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第105話 目覚め
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「……まっ、とりあえず今日午後まで慣らしだな」
翌日、訓練終了後に体の節々に痛みを感じるなど、イシュドにとっては日常茶飯事の出来事であり……そこで鍛えられた回復力? もあって、翌日にはいつも通りだった。
「ご、ごめんね、イシュド」
しかし、ガルフたちにとって、それはとても日常茶飯事ではなかった。
「しょうがねぇしょうがねぇ。昨日、ロベルト爺ちゃんとの試合で、搾りカスすら残らねぇほど絞り出して戦ったんだろ。それなら、がちがちに筋肉痛になってても仕方ねぇって」
訓練とはいえ、試合の中で本気を出すのは……彼等にとって、当たり前のことである。
そういった部分を上手くサボる……調整するのが上手いフィリップであっても、普段の訓練やレグラ家に来てから行っていた訓練後には疲労感を感じていた。
だが、ロベルトと試合をした彼らは、本能的に解ってしまった。
余力を残して戦うなんて真似は出来ない、意味がないと。
全力を振り絞る……という言葉では生温い。
本当に絞り出した後、動けなくなるぐらいの、正真正銘の全力を出さなければならないと。
その結果……フィリップだけではなく、全員過去一の疲労感を体感し、快眠効果が付与されているベッドで寝たにもかかわらず……がっつり疲れが残っており、筋肉痛が
おまけで付いてきた。
「それじゃあ……とりま、筋肉痛が取れるまでがっつり柔軟でもするか」
今の状態で訓練を行っても、ポンコツ過ぎる試合になるだけで、あまり行う意味はないと判断。
「イシュドよ、俺も歳を取っても、アルフレッドさんやロベルトさんの様な、たくましい筋肉を、維持出来るだろうか」
「そりゃ頑張り次第じゃないっすか? 歳を取ってもバランス良く食事を取って、訓練を欠かさず行って……そんで、実戦も欠かさず行う。やっぱ、訓練だけでつくられた筋肉って、どこか見せ筋感を感じません?」
「み、見せ筋? よく分からないが…………そうだな、言いたい事は解らなくもない。死線を、修羅場を乗り越えてきた筋肉だけが持つ、輝きが、強さがあるという事、だな」
「そうそう、そういう事だ! 体に傷があれば良いってもんじゃないけど、でも、俺は傷が未熟さの証ではないと思う。誰かを守った結果、刻まれてしまった傷かもしれないし」
「名誉の負傷、といったところか……筋肉とはなんなのか、改めて思い知らされるな」
二人の会話に、ミシェラとクリスティール、フィリップはあの筋肉人間たちは何を言ってるのかと、半分以上は理解不能で呆れ顔を浮かべていた。
だが、ガルフとイブキはやや解るところが多いのか、口には出さないが……筋肉とは何なのかを心の中で感が始めた。
(ん? ヴァルツの奴、なんか大人しいな。ガルフたち同じで、筋肉痛がヤバ過ぎるってことか? でも、ぶっちゃけ毎日疲労具合なら、ガルフやミシェラたちに負けてねぇから、耐性は上だと思うんだが………………ほ、ほぅ)
二人一組で柔軟運動を行う際、ヴァルツは双子であるリュネと共に行っている。
当たり前だが、リュネに対して思うところはなく、単純に一番身近な負けられないライバルという認識。
だが……ミシェラたちは、違う。
(もう十歳は越えてるんだもんな…………そろそろって事か)
イシュドは男子が性に目覚める平均年齢など知らない。
ぶっちゃけた話、イシュドは転生者であるため、性欲という存在はなくとも、ガキの頃からスケベ欲自体はあった。
「むっ、どうしたイシュド。何か面白い事でも思い出したのか?」
「ん? 笑ってた?」
「あぁ、なんと言うか……普段の笑みとは違い、ニヤニヤとした笑みが零れていたぞ」
「そっか…………実はな」
こしょこしょと伝えられた内容を聞き、ダスティンは非常に納得のいく顔を浮かべ……つられて笑みを零してしまった。
「ふっふっふ。そういう事だったか。であれば、自然と笑みも零れてしまうものだな」
