23 / 246
第23話 憤死寸前?
しおりを挟む
(ふっ……ふっふっふ。本当にガルフみたいな奴を見てると、血がどうたら高貴さがどうだの……それが身に付いてないでお前らどうすんだって連中がどれだけダサいか解るな)
アイアンアントと戦闘中のガルフの動きは徐々に……徐々に徐々に無駄がなくなっていく。
まるで将棋の最善手を選び続けるかの如く動き続け、最終的にアイアンアントを物理的に詰ませた。
「はぁ、はぁ……もう、動けない」
「お疲れさん。最後の方、マジで良い動きだったぞ」
イシュドとの戦いで、最後の方の動きを実戦出来たとしても……現段階では、相手になる事はない。
しかし、仮に自分と同レベルになった場合……といった想像を思い浮かべ、武者震いする。
(まっ、あの動きはあの動きでやりようがあるんだが、今ガルフにそこまでアドバイスしたら頭こんがらがりそうだな)
こうして二人は夕方過ぎまで探索を続けた後、最寄りの街で素材の売却。宿の予約と夕食を済ませ、爆睡。
よっぽど疲れが溜まっていたガルフは横になってからたった数秒でいびきをかき始めた。
「んじゃ、今日も頑張っていこうぜ」
「……っしゃ!!!!!!」
「ははは、良いね。気合十分だ」
翌日、まだ疲れが完璧に抜けてないものの……ガルフは気合で振り切り、二日目の休みも実戦実戦実戦休憩……実戦実戦実戦休憩を繰り返し、学園に戻ってきたのは時間ギリギリ。
「おはようさん、生きてるか?」
「……改めて学園のベッドって凄いんだなって思った」
まだギリ疲れは残っているが、予想以上の回復に驚きを隠せない。
授業が始まる前に食堂へ向かうと、相変わらずイシュドに……今ではガルフに多くの視線が集まる。
当然、良い意味での注目ではない。
(言いたいことがあるなら、輩一や二とか……マクセランみたいに面と向かって言やいいもんを……って、上にはペコペコして下にはデカい面を取る連中には無理か)
朝からがっつり肉のメニューを頼み、適当に空いている席に座ると……狙っていたかのように、二人の前の席にとある生徒が座った。
「やぁ、おはよう」
「……おはよう」
「君がイシュド・レグラ君で合ってるよね」
「そうだけど……あんたは「貴様ッ!!! その口の利き方を正せっ!!!!」……めんどくさ」
一応……一応イシュドは目の前の生徒が本当に誰なのか知らないものの、珍しくこれまで声を掛けてきた人物とは違い、クリスティールに近い感情を向けられていると感じ、対応しようと思った。
しかし、いきなり大きな声で両隣りの片方が口の利き方がうんたらかんたらと怒鳴り始めたため、イシュドは完全に無視して朝食を食べることだけに集中し始めた。
「ッッッッッ!!!!!! 貴様、私の話を聞いているのか!!!!!!」
「………………」
「ッ!!!!!!」
男の怒鳴り声を、更に無視。
ガルフは万が一の可能性に備え、食器が乗ったプレートを両手で持ち上げる。
「止めるんだ」
「し、しかし!!!!」
「私が止めろと言っているんだ」
「ぐっ……か、かしこまりました」
主人的なポジションの男子生徒が、暴走しかけた男子生徒を制しさせた。
(ふ~~~~ん……やっぱりか)
イシュドは本当に何も知らない情報から、自分に挨拶をして来た男子生徒の正体を探っていた。
「あんたが、俺たちの代の王族ってことか」
「ッ!!!!!」
全く経緯が籠っていないその話し方に、先程怒鳴り声を上げた男子生徒の怒りがすぐさま膨れ上がるも、今回は爆発しなかった。
「アドレアス・バトレアだ。よろしく」
「あぁ、よろしく…………それで、王族様が俺みたいな礼儀も作法も知らない生徒になんか用ですか」
「うん、勿論。私は君と友人になりたいと思ってね」
「「「「「「「「「「っ!!!!????」」」」」」」」」」
アドレアスの言葉に、食堂内で二人の会話に聞き耳を立てていた生徒たちは完全に固まり、イシュドの言葉に苛立ちを顔に出していなかったもう一人の家来的な生徒も表情が崩れていた。
そして……先程怒鳴り声を上げた男子生徒に関しては、色々と言いたい事があるのに言えないといった言葉が、面白い具合に顔に表れていた。
(なるほどねぇ……この人なりに考えての言葉なんだろうな)
アドレアスのストレートな言葉に、イシュドは思わずニヤリと笑った。
「嬉しい申し出なんだろうけど、お断りさせてもらうよ」
