転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第82話 結果は?

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「はっはっは!!!! そうかそうか、流石俺の妹。こっちでもモテモテだな!!」

「兄さん、恥ずかしいからあまり大きな声でを出さないでください」

現在、イシュドたちはシドウの奢りで店の個室で料理を食べていた。

「まさかフィリップが賭けた通り、いきなり告白するとはなぁ……蛮勇っちゃ蛮勇に分類されるだろうけど、あの令息はとんでもねぇ勇気を持ってたみてぇだな」

イシュドたちはイブキに声を掛けた令息が、一体何用でイブキに声を掛けたのかという件で賭け事を行っていた。

イシュドがイブキをデートに誘う。
フィリップはイブキにいきなり告白。
ミシェラはまずは友達から申し出。
ガルフは賭けには参加しなかったが、一緒に自分と訓練してほしいという提案ではないかと考えていた。

結果、フィリップの一人勝ちとなり、イシュドとミシェラは約束通り金貨一枚ずつ差し出した。

「やっぱイブキみたいな高嶺の花を狙う奴は、基本的に一発逆転、奇跡を起こそうってなけなしの勇気を振り絞るもんだろ」

「そういう考えもあるってのは解らなくもねぇけどよぉ……」

卒業後や卒業手前など、自分が高嶺の花に告白して情報が広まってもほとんど恥ずかしくない……という時期ではなく、まだあと最低でも二年間は学園生活が残っている。
そういった情報も踏まえ、イシュドとしてはさすがにいきなり告白はしないだろうと高をくくっていた。

「普通はその奇跡を起こそうとしたり、一発逆転を狙うにはもうちょい材料がいるだろ」

「……イシュドと同じ意見なのは悔しいですが、私も同じ考えですわね」

「僕は一緒に鍛錬してくないかっていう頼み事かと思ってたけど……なんて言うか、色々とびっくりだね」

「兄としても、予想はしてたけど色々ビックリだよ。ちなみにイブキ、どんな感じで断ったんだ」

「どんなと言われましても……普通に、今は特定の相手をつくりつもりはないと伝えただけです」

「なるほどなるほど……」

確かに断った、フったと言える形ではある。

(今は特定の相手をつくりつもりはない……今一度思い返してみっと、ちょっと相手側に希望を残す断り方だよな。イブキはそんな可能性全く考えてなさそうだけど)

イシュドだけではなく、兄のシドウも似た様なことを考えていた。

「……時にイシュド。イシュドは恋人とか婚約者とかいないんだよね」

「? そうっすね」

「それじゃあ、うちの妹を婚約者にどうだ」

「っ!!!!!?????」

「「っ!!!!!?????」」

(うっ、ほぉ~~~~~。何々、いきなり面白い展開になるじゃん)

イブキは兄の突拍子もない発言に混乱。
ガルフとミシェラも同じく混乱し、二人とも人に当たってしまわない方向を向き、吹き出してしまう。

そして唯一、フィリップだけはある程度予想していたのか……ニヤニヤと笑みを浮かべながら友人の方へ視線を向けた。

「…………それ、マジで言ってるんですか」

「そうそう、超本気だよ。俺たちの国、文化とかに強い興味を持ってくれてるとか本当に嬉しいし、強さも申し分ない。刀の扱いには驚かされたけど、イシュドの真骨頂はあの戦闘スタイルじゃないだろ」

「負けた言い訳みたいになるんで嫌っすけど、一応そうっすね」

「だろだろ。っていうのとか考えると、強さ的にも妹を任せられる」

「…………」

どうやらマジで言ってるのだと窺える。

イシュドは先程までの表情とは違い、非常に真剣な表情になっており……チラッとイブキに視線を向けた。

「っ……」

視線を向けられたイブキは……本当にどう反応すれば良いのか解らなかった。
ただ、今日の昼休みに告白した令息が見れば、色んな意味で心がやられる表情なのは間違いない。

「ん~~~~~~……嬉しい申し出? ではあるっすけど、イブキの気持ちも解らねぇし、それに俺はまだまだ遊びたいんで、無責任に受けられないっすね」

「ほほぉ~~~……そっか。いや、まぁそれもそうか。当たり前っちゃ当たり前だけど、イシュドはまだ十……五か?」

「うっす。一応まだ十五っすね」

「それなら、まだ決められないが…………うん、当たり前だな。っていうかミシェラ、顔大丈夫か?」

怒りが十割なのは間違いないが、普段の怒り顔とは少々違っていた。

「い、いいいイシュド!!!! あなた、今何を断って、何を口にしたのか解ってますの!!!???」

「まだ遊びたい歳頃だから断らせてもらった。それだけだろ?」

「~~~~~~~っ!!!!!! …………………………すぅ~~~~、はぁ~~~~~~~~~」

血管がブチ切れそうになったミシェラは以前、担任であるバイロンから教わった、怒りが限界突破しそうになった時は一度深呼吸を知ろ、という教えに従った結果……一応、冷静にはなれた。

「まず、仮にもあなたは辺境伯の令息でしょう。なのにあ、遊ぶとはどういうことですの!!!!」

「……俺らが言う遊ぶ、の意味は解ってるんだよな? なら、その意味通りに受け取ってくれ。まだ歳頃の男子なんだから、当然っちゃ当然だろ。なぁ~~、フィリップ」

「だな。ミシェラ、家のメイドたちと恋バナとかしたことあるなら、野郎たちのそういった話を聞いたりもしなかったのか? 歳頃の野郎に我慢しろとか、拷問みたいなもんだぜ」

イシュドはフィリップだけに同意を求め、ガルフには同意を求めなかった。

以前、イシュドとフィリップが半ば強引にとはいえそういった店に連れて行った二人だったが……友人のイメージを守るぐらいのデリカシーは持ち合わせていた。

「っ!!!!!! か、仮に……女性である私の考えが及ばない部分があったとしても、今のシドウ先生から申し出を断るとは、どういう事ですの!!!」

既に共に行動するようになり、友人と呼べる間柄になって二週間は経過していた。

国は違えど、ミシェラから見てイブキは全ての面において敬意を持つ同性。
クリスティールに対する敬意とは少々違うものの、堂々と……本人を目の前にしても、彼女は素晴らしい女性、淑女だと断言出来る。

「……………………なぁ、フィリップ。俺ら今日酒飲んだっけ」

「ワインは呑んでるな」

「そっか。でもそんな度数は高くなかったし、こいつもあんま顔が赤くなったりしてねぇけど……まっ、落ち着けってクソデカパイ。お前、俺がなんて断ったか、冷静に思い出してみろ」

狂戦士に冷静になれと言われては、癪だが一旦冷静になるしかなかった。

そして……本当に冷静になったミシェラの顔から怒りは一切消え、逆にちょっと青くなった。
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