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第89話 何故心配しない?
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「あっ、そういえば父さん。俺、学園で超強い人と戦えましたよ」
「ほぅ? 学生ではなく、教師か」
「はい。実は友人のイブキの兄で、臨時教師のシドウ先生って言うんですけど……」
その話題が出た瞬間、イブキは喉に食べ物がつまり、ちょっと待ってくれという言葉が出ず……イシュドは笑いながら自分が一度死んだ話をした。
「って感じで、半端なく強かったんですよ」
「はっはっは!!!!! いやぁ~~~、流石イシュドだな。常識人の様に見えて、やはりぶっ飛んでるところはぶっ飛んでいる!!!!」
「……イシュド。それは、しっかりそのシドウ先生に許可を取ったのか?」
「はい。ちゃんとシドウ先生に受けてもらって、担任のバイロン先生にも容認してもらいました」
一度高等部に魔力を纏った一撃を食らったが、確かに最終的にイシュドとの死合いを許可してもらったのは事実。
「そうかい。それならまぁ、大丈夫か」
ヴァレリアの言葉に対して「どこが大丈夫なんだ?」という言葉を……口には出さなかったが、ガルフたちは全員心の中でツッコんだ。
「あの一撃は決まったと思ったんですけどね。やっぱり、本場の侍は強かったです」
「そうかそうか……良い経験も出来ている様でなによりだ」
良い経験とは? という疑問がミシェラたちの頭に浮かんだ。
普通に……というより、特に深く考えずとも良い経験で済まされないのは確か。
「凄いね。刀っていう武器を使っても、イシュド兄さんが負けるなんて」
「本当に凄かったぜ。俺もこう……普段の俺とは違いはしたが、それでも本気で……侍として挑んだんだが、どうやら向こうが俺の実力を信頼してくれてたみたいでな。それが要因って言うのはちょっと違うかもしれないけど、綺麗にバッサリと斬られたな」
「??? リュネ。戦う相手を信頼? してたら戦況って変わるものなの?」
「私はあなたやイシュド兄さんと違って接近戦タイプじゃないから詳しい事は解らないけど、信頼していることで先を読むことに繋がるんじゃないのかしら」
「あぁ~~~!! なるほど、そういう事か!!」
本当にイシュドが死んだことに関して、誰一人ツッコまない、心配しない。
(も、もしかして……僕の常識が、おかしいのかな?)
(息子が本当に一度殺されたというのに、これが……この家では、普通なのですの!? 確かにエリクサーの後悔は絶大ですが……)
(ん~~~~……やべぇやべぇ、くそやべぇな。なんつ~か、とりあえず常識が違い過ぎるって感じだ。もしかしたらって思っちゃいたけど、本当にこんな感じなんだな……口には出せねぇけど、こりゃ貴族たちが蛮族って呼ぶのも、一理あるか?)
(獅子は我が子を千尋の谷に落とす……いや、少し違いますね。我が子が地獄を闊歩するのを止めようとしない、といったところでしょうか)
(親が子の無茶を心配しない。寧ろ褒めている? これがイシュドの力の秘密の一端……なのか?)
