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九百九十四話 しっかり覚えてる
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「名前の響きは良いが……どういう意味があるんだ?」
「……こことは、違う国というか……大陸? の言葉みたいなものだ。奇跡や不可能といった意味があった筈だ」
アラッドが虎竜を見て思い浮かんだ存在は、ブルーローズ。
アラッドの前世では、青いバラは自然界に存在しない色のバラ。
だからこそ、奇跡や不可能、存在しないといった花言葉を持っていた。
「奇跡、不可能…………」
「つまり、虎竜がそういう存在ってことよね」
「個人的な感覚だけどな」
「……解らなくはないって感じかな!! だて、そもそも虎系のモンスターとドラゴンが……恋に落ちて? そうなって子を産むのって、まずあり得ないことじゃん!」
「実際に起きてる訳だから、あり得ない事と断言するのは違うと思うけど、そうだね……言いたい事は解るかな」
虎竜の話を噂で聞いたことがある騎士や冒険者でも、大半は信じられない話だと聞き流していた。
だが、スティームとガルーレは実際に虎とドラゴンが混ざり合った存在を、その眼で見た。
「恋に落ちてそうなったかは分からないけど、実際に虎竜という存在が生まれて……更にその虎竜が強い雄のモンスター? と出会い、この子が生まれ落ちた訳だからね」
「えぇ~~~~、恋に落ちたからじゃないの~~~?」
決して強い恋愛脳を持っているタイプではないガルーレだが、その方がなんだか面白そうと思っていた。
対して、スティームは冷静に自身の考えを述べる。
「クロやファル、ヴァジュラを見ているともしかしたらとは思うけど、基本的にモンスターが僕たちと近い意味で恋愛感情を持つとは思えなくてさ」
「……個人的には、スティームの意見に同意だな」
ロマンもクソもない話ではあるが、そもそも人間と違って思考力が劣るモンスターに恋愛という感情があるのか。
二人はそこが疑問点に思えた。
「でもさ、そういう感情がなかったら、同じ種族同士でくっついたりしないんじゃないの?」
「ん~~~~~……良い言い方をすれば、この前アラッドが言ったみたいに、互いに出会った存在に対して運命の相手だと、本能的に思ったからくっ付いたんじゃないかな」
「……スティーム、俺はそんな事言ってたか?」
「? うん、言ってたよ」
「それは確かに言ってたね」
アラッドにしては珍しくロマンチックな事を言っているなと、スティームとガルーレはバッチリと内容を覚えていた。
「そ、そうか」
「話を戻すけど、引かれ合った理由は恋愛感情じゃなくて、生物としてこの雄が良い、この雌が良い……そういう直感や本能に近い感覚から、モンスターたちは繋がるんだと僕は思ってる」
「それじゃあ、虎竜はここ最近そういうモンスターと出会ったけど、別に恋愛感情はなかったから、ディーナが出会ったのは虎竜だけだってことか~~~~」
「あくまで僕の憶測ではあるけどね。っと、そういえばこの子の名前についてだったよね。そういう意味が込められてるって考えると、僕は凄く合ってると思うかな」
「私も……悪くない響き? だとは思う。それ以上に何か良い感じの名前があるかって言われると、パッと思い付かないし。ディーナはどうなの?」
「そうだな………………私も、良い名前だと思う。お前は、どう思う」
気に入るか否かは虎竜の子が決める事であるため、ディーナは腰を下ろし、虎竜の子と同じ目線になって尋ねた。
「…………ルゥアアン!!!」
「そうか、気に入ってくれたか」
まだそこまで人間の言葉をクロたちほど理解出来てはいない虎竜の子だが、それでもアラッドと呼ばれた人間が悪意を持って考えたとは思えなかった。
「……あれだね、アラッドって結構名付けが上手いね」
「そうか? まぁ、そう言われて悪い気はしないが」
「だからさ、あれなんだよね。なんでクロはクロって名前にしたの?」
ハヌマーンのヴァジュラ、虎竜の子のブローズ。
二つとも良い名前だと思うガルーレ。
クロという名前も、別に悪い……変な名前だとは思っていない。
しかし、それでもヴァジュラやブローズに比べれば、物凄く安直だなと感じてしまう。
「…………クロと出会った時は、俺もまだ若かったんだよ」
まだ若かったんだよと……まだ二十歳を越えていない若僧が言う言葉ではないが、アラッドの言う通り……当時クロと出会ったばかりのアラッドは今よりも若かった。
「ふ~~~ん。まっ、クロは気に入ってそうだし、別にいいって感じか」
「ワゥ!!!」
その通りだと、アラッドが付けてくれた名前を凄く気に入っていると、クロは大きな声で肯定した。
「……………………」
「スティール、いきなり神妙な顔をしてどうしたんだ」
「物凄く今更な話なんだけどさ、虎竜の子……ブローズを従魔にしようとしたら、何人かから不満が飛んできたりしないかなって思って」
「「「…………」」」
虎竜という勇ましく強くも恐ろしい存在に殺されたのは、ディーナの両親だけではなかった。
