指していましたとかで良いだろ。お前ら二人、それで押し通せよ。んで、お前らの身内の誰かが暴走しそうになったら、死んでも止めろ。解かったか」

イシュドの脅しに近い命令に、二人はこくりと頷いた。

そして……今度はアドレアスとディムナではなく、フィリップたちに視線を向ける。

「そんでお前ら、今ここで起こった光景……絶対に口にすんなよ」

それは、日常であれば絶対にイシュドがガルフたちに向ける事がない圧。
口外すればどうなるか……といった事は口にしてないが、イシュドの圧を発すれば、それは既に脅してるのと同じ。

友人知人に向ける圧ではないと思いながらも、ガルフたちは全力で首を縦に何度も動かした。

「っし……とりあえず二人ともさっさと立て」

これ以上目の前の二人に膝を地面に付いた状態でいられても目障りだと思いながら、ソファーから立ち上がり……部屋から出る前に、護衛の騎士たちに対して嫌味ったらしく言葉をぶつけた。

「ったくよ、お前ら自分たちのところの坊にどんな教育してんだよ」

そんな嫌味マックスの言葉をぶつけられ……彼等は返す言葉もなく、ただただ頭を下げた。


「失礼します」

「あぁ、良いぞ」

応接室から出て、当主の執務室にやって来たイシュド。

「えぇ~~……結論から言うと、夏休みの間の滞在を許可しました」

「ほぅ~~~、そうかそうか。お前なら追い返すかと思ったんだけどな」

ジョークではなく、顔には本当にそうなったら困る、といった色もなかった。

「一対二で俺に勝ったら許可する、的な流れでも作って追い返すことも出来ただろ?」

「あぁーーー…………そう、ですね。でもな~~~~」

応接室で何があったのか、詳細を聞いたアルバは…………イシュドの事は全面的に信用しているが、それでも説明された内容を簡単に飲み込むことが出来なかった。

「それは……本当、なのか」

「間違いなく、マジのマジの超本当ですよ。ったく、あの阿呆二人は……俺みたいな奴は問題ないですけど、並みの貴族があんなの見せられたら、マジで寿命縮まるんじゃないですか」

「ふっふ……はっはっは!!!!!! 確かにそうだろうな。いや、その場で失神してもおかしくないだろうな」

「失神を越えて失禁するかもしれませんね…………とりあえず、二名追加となりました」

「そうか、分かった。安心しろ、何かあっても俺が何とかしてやるから、お前は阿呆二人をしごいてやれ」

因みに、二人の護衛騎士や魔術師たちは、ついでにレグラ家に所属する騎士団や魔術師団に揉んで揉んで揉み潰されることになった。


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