「だろ~~~~」
厳格、武人と思われる印象が強いダスティンだが、年齢相応のそういった部分は持ち合わせている。
ただ、二人ともこの場でからかう様な事はしない。
女性にとって、もしかしたらコンプレックスかもしれない部分をチラチラと見られるのは……基本的に嫌だろう。
しかし、性に目覚めかけた小僧がそういった部分に眼が行ってしまい、意識してしまうのは、もはや本能に近い。
(女はそういった視線に敏感だって言うから、デカパイたちも気付いてるかもしれねぇけど……まっ、見られるぐらい我慢してくれ)
あまりにもガン見した場合、同じ女性であるリュネがシバくので、問題ない……と言えなくもない。
「よ~~~し。どうだ、筋肉痛は治ってきたか?」
「ほどほどに、ってところですわね。にしても……何故あなたは最初からピンピンしてるのですの?」
「お前らとは鍛え方が違うんだよ」
「ぐっ…………本当に何も言えませんわ」
レグラ家に来てから、自分たちがこれまで行って来た訓練とは何なのか……そう思えるほど、訓練内容に差があり過ぎた。
だが、鍛え方が違うんだよと口にしたイシュドは、ミシェラたちが大きな差を感じるのは当然だと理解していた。
(つっても、お前らが訓練以外のことをやってる時間、俺は訓練や実戦……後はちょこっと趣味に使ってた訳だからな)
読み書き、多少の計算。
礼儀作法に関しては……一応頭に入っていれば問題無い。
貴族に関する教育はそれぐらいしかまともに受けておらず、他の時間は全て訓練や実戦につぎ込んでいる。
勿論自ら習いたいと言えば習うことは出来るが……基本的に、全員最低限を覚えれば、速攻で訓練等に時間を費やす。
「それじゃあ………………今日はタッグ戦でもやってみるか」
二対二のバトル。
当然、今日も治癒班が待機してくれている為、ガチの本気試合。
「疲れは抜けてねぇだろうけど、そういう時こそ進化が発揮されるもんだ。んじゃ、適当に分けて昼飯の時間までちゃちゃっと戦っちまうぞ」
イシュドに言われた通り、適当にタッグを組み、昼飯までの約三十分……数試合だけ行い、色々と面白い結果となった。
翌日、訓練終了後に体の節々に痛みを感じるなど、イシュドにとっては日常茶飯事の出来事であり……そこで鍛えられた回復力? もあって、翌日にはいつも通りだった。
「ご、ごめんね、イシュド」
しかし、ガルフたちにとって、それはとても日常茶飯事ではなかった。
「しょうがねぇしょうがねぇ。昨日、ロベルト爺ちゃんとの試合で、搾りカスすら残らねぇほど絞り出して戦ったんだろ。それなら、がちがちに筋肉痛になってても仕方ねぇって」
訓練とはいえ、試合の中で本気を出すのは……彼等にとって、当たり前のことである。
そういった部分を上手くサボる……調整するのが上手いフィリップであっても、普段の訓練やレグラ家に来てから行っていた訓練後には疲労感を感じていた。
だが、ロベルトと試合をした彼らは、本能的に解ってしまった。
余力を残して戦うなんて真似は出来ない、意味がないと。
全力を振り絞る……という言葉では生温い。
本当に絞り出した後、動けなくなるぐらいの、正真正銘の全力を出さなければならないと。
その結果……フィリップだけではなく、全員過去一の疲労感を体感し、快眠効果が付与されているベッドで寝たにもかかわらず……がっつり疲れが残っており、筋肉痛が
おまけで付いてきた。
「それじゃあ……とりま、筋肉痛が取れるまでがっつり柔軟でもするか」
今の状態で訓練を行っても、ポンコツ過ぎる試合になるだけで、あまり行う意味はないと判断。
「イシュドよ、俺も歳を取っても、アルフレッドさんやロベルトさんの様な、たくましい筋肉を、維持出来るだろうか」
「そりゃ頑張り次第じゃないっすか? 歳を取ってもバランス良く食事を取って、訓練を欠かさず行って……そんで、実戦も欠かさず行う。やっぱ、訓練だけでつくられた筋肉って、どこか見せ筋感を感じません?」
「み、見せ筋? よく分からないが…………そうだな、言いたい事は解らなくもない。死線を、修羅場を乗り越えてきた筋肉だけが持つ、輝きが、強さがあるという事、だな」
