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第2話 可能性の塊
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「儂はお前の曾爺ちゃんだ、イシュド」
「は、はい……えっと、イシュドです、よろしくお願いします」
事前に従者から連絡を受けていたため、曾祖父にあたる人物……ロベルトが自分の元を訪れることは知っていた。
ただ、その威圧感に圧倒されていた。
既に異世界での生活が始まって、早四年。
屋敷の中には実力者たちが多くいるため、なんとなく……雰囲気で強さが解るようになってきた。
そんな中で……まるでその圧を抑えていないロベルトの雰囲気は、あまりにも跳び抜けていた。
「ふふ、儂の強さがスキルなしで解るか」
「その、細かく解りませんけど、色々とぶっ飛んでることだけは解ります。なんというか……俺からすれば、半神に近い存在ですね」
「ほぅ……半神か。面白い表現をするな。とはいえ、もう少し強くなることが出来れば、確かに半神の領域に踏み込めるかもしれんな」
冗談を言っているようには聞こえない。
イシュドはそれらの情報だけで、ロベルトがもう直ぐレベル百という領域に到達するのを察した。
(れ、レベル百って確か、歴史上で数えるほどの人数しか到達してない領域、なんだよな? ……えっ、マジかよ。化け物って言うか怪物って言うか……最終兵器?)
イシュドの頭が混乱するのも無理はない。
「さぁ、稽古を始めるぞ」
「は、はいっ!!!!!」
最終兵器、ロベルトが指導を行う……とはいっても、内容としては殆ど今までイシュドが行っていることと変わらない。
(こ奴は、儂の後を継げる可能性がある)
その様な思いを持っているため、武器の訓練に入るとイシュドに大剣や戦斧、もしくは大戦斧やハルバードの使用を勧める。
「イシュド、お前には狂戦士を極められる可能性がある」
「ッ!!!」
地上最強とも噂されている人物からそう評価されては、思考が揺れるというもの。
イシュドとしても、ロベルトが提示した武器に興味はある。
一通り体力が持つ限りロベルトの指導を受け……一時間もしない内にぶっ倒れる。
当然と言えば当然の状態であり、寧ろ数十分も持ったイシュドがやはり異常。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ふぅーーーーーー」
偶に飛んでくる指導内容を反復を繰り返して修正。
四十代程までは超感覚派のロベルトだったが、いつからかある程度は自身の伝えたい事を言語化出来るようになっていた。
(儂に言われるまでもなく、体力の限界が来たら座禅を組み、体内の魔力を循環しながら瞑想を始めおった……ふっふっふ、五歳になったら直ぐに戦場に向かえそうじゃな)
伝えたい事を言語化出来るようになっても、やはり彼は脳筋だった。
五歳というあまりにも若過ぎる年齢でモンスターと戦わせる……ハッキリ言って虐待である。
五歳という年齢になれば、職業という恩恵を神から得られる。
職業の種類は個人の才能、歩んで来た道なりによって変わる。
(戦士、槍士、剣士……いや、これだけの魔力操作技術があるなら、魔法使いを得てもおかしくないか……ふっふっふ、この子の可能性が恐ろしいな)
ロベルトはイシュドの戦闘訓練に対する考えや姿勢だけに驚いてるのではない。
イシュドはレグラの者たちが、ほぼ遺伝的に嫌うであろう勉学にもそれなりの興味を持っている。
加えて明らかに接近戦の才を持っていながらも、魔法や錬金術といった分野にも興味津々。
挙句の果てには料理にまで興味を持っている。
(これがあの子の考えたハンバーグという料理か……うむ、美味いな)
実際にはイシュドが考えたわけではないが、ハンバーグの美味さにもしイシュドが料理人の道に進んでしまう未来が、脳内に浮かんでしまった。
(いかんいかん、それはいかん。いや、決めるのはイシュドじゃが……あり得るか?)
レグラ家に生まれた者たちは、例外なく戦闘系の職業を選ぶ、そこからステップアップしていく。
誰一人他の道に逸れた者はいない。
だが……今日一日、ほぼイシュドと共に過ごしたロベルトには解ってっしまう。
イシュドにはあまりにも多くの可能性が眠っている。
そしてその可能性に対する姿勢は、戦闘訓練に対する姿勢と殆ど変わらない。
それ故にもしやという不安が過る。
「他の道ですか? 興味はありますけど、兄さんや姉さんたちと同じく、戦士の道に進むことだけは決めてますよ。その他のことは趣味で十分です」
マンツーマンの指導が始まってから二日目、ロベルトは自然を装い、将来どの様な道に進みたいのかと尋ねた。
この時、イシュドはほんの数秒ほど考え込んだが、直ぐに戦士としての道以外には興味はないと伝えた。
趣味は趣味であるからこそ、疲れた体に癒しを与えてくれる。
それがイシュドの持論であった。
本当にまだ体は幼いが……本当に体力の限界が来るまで動き続けられる謎の自信がある。
そんな根拠のない自信が継続していることもあって、イシュドとのマンツーマン指導が始まってからも戦闘訓練が嫌いになることは全くない。
そんなイシュドも……遂に五歳の誕生日を迎えた。
「イシュド、どういった職業を選べそうだ?」
父からの問いに、イシュドは一つの紙に就くことが出来る職業を書いていく。
(剣士、短剣士、槍士、戦士、武道家、魔法使い、料理見習い、錬金術師見習い、丁稚……恐ろしいほどの候補数だな)
結果として、イシュドが初めて就くことが出来る職業の数は……十。
これは半神に届きうる戦闘力を持つロベルトと同じく、歴史上数えるほどの者しか持ちえない可能性の塊。
「父さん、俺はとりあえずこの職業を選ぼうと思います」
「……うん、良いんじゃないか」
イシュド指さした職業名は……魔戦士。
職業候補に戦士と魔法使いがあれば、可能性としては十分あり得る話ではある。
そう、可能性としてはあり得なくないのだが……それはレベルが二十五に達し、二次転職を行えるようになってからの場合である。
(魔戦士か……うん、全然ありだ。寧ろイシュドの可能性を考えるとそれしか……って、なにッ!!!!????)
アルバは息子が選択したい候補を聞いてから約十秒後、ようやくそのあり得なさに気付いた。
「い、イシュド……その職業は、本当に選択できる、のか?」
「はい、候補欄にあります」
「そうか……それなら、お前の考えた通りそれを選ぶと良い」
こうしてイシュドはたった五歳という年齢ながら、魔戦士という……なんとも年齢に似合わない職業に就くことになった。
「は、はい……えっと、イシュドです、よろしくお願いします」
事前に従者から連絡を受けていたため、曾祖父にあたる人物……ロベルトが自分の元を訪れることは知っていた。
ただ、その威圧感に圧倒されていた。
既に異世界での生活が始まって、早四年。
屋敷の中には実力者たちが多くいるため、なんとなく……雰囲気で強さが解るようになってきた。
そんな中で……まるでその圧を抑えていないロベルトの雰囲気は、あまりにも跳び抜けていた。
「ふふ、儂の強さがスキルなしで解るか」
「その、細かく解りませんけど、色々とぶっ飛んでることだけは解ります。なんというか……俺からすれば、半神に近い存在ですね」
「ほぅ……半神か。面白い表現をするな。とはいえ、もう少し強くなることが出来れば、確かに半神の領域に踏み込めるかもしれんな」
冗談を言っているようには聞こえない。
イシュドはそれらの情報だけで、ロベルトがもう直ぐレベル百という領域に到達するのを察した。
(れ、レベル百って確か、歴史上で数えるほどの人数しか到達してない領域、なんだよな? ……えっ、マジかよ。化け物って言うか怪物って言うか……最終兵器?)
イシュドの頭が混乱するのも無理はない。
「さぁ、稽古を始めるぞ」
「は、はいっ!!!!!」
最終兵器、ロベルトが指導を行う……とはいっても、内容としては殆ど今までイシュドが行っていることと変わらない。
(こ奴は、儂の後を継げる可能性がある)
その様な思いを持っているため、武器の訓練に入るとイシュドに大剣や戦斧、もしくは大戦斧やハルバードの使用を勧める。
「イシュド、お前には狂戦士を極められる可能性がある」
「ッ!!!」
地上最強とも噂されている人物からそう評価されては、思考が揺れるというもの。
イシュドとしても、ロベルトが提示した武器に興味はある。
一通り体力が持つ限りロベルトの指導を受け……一時間もしない内にぶっ倒れる。
当然と言えば当然の状態であり、寧ろ数十分も持ったイシュドがやはり異常。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ふぅーーーーーー」
偶に飛んでくる指導内容を反復を繰り返して修正。
四十代程までは超感覚派のロベルトだったが、いつからかある程度は自身の伝えたい事を言語化出来るようになっていた。
(儂に言われるまでもなく、体力の限界が来たら座禅を組み、体内の魔力を循環しながら瞑想を始めおった……ふっふっふ、五歳になったら直ぐに戦場に向かえそうじゃな)
伝えたい事を言語化出来るようになっても、やはり彼は脳筋だった。
五歳というあまりにも若過ぎる年齢でモンスターと戦わせる……ハッキリ言って虐待である。
五歳という年齢になれば、職業という恩恵を神から得られる。
職業の種類は個人の才能、歩んで来た道なりによって変わる。
(戦士、槍士、剣士……いや、これだけの魔力操作技術があるなら、魔法使いを得てもおかしくないか……ふっふっふ、この子の可能性が恐ろしいな)
ロベルトはイシュドの戦闘訓練に対する考えや姿勢だけに驚いてるのではない。
イシュドはレグラの者たちが、ほぼ遺伝的に嫌うであろう勉学にもそれなりの興味を持っている。
加えて明らかに接近戦の才を持っていながらも、魔法や錬金術といった分野にも興味津々。
挙句の果てには料理にまで興味を持っている。
(これがあの子の考えたハンバーグという料理か……うむ、美味いな)
実際にはイシュドが考えたわけではないが、ハンバーグの美味さにもしイシュドが料理人の道に進んでしまう未来が、脳内に浮かんでしまった。
(いかんいかん、それはいかん。いや、決めるのはイシュドじゃが……あり得るか?)
レグラ家に生まれた者たちは、例外なく戦闘系の職業を選ぶ、そこからステップアップしていく。
誰一人他の道に逸れた者はいない。
だが……今日一日、ほぼイシュドと共に過ごしたロベルトには解ってっしまう。
イシュドにはあまりにも多くの可能性が眠っている。
そしてその可能性に対する姿勢は、戦闘訓練に対する姿勢と殆ど変わらない。
それ故にもしやという不安が過る。
「他の道ですか? 興味はありますけど、兄さんや姉さんたちと同じく、戦士の道に進むことだけは決めてますよ。その他のことは趣味で十分です」
マンツーマンの指導が始まってから二日目、ロベルトは自然を装い、将来どの様な道に進みたいのかと尋ねた。
この時、イシュドはほんの数秒ほど考え込んだが、直ぐに戦士としての道以外には興味はないと伝えた。
趣味は趣味であるからこそ、疲れた体に癒しを与えてくれる。
それがイシュドの持論であった。
本当にまだ体は幼いが……本当に体力の限界が来るまで動き続けられる謎の自信がある。
そんな根拠のない自信が継続していることもあって、イシュドとのマンツーマン指導が始まってからも戦闘訓練が嫌いになることは全くない。
そんなイシュドも……遂に五歳の誕生日を迎えた。
「イシュド、どういった職業を選べそうだ?」
父からの問いに、イシュドは一つの紙に就くことが出来る職業を書いていく。
(剣士、短剣士、槍士、戦士、武道家、魔法使い、料理見習い、錬金術師見習い、丁稚……恐ろしいほどの候補数だな)
結果として、イシュドが初めて就くことが出来る職業の数は……十。
これは半神に届きうる戦闘力を持つロベルトと同じく、歴史上数えるほどの者しか持ちえない可能性の塊。
「父さん、俺はとりあえずこの職業を選ぼうと思います」
「……うん、良いんじゃないか」
イシュド指さした職業名は……魔戦士。
職業候補に戦士と魔法使いがあれば、可能性としては十分あり得る話ではある。
そう、可能性としてはあり得なくないのだが……それはレベルが二十五に達し、二次転職を行えるようになってからの場合である。
(魔戦士か……うん、全然ありだ。寧ろイシュドの可能性を考えるとそれしか……って、なにッ!!!!????)
アルバは息子が選択したい候補を聞いてから約十秒後、ようやくそのあり得なさに気付いた。
「い、イシュド……その職業は、本当に選択できる、のか?」
「はい、候補欄にあります」
「そうか……それなら、お前の考えた通りそれを選ぶと良い」
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