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第101話 幾ら掛かった?

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「爺ちゃん……戦るに決まってるじゃん」

「ふっふっふ。そう言うと思っていた。では、場所を移動しようか」

「オッケー。お前らも観るだろ?」

「あ、う……うん」

何故この訓練場から移動するのか、とは訊けなかった。
ただ、あのイシュドが殺そうとしても殺せないと語る人物と……亜神と称する人と戦う。

それを見逃せないという気持ちで一杯だった。


「やっぱり、本気で戦るならここだよな~~~」

「い、イシュド。ここも訓練室なの?」

二人に付いて行くと、外見的には……先程まで居た場所と同じく、訓練場に見える。
しかし、大きさは先程使っていた訓練場よりも大きくない・

「そうだぞ。ほら、やっぱり身内でがっつり戦ったり、レグラ家に仕えてる騎士や魔術師たちの中でもトップクラスの奴らが本気でぶつかったりすると、普通の訓練場だと結構ボロボロになるんだよ」

レグラ家に仕える騎士たちから専門外の得物に関するアドバスを貰っていたガルフたちは、その光景が容易に想像できた。

「だから、この訓練場を建てたんだ」

「この訓練場はイシュドが発案したものだ。高い硬度を持つ鉱石をふんだんに使用し、そこに更にBランクやAランクモンスターの骨……再生の特性、もしくはスキルを持つモンスターの魔石を混ぜ合わせ、特殊な金属を錬金術師たちに造ってもらい、非常に頑丈な建物となった」

「「「「………………」」」」

ミシェラ、フィリップ、クリスティール、ダスティンの四人は言葉が出てこなかった。

イシュドが発案した……そこまでは理解出来る。
蛮族だのなんだの言われているが、発想や思考力までおかしな方向に振り切れてはいない。

ただ……目の前の建物、訓練場の大きさは確かに先程まで使用していた建物と比べれば、やや小さい。
しかし訓練場と言える広さはある。

その訓練場……全てに超硬度な金属とBランクやAランクモンスターの骨や魔石が使われているとなれば……目の前の訓練場が、実家の屋敷と同等の値段……もしくはそれ以上の建設費用が掛かっているのではないかと考えてしまい、脳が軽くショート。

「す、凄いねイシュド!!!!」

「だろだろ。ダンジョンとかの宝箱に入ってる特殊なマジックアイテムとかも組み込んでるから、腕とかぶった斬られても全然大丈夫なんだよ」

戦った者の四肢が切断されても一応問題無い。
その説明まで聞いた四人は、現在足を踏み入れてしまっている訓練場が、どう考えても実家の屋敷以上の価値があると確信した。

「? どうしたんだお前ら、そんなにびくびく震えて緊張してよぉ」

「あ、あなた……じ、自分がどんな発案をしたのか、解ってますの?」

「鉱石とモンスターの素材を混ぜることか? そんなの、そもそも錬金術師たちの得意分野だろ。鍛冶師たちも出来る技術だし」

「いやいやイシュド。そこじゃねぇ、そこじゃねぇんだよ。この建物造るのに、いったい幾らかかったんだって話だ」

「あぁ、そこか。モンスターの骨とか、再生の特徴を持つモンスターの魔石とかは自分たちで手に入れられる。鉱石も……偶に鋼鉄のゴーレムとか出現するんだよ。まっ、結果的に他の街から大量に目当ての鉱石を買ったから……その購入費と、腕の立つ錬金術師への依頼費でかなり金が飛んでったか?」

イシュドの言う通り、モンスターの骨や魔石などに関してはイシュドたちが狩って手に入れていた為、実質タダ。

しかし鉱石に関してはそれ相応の量が必要となり、大金が泡の如く消えていったのは間違いない

ただ、レグラ家の人間は基本的に一時的に自身の懐が金欠になったとしても、美味い飯が食えればそれで良いという思考が強いため、現当主であるアルバもそこまで頭を悩ませていなかった。

「とりあえず、領地の経営とかに影響は出なかったみたいだぞ」

「……それはそれで驚きですわ」

ミシェラがフィリップたちの気持ちをそのままそっくり代弁するも、イシュドとしては本当に特に驚くべきことではないため、適当に聞き流しながら準備運動を始めた。

「金は、本当に使うべき時に、使おうって、話だ」

普段の訓練を始める前の準備運動とは……まるで違う。

(ん~~~……あのシャドーの際に放たれてるパンチやキックだけで、いったいどれだけの学生がKOされることやら……つか、イシュドの奴、さっきまでがっつり筋トレしてたよな? 準備運動は、あれで十分じゃないのか?)

同じ事をクリスティールとイブキも考えていたが、それでも本当に真剣な表情を浮かべているイシュドに対して、誰もツッコめなかった。

(それだけ真剣って話か。にしても、あっちの……生きる伝説的な爺さんは、本当にのんびり準備運動してるだけだな。イシュドなら、嘗めてんのかって言いそうだけど……身内だから、とかじゃねぇよな)

二人が行っている準備運動の差には大きな差がある。

それをイシュドが解っていない筈がない……にもかかわらず、なにもツッコまない。

(イシュドにとっては……マジの挑戦ってことか)

マジな準備運動が始まってから約十分後、ようやくイシュドがシャドーを止めた。

「ごめん爺ちゃん。お待たせ」

「ふっふっふ、構わんよ」

結界が展開されているため、観戦するガルフたちに攻撃が飛んでくることはない、ない。

ただ、イシュドから迸る圧までは結界でガード出来ない。

(イシュドが……戦斧を、握りしめてる)

(そういえば一番得意な戦闘スタイルは、二振りの戦斧を持って戦うスタイルって言ってたか? もう、マジのガチの本気で戦うってことだな)

(あの戦斧、おそらくランクは五……いえ、六でしょうか? そんな武器を………………ダメですわ。もう、なんか……感覚が色々と麻痺してますわ)

今回の試合に、審判は居ない。
イシュドとロベルトは、会話の中で特にルールを決めていない。

「すぅーー……はぁーーーー…………すぅーーーー…………ッ!!!!! オオオオオオァァアアアアアアア゛ア゛ア゛ッア゛ア゛!!!!!!!!!!!」

呼吸を整えたイシュドは……開幕速攻、狂戦士の真骨頂であるバーサーカーソウルを発動。

一瞬……一瞬だけ、いきなりやり過ぎでは? と思ってしまってもおかしくない。
だが観戦している者たちに、直ぐに特にルールを決めなかった意味を解らせる。
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