その事を今更思い出し、アラッドたちの顔色が急激に悪く悪く変化していった。
「……こことは、違う国というか……大陸? の言葉みたいなものだ。奇跡や不可能といった意味があった筈だ」
アラッドが虎竜を見て思い浮かんだ存在は、ブルーローズ。
アラッドの前世では、青いバラは自然界に存在しない色のバラ。
だからこそ、奇跡や不可能、存在しないといった花言葉を持っていた。
「奇跡、不可能…………」
「つまり、虎竜がそういう存在ってことよね」
「個人的な感覚だけどな」
「……解らなくはないって感じかな!! だて、そもそも虎系のモンスターとドラゴンが……恋に落ちて? そうなって子を産むのって、まずあり得ないことじゃん!」
「実際に起きてる訳だから、あり得ない事と断言するのは違うと思うけど、そうだね……言いたい事は解るかな」
虎竜の話を噂で聞いたことがある騎士や冒険者でも、大半は信じられない話だと聞き流していた。
だが、スティームとガルーレは実際に虎とドラゴンが混ざり合った存在を、その眼で見た。
「恋に落ちてそうなったかは分からないけど、実際に虎竜という存在が生まれて……更にその虎竜が強い雄のモンスター? と出会い、この子が生まれ落ちた訳だからね」
「えぇ~~~~、恋に落ちたからじゃないの~~~?」
決して強い恋愛脳を持っているタイプではないガルーレだが、その方がなんだか面白そうと思っていた。
対して、スティームは冷静に自身の考えを述べる。
「クロやファル、ヴァジュラを見ているともしかしたらとは思うけど、基本的にモンスターが僕たちと近い意味で恋愛感情を持つとは思えなくてさ」
「……個人的には、スティームの意見に同意だな」
ロマンもクソもない話ではあるが、そもそも人間と違って思考力が劣るモンスターに恋愛という感情があるのか。
二人はそこが疑問点に思えた。
「でもさ、そういう感情がなかったら、同じ種族同士でくっついたりしないんじゃないの?」
「ん~~~~~……良い言い方をすれば、この前アラッドが言ったみたいに、互いに出会った存在に対して運命の相手だと、本能的に思ったからくっ付いたんじゃないかな」
「……スティーム、俺はそんな事言ってたか?」
「? うん、言ってたよ」
「それは確かに言ってたね」
アラッドにしては珍しくロマンチックな事を言っているなと、スティームとガルーレはバッチリと内容を覚えていた。
「そ、そうか」
「話を戻すけど、引かれ合った理由は恋愛感情じゃなくて、生物としてこの雄が良い、この雌が良い……そういう直感や本能に近い感覚から、モンスターたちは繋がるんだと僕は思ってる」
「それじゃあ、虎竜はここ最近そういうモンスターと出会ったけど、別に恋愛感情はなかったから、ディーナが出会ったのは虎竜だけだってことか~~~~」
「あくまで僕の憶測ではあるけどね。っと、そういえばこの子の名前についてだったよね。そういう意味が込められてるって考えると、僕は凄く合ってると思うかな」
「私も……悪くない響き? だとは思う。それ以上に何か良い感じの名前があるかって言われると、パッと思い付かないし。ディーナはどうなの?」
「そうだな………………私も、良い名前だと思う。お前は、どう思う」
気に入るか否かは虎竜の子が決める事であるため、ディーナは腰を下ろし、虎竜の子と同じ目線になって尋ねた。
「…………ルゥアアン!!!」
「そうか、気に入ってくれたか」
まだそこまで人間の言葉をクロたちほど理解出来てはいない虎竜の子だが、それでもアラッドと呼ばれた人間が悪意を持って考えたとは思えなかった。
「……あれだね、アラッドって結構名付けが上手いね」
「そうか? まぁ、そう言われて悪い気はしないが」
「だからさ、あれなんだよね。なんでクロはクロって名前にしたの?」
ハヌマーンのヴァジュラ、虎竜の子のブローズ。
二つとも良い名前だと思うガルーレ。
クロという名前も、別に悪い……変な名前だとは思っていない。
しかし、それでもヴァジュラやブローズに比べれば、物凄く安直だなと感じてしまう。
「…………クロと出会った時は、俺もまだ若かったんだよ」
まだ若かったんだよと……まだ二十歳を越えていない若僧が言う言葉ではないが、アラッドの言う通り……当時クロと出会ったばかりのアラッドは今よりも若かった。
「ふ~~~ん。まっ、クロは気に入ってそうだし、別にいいって感じか」
「ワゥ!!!」
その通りだと、アラッドが付けてくれた名前を凄く気に入っていると、クロは大きな声で肯定した。
「……………………」
「スティール、いきなり神妙な顔をしてどうしたんだ」
「物凄く今更な話なんだけどさ、虎竜の子……ブローズを従魔にしようとしたら、何人かから不満が飛んできたりしないかなって思って」
「「「…………」」」
虎竜という勇ましく強くも恐ろしい存在に殺されたのは、ディーナの両親だけではなかった。
その事を今更思い出し、アラッドたちの顔色が急激に悪く悪く変化していった。
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