「「「「「「「「「「っ!!!!????」」」」」」」」」」
コントか、とツッコみたくなる程綺麗に驚く生徒たち。
当然、アドレアスの側近的な二人も同じく表情が崩れ……短気男子生徒に限っては、青筋が幾つも浮かんでいた。
「……一応、理由を聞いても良いかな」
「俺は俺の動きたいように動きたいんだよ。この三年間の学園生活……俺がやりたいと思った事をやって、楽しい思い出にする。仮にあんたが俺の交友関係に入れば……一応そうはいかないんだろ」
「…………」
「まっ、それでも俺は俺の動きたいように動くけど、それで困るのはそっちだろ」
他にも理由はあるが、今回の友達申請を断った第一の理由は、紛れもなく動きたいように動けないから、というものだった。
「君は…………凄いね」
「俺なんて、うちの実家の人間と比べればまだまだだよ」
「謙遜……ではないんだね」
「勿論。だからこそ、ぶっちゃけ学園に入学するのも最初は乗り気じゃなかったんだけどな」
二人はまるで昔からの知り合いのごとく朝食を食べ終わるまで会話を続けた。
「もし良かったら、今度一緒に夕食でもどうかな」
「二人分の夕食代を奢ってくれるなら良いぞ」
「安心してくれ。これでも王族だからね」
アドレアスは底を見せない笑顔でプレートを返しに行く。
そして……当然と言えば当然、短気男子生徒は去り際に射殺さんばかりの眼光をイシュドに飛ばした。
(ん~~~~……うちの騎士連中と比べたら、完全にドーベルマンじゃなくてチワワなんだよな~~~)
堪え切れず、その場で笑うイシュド。
隣で朝食を食べていたガルフは何が面白くて笑っているのか解らず……とりあえずイシュドの心臓は、メンタルは異次元なのだと改めて感じた。
アイアンアントと戦闘中のガルフの動きは徐々に……徐々に徐々に無駄がなくなっていく。
まるで将棋の最善手を選び続けるかの如く動き続け、最終的にアイアンアントを物理的に詰ませた。
「はぁ、はぁ……もう、動けない」
「お疲れさん。最後の方、マジで良い動きだったぞ」
イシュドとの戦いで、最後の方の動きを実戦出来たとしても……現段階では、相手になる事はない。
しかし、仮に自分と同レベルになった場合……といった想像を思い浮かべ、武者震いする。
(まっ、あの動きはあの動きでやりようがあるんだが、今ガルフにそこまでアドバイスしたら頭こんがらがりそうだな)
こうして二人は夕方過ぎまで探索を続けた後、最寄りの街で素材の売却。宿の予約と夕食を済ませ、爆睡。
よっぽど疲れが溜まっていたガルフは横になってからたった数秒でいびきをかき始めた。
「んじゃ、今日も頑張っていこうぜ」
「……っしゃ!!!!!!」
「ははは、良いね。気合十分だ」
翌日、まだ疲れが完璧に抜けてないものの……ガルフは気合で振り切り、二日目の休みも実戦実戦実戦休憩……実戦実戦実戦休憩を繰り返し、学園に戻ってきたのは時間ギリギリ。
「おはようさん、生きてるか?」
「……改めて学園のベッドって凄いんだなって思った」
まだギリ疲れは残っているが、予想以上の回復に驚きを隠せない。
授業が始まる前に食堂へ向かうと、相変わらずイシュドに……今ではガルフに多くの視線が集まる。
当然、良い意味での注目ではない。
(言いたいことがあるなら、輩一や二とか……マクセランみたいに面と向かって言やいいもんを……って、上にはペコペコして下にはデカい面を取る連中には無理か)
朝からがっつり肉のメニューを頼み、適当に空いている席に座ると……狙っていたかのように、二人の前の席にとある生徒が座った。
「やぁ、おはよう」
「……おはよう」
「君がイシュド・レグラ君で合ってるよね」
「そうだけど……あんたは「貴様ッ!!! その口の利き方を正せっ!!!!」……めんどくさ」
一応……一応イシュドは目の前の生徒が本当に誰なのか知らないものの、珍しくこれまで声を掛けてきた人物とは違い、クリスティールに近い感情を向けられていると感じ、対応しようと思った。
しかし、いきなり大きな声で両隣りの片方が口の利き方がうんたらかんたらと怒鳴り始めたため、イシュドは完全に無視して朝食を食べることだけに集中し始めた。
「ッッッッッ!!!!!! 貴様、私の話を聞いているのか!!!!!!」
「………………」
「ッ!!!!!!」
男の怒鳴り声を、更に無視。