(この家では、これが普通なのでしょう。これから長期休暇の間滞在するとなると、慣れていかなければなりませんね)
各自、思うところは色々あった。
しかしレグラ家の常識に対し、他家の者が口出しできる訳がなく、よそはよそでうちはうちと納得するしかなかった。
「あぁ~~~、腹減った~~~~~って、イシュドじゃねぇか!! 帰って来てたのかよ!!!!!」
その後、ミハイルたちも食事の席に入り……ひとまず全員に連れてきた友人の中に女性がいることにツッコまれ、イシュドはその度に面倒な顔をしながらもそうじゃないと返し続けた。
「はぁ~~~、ったく。全員何を期待してんだが」
「単純に期待してるか、からかいたいだけのどっちかじゃねぇの? ほら、人の恋愛云々は気になるし、からかいたくなるもんだろ」
「…………まっ、そりゃそうだな」
以前、ガルフのそういった部分に関して根掘り葉掘り聞きだし、挙句の果てには奢りとはいえ半ば強引に娼館へと連れて行ったことを思い出したイシュド。
「私としましては、あなたの弟と妹までこう……考え方、反応が普通ではないことに
驚かされましたわ」
「ん? ……あぁ、はいはい。なるほどね。はっはっは!!! 普通はそういう反応になるか。けど、この家じゃあれが普通だ。言っとくけど、別に虐待と化してる訳じゃねぇからな?」
環境が普通という常識の内容を変える。
そして貴族がより良い才能を、血を取り込もうとするのと同じく……レグラ家もそういった部分は一応重視していた。
そのため、六男である錬金術に強い興味を抱いているスアラも、肉体的な強さは他の兄弟たちに負けてない。
「解ってますわよ。ただ、ギャップにやられただけですわ」
「んじゃ、それに慣れてけよ」
さらりとミシェラに無茶を言うイシュド……に向かって、数人の子供たちが駆け寄って来た。
「「「「「イシュド様、おかえりなさい!!!!」」」」
「おぅ、ただいま。元気してたか、お前ら?」
駆け寄って来た子供たちは、殆どが十歳以下の子供たちばかり。
(……激闘祭の特別試合で鬼の様な強さでクリスティールお姉さまたちを倒した姿と比べると、信じられない光景ですわ)
あのイシュドが、幼い子供たちに囲まれている。
イシュドが普段から尖っている、鬼のような形相をしているのではないと解っていても、ミシェラたちからすればあまり想像出来ない光景であったのは間違いない。
「い、イシュド。その子たちは、いったい」
「ん? こいつらか? …………あれだ。親を亡くした奴らだ」
「「「「「「っ!」」」」」
アルバが治める街の周辺は、魔境と呼ぶに相応しい。
そんな魔境で活動する騎士、もしくは冒険者たちはいつも死を覚悟している。
モンスターや盗賊などと戦う職業に就いている者たちには、いつも死が付いて回るものではあるが、そこら辺の森などで探索するのとは訳が違う。
レグラ家に仕えている兵士や騎士たちであっても……殺される時は殺されてしまう。
レグラ家から見舞金は出るものの、残された家族に消えない悲しみが残るのは間違いない。
そんな子供たち……下を向く訳にはいかない親たちの為にと、イシュドは実家の余っているスペースに大きな大きな……知らない者が見ればもう一つの屋敷? と思える建物を建てた。
「ほぅ? 学生ではなく、教師か」
「はい。実は友人のイブキの兄で、臨時教師のシドウ先生って言うんですけど……」
その話題が出た瞬間、イブキは喉に食べ物がつまり、ちょっと待ってくれという言葉が出ず……イシュドは笑いながら自分が一度死んだ話をした。
「って感じで、半端なく強かったんですよ」
「はっはっは!!!!! いやぁ~~~、流石イシュドだな。常識人の様に見えて、やはりぶっ飛んでるところはぶっ飛んでいる!!!!」
「……イシュド。それは、しっかりそのシドウ先生に許可を取ったのか?」
「はい。ちゃんとシドウ先生に受けてもらって、担任のバイロン先生にも容認してもらいました」
一度高等部に魔力を纏った一撃を食らったが、確かに最終的にイシュドとの死合いを許可してもらったのは事実。
「そうかい。それならまぁ、大丈夫か」
ヴァレリアの言葉に対して「どこが大丈夫なんだ?」という言葉を……口には出さなかったが、ガルフたちは全員心の中でツッコんだ。
「あの一撃は決まったと思ったんですけどね。やっぱり、本場の侍は強かったです」
「そうかそうか……良い経験も出来ている様でなによりだ」
良い経験とは? という疑問がミシェラたちの頭に浮かんだ。
普通に……というより、特に深く考えずとも良い経験で済まされないのは確か。
「凄いね。刀っていう武器を使っても、イシュド兄さんが負けるなんて」
「本当に凄かったぜ。俺もこう……普段の俺とは違いはしたが、それでも本気で……侍として挑んだんだが、どうやら向こうが俺の実力を信頼してくれてたみたいでな。それが要因って言うのはちょっと違うかもしれないけど、綺麗にバッサリと斬られたな」
「??? リュネ。戦う相手を信頼? してたら戦況って変わるものなの?」
「私はあなたやイシュド兄さんと違って接近戦タイプじゃないから詳しい事は解らないけど、信頼していることで先を読むことに繋がるんじゃないのかしら」
「あぁ~~~!! なるほど、そういう事か!!」
本当にイシュドが死んだことに関して、誰一人ツッコまない、心配しない。
(も、もしかして……僕の常識が、おかしいのかな?)
(息子が本当に一度殺されたというのに、これが……この家では、普通なのですの!? 確かにエリクサーの後悔は絶大ですが……)
(ん~~~~……やべぇやべぇ、くそやべぇな。なんつ~か、とりあえず常識が違い過ぎるって感じだ。もしかしたらって思っちゃいたけど、本当にこんな感じなんだな……口には出せねぇけど、こりゃ貴族たちが蛮族って呼ぶのも、一理あるか?)
(獅子は我が子を千尋の谷に落とす……いや、少し違いますね。我が子が地獄を闊歩するのを止めようとしない、といったところでしょうか)
(親が子の無茶を心配しない。寧ろ褒めている? これがイシュドの力の秘密の一端……なのか?)
(この家では、これが普通なのでしょう。これから長期休暇の間滞在するとなると、慣れていかなければなりませんね)
各自、思うところは色々あった。
しかしレグラ家の常識に対し、他家の者が口出しできる訳がなく、よそはよそでうちはうちと納得するしかなかった。
「あぁ~~~、腹減った~~~~~って、イシュドじゃねぇか!! 帰って来てたのかよ!!!!!」
その後、ミハイルたちも食事の席に入り……ひとまず全員に連れてきた友人の中に女性がいることにツッコまれ、イシュドはその度に面倒な顔をしながらもそうじゃないと返し続けた。
「はぁ~~~、ったく。全員何を期待してんだが」
「単純に期待してるか、からかいたいだけのどっちかじゃねぇの? ほら、人の恋愛云々は気になるし、からかいたくなるもんだろ」
「…………まっ、そりゃそうだな」
以前、ガルフのそういった部分に関して根掘り葉掘り聞きだし、挙句の果てには奢りとはいえ半ば強引に娼館へと連れて行ったことを思い出したイシュド。
「私としましては、あなたの弟と妹までこう……考え方、反応が普通ではないことに
驚かされましたわ」
「ん? ……あぁ、はいはい。なるほどね。はっはっは!!! 普通はそういう反応になるか。けど、この家じゃあれが普通だ。言っとくけど、別に虐待と化してる訳じゃねぇからな?」
環境が普通という常識の内容を変える。
そして貴族がより良い才能を、血を取り込もうとするのと同じく……レグラ家もそういった部分は一応重視していた。
そのため、六男である錬金術に強い興味を抱いているスアラも、肉体的な強さは他の兄弟たちに負けてない。
「解ってますわよ。ただ、ギャップにやられただけですわ」
「んじゃ、それに慣れてけよ」
さらりとミシェラに無茶を言うイシュド……に向かって、数人の子供たちが駆け寄って来た。
「「「「「イシュド様、おかえりなさい!!!!」」」」
「おぅ、ただいま。元気してたか、お前ら?」
駆け寄って来た子供たちは、殆どが十歳以下の子供たちばかり。
(……激闘祭の特別試合で鬼の様な強さでクリスティールお姉さまたちを倒した姿と比べると、信じられない光景ですわ)
あのイシュドが、幼い子供たちに囲まれている。
イシュドが普段から尖っている、鬼のような形相をしているのではないと解っていても、ミシェラたちからすればあまり想像出来ない光景であったのは間違いない。
「い、イシュド。その子たちは、いったい」
「ん? こいつらか? …………あれだ。親を亡くした奴らだ」
「「「「「「っ!」」」」」
アルバが治める街の周辺は、魔境と呼ぶに相応しい。
そんな魔境で活動する騎士、もしくは冒険者たちはいつも死を覚悟している。
モンスターや盗賊などと戦う職業に就いている者たちには、いつも死が付いて回るものではあるが、そこら辺の森などで探索するのとは訳が違う。
レグラ家に仕えている兵士や騎士たちであっても……殺される時は殺されてしまう。
レグラ家から見舞金は出るものの、残された家族に消えない悲しみが残るのは間違いない。
そんな子供たち……下を向く訳にはいかない親たちの為にと、イシュドは実家の余っているスペースに大きな大きな……知らない者が見ればもう一つの屋敷? と思える建物を建てた。
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