「そうそう、そういう事だ! 体に傷があれば良いってもんじゃないけど、でも、俺は傷が未熟さの証ではないと思う。誰かを守った結果、刻まれてしまった傷かもしれないし」
「名誉の負傷、といったところか……筋肉とはなんなのか、改めて思い知らされるな」
二人の会話に、ミシェラとクリスティール、フィリップはあの筋肉人間たちは何を言ってるのかと、半分以上は理解不能で呆れ顔を浮かべていた。
だが、ガルフとイブキはやや解るところが多いのか、口には出さないが……筋肉とは何なのかを心の中で感が始めた。
(ん? ヴァルツの奴、なんか大人しいな。ガルフたち同じで、筋肉痛がヤバ過ぎるってことか? でも、ぶっちゃけ毎日疲労具合なら、ガルフやミシェラたちに負けてねぇから、耐性は上だと思うんだが………………ほ、ほぅ)
二人一組で柔軟運動を行う際、ヴァルツは双子であるリュネと共に行っている。
当たり前だが、リュネに対して思うところはなく、単純に一番身近な負けられないライバルという認識。
だが……ミシェラたちは、違う。
(もう十歳は越えてるんだもんな…………そろそろって事か)
イシュドは男子が性に目覚める平均年齢など知らない。
ぶっちゃけた話、イシュドは転生者であるため、性欲という存在はなくとも、ガキの頃からスケベ欲自体はあった。
「むっ、どうしたイシュド。何か面白い事でも思い出したのか?」
「ん? 笑ってた?」
「あぁ、なんと言うか……普段の笑みとは違い、ニヤニヤとした笑みが零れていたぞ」
「そっか…………実はな」
こしょこしょと伝えられた内容を聞き、ダスティンは非常に納得のいく顔を浮かべ……つられて笑みを零してしまった。
「ふっふっふ。そういう事だったか。であれば、自然と笑みも零れてしまうものだな」
「だろ~~~~」
厳格、武人と思われる印象が強いダスティンだが、年齢相応のそういった部分は持ち合わせている。
ただ、二人ともこの場でからかう様な事はしない。
女性にとって、もしかしたらコンプレックスかもしれない部分をチラチラと見られるのは……基本的に嫌だろう。
しかし、性に目覚めかけた小僧がそういった部分に眼が行ってしまい、意識してしまうのは、もはや本能に近い。
(女はそういった視線に敏感だって言うから、デカパイたちも気付いてるかもしれねぇけど……まっ、見られるぐらい我慢してくれ)
あまりにもガン見した場合、同じ女性であるリュネがシバくので、問題ない……と言えなくもない。
「よ~~~し。どうだ、筋肉痛は治ってきたか?」
「ほどほどに、ってところですわね。にしても……何故あなたは最初からピンピンしてるのですの?」
「お前らとは鍛え方が違うんだよ」
「ぐっ…………本当に何も言えませんわ」
レグラ家に来てから、自分たちがこれまで行って来た訓練とは何なのか……そう思えるほど、訓練内容に差があり過ぎた。
だが、鍛え方が違うんだよと口にしたイシュドは、ミシェラたちが大きな差を感じるのは当然だと理解していた。
(つっても、お前らが訓練以外のことをやってる時間、俺は訓練や実戦……後はちょこっと趣味に使ってた訳だからな)
読み書き、多少の計算。
礼儀作法に関しては……一応頭に入っていれば問題無い。
貴族に関する教育はそれぐらいしかまともに受けておらず、他の時間は全て訓練や実戦につぎ込んでいる。
勿論自ら習いたいと言えば習うことは出来るが……基本的に、全員最低限を覚えれば、速攻で訓練等に時間を費やす。
「それじゃあ………………今日はタッグ戦でもやってみるか」
二対二のバトル。
当然、今日も治癒班が待機してくれている為、ガチの本気試合。
「疲れは抜けてねぇだろうけど、そういう時こそ進化が発揮されるもんだ。んじゃ、適当に分けて昼飯の時間までちゃちゃっと戦っちまうぞ」
イシュドに言われた通り、適当にタッグを組み、昼飯までの約三十分……数試合だけ行い、色々と面白い結果となった。
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