ガルフは万が一の可能性に備え、食器が乗ったプレートを両手で持ち上げる。
「止めるんだ」
「し、しかし!!!!」
「私が止めろと言っているんだ」
「ぐっ……か、かしこまりました」
主人的なポジションの男子生徒が、暴走しかけた男子生徒を制しさせた。
(ふ~~~~ん……やっぱりか)
イシュドは本当に何も知らない情報から、自分に挨拶をして来た男子生徒の正体を探っていた。
「あんたが、俺たちの代の王族ってことか」
「ッ!!!!!」
全く経緯が籠っていないその話し方に、先程怒鳴り声を上げた男子生徒の怒りがすぐさま膨れ上がるも、今回は爆発しなかった。
「アドレアス・バトレアだ。よろしく」
「あぁ、よろしく…………それで、王族様が俺みたいな礼儀も作法も知らない生徒になんか用ですか」
「うん、勿論。私は君と友人になりたいと思ってね」
「「「「「「「「「「っ!!!!????」」」」」」」」」」
アドレアスの言葉に、食堂内で二人の会話に聞き耳を立てていた生徒たちは完全に固まり、イシュドの言葉に苛立ちを顔に出していなかったもう一人の家来的な生徒も表情が崩れていた。
そして……先程怒鳴り声を上げた男子生徒に関しては、色々と言いたい事があるのに言えないといった言葉が、面白い具合に顔に表れていた。
(なるほどねぇ……この人なりに考えての言葉なんだろうな)
アドレアスのストレートな言葉に、イシュドは思わずニヤリと笑った。
「嬉しい申し出なんだろうけど、お断りさせてもらうよ」
「「「「「「「「「「っ!!!!????」」」」」」」」」」
コントか、とツッコみたくなる程綺麗に驚く生徒たち。
当然、アドレアスの側近的な二人も同じく表情が崩れ……短気男子生徒に限っては、青筋が幾つも浮かんでいた。
「……一応、理由を聞いても良いかな」
「俺は俺の動きたいように動きたいんだよ。この三年間の学園生活……俺がやりたいと思った事をやって、楽しい思い出にする。仮にあんたが俺の交友関係に入れば……一応そうはいかないんだろ」
「…………」
「まっ、それでも俺は俺の動きたいように動くけど、それで困るのはそっちだろ」
他にも理由はあるが、今回の友達申請を断った第一の理由は、紛れもなく動きたいように動けないから、というものだった。
「君は…………凄いね」
「俺なんて、うちの実家の人間と比べればまだまだだよ」
「謙遜……ではないんだね」
「勿論。だからこそ、ぶっちゃけ学園に入学するのも最初は乗り気じゃなかったんだけどな」
二人はまるで昔からの知り合いのごとく朝食を食べ終わるまで会話を続けた。
「もし良かったら、今度一緒に夕食でもどうかな」
「二人分の夕食代を奢ってくれるなら良いぞ」
「安心してくれ。これでも王族だからね」
アドレアスは底を見せない笑顔でプレートを返しに行く。
そして……当然と言えば当然、短気男子生徒は去り際に射殺さんばかりの眼光をイシュドに飛ばした。
(ん~~~~……うちの騎士連中と比べたら、完全にドーベルマンじゃなくてチワワなんだよな~~~)
堪え切れず、その場で笑うイシュド。
隣で朝食を食べていたガルフは何が面白くて笑っているのか解らず……とりあえずイシュドの心臓は、メンタルは異次元なのだと改めて感じた。
859
お気に入りに追加
1,780
あなたにおすすめの小説
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
婚約破棄にも寝過ごした
シアノ
恋愛
悪役令嬢なんて面倒くさい。
とにかくひたすら寝ていたい。
三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。
そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。
それって──最高じゃない?
ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい!
10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。
これで完結となります。ありがとうございました!
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる