981 / 1,043
九百七十九話 ある意味チャンス
しおりを挟む
「当たり前だけど、そう簡単に見つからなかったね~~~」
グレーターマンティス戦後、結局ガルーレが満足出来るようなモンスターと遭遇することはなく……当然、目当てのモンスターである虎竜の姿も見つからなかった。
「そうだな。次は、もう少し探索範囲を広げても良さそうだな」
「…………」
「どうした、スティーム?」
「やっぱり、もしかしたらちょっと思ってね」
何をやっぱり、もしかしたらと考えたのか、アラッドとガルーレは直ぐに察した。
「スティーム~、まだ一日目だよ」
「うん、解ってるよ。まだ虎竜の性格とかがそこまで詳しく解ってないって言うのもあるけど……自分より格上の相手だとしても挑むタイプなら、逆に探索初日にでも遭遇してもおかしくないかなって思ってて」
強い相手と戦い。
であれば、アラッドたちは中々に良い面子が揃っている。
アラッドたち冒険者だけではなく、クロたち従魔組も並以上の力を有している。
「けど、今日探索してた限り、それらしい視線すら感じなかったからさ」
「……そうだな。狙ってくる視線だけで、観察する様な視線を薄っすらと感じることはなかったな」
アラッドたちだけではなく、視線に関してはクロたちもそれらしい視線を感じていなかった。
「偶々だよ。今日は、どっか別の場所で戦ってたんじゃない。もしくは、ここから少し離れた場所で、丁度良い相手を見つけてしまったとか」
「モンスターのスタミナを考えれば、無理じゃない話だな」
ハプターラで何度か虎竜の目撃情報はあるが、一定期間……周辺の森で気配すら全く感じられない時もある。
「……仮にそうなら、早めに戻ってきて欲しいね」
「そうね~~。残りが虎竜だけって訳じゃないもんね」
雪竜、グレイスから教えてもらった情報の中には、まだ複数のドラゴンやドラゴン以外のモンスターがいる。
現在アラッドたち討伐したモンスターは風竜ルストと、闇竜デネブ。
この情報に関しては国王に知らせているため、騎士団たちも動いて討伐を行っている。
そのため、グレイスから教えてもらった要注意モンスターたちを全てアラッドたちだけで討伐する必要はない。
ただ……この先起こるであろう大戦の事を考えれば……少しでも早く、不安要素を減らしておきたい。
「……もしかしてだけださ、他のモンスターたちが虎竜の存在を隠してる……とか、あるのかな」
「虎竜の存在を隠す? それは…………モンスターたちが、虎竜に対して敬意を持ってるから、かい?」
スティームの言葉に、ガルーレは杯に残っていたエールを呑み干し、頷いた。
「私は二人よりもモンスターの事なんて知らないけど、虎竜……ドラゴンってモンスターは、こう……他の種族からぅ恐れられたり敬われたりしそうじゃん」
そう言いながら、店員にエールのおかわりを注文。
「「………………」」
虎竜と遭遇出来なかった理由に関して、まさかの方向から理由を思い付いたガルーレに対し、アラッドとスティームは食事の手だけは動かしながら考え込んだ。
「…………ガルーレ。仮にそうだとしたら、どういう理由で他のモンスターたちはそう動こうとするんだ」
「敬意とか恐怖とかじゃなくて、もっと深い理由ってこと?」
「あぁ、そうだ」
「ん~~~~~…………虎竜の性格……を知ってたら、そんな事しないか。ん~~っと…………あっ、もしかしさ、もしかしてだけどさ……出来ちゃったからかな」
ガルーレは自分たちの周りで食事をしている者たちに聞こえないよう、小さな声でもっと深い理由を告げた。
「っ!!!! …………」
あり得ない、とは断言出来ない理由を聞き、思わず食事の手が止まってしまったアラッド。
「…………………ふぅーーーーーー。恐ろしいな」
溜めに溜めて一言、アラッドは呟いた。
「そう、だね……恐ろしいね。仮に……本当にそうなってたら、どんなモンスターと……そうなったんだろうね」
「……ドラゴンか、虎系のモンスターじゃない?」
「そうなるか……ふぅ~~、本当に恐ろしいな」
アラッドたちも、人の事は言えない。
貴族や王族こそ、品種改良を繰り返してきた存在と言っても過言ではない。
だが……だが、アラッドたちからすれば、まず竜と虎が混ざった時点で、恐ろしい品種改良が誕生した。
そこに、竜か虎とはいえ、どちらかと再度交わった…………というのを想像するだけで、ぶるりと震える。
「でもさ、アラッド。これって、本当にガルーレの推察が当たっていれば、チャンスではあるよね」
「チャンス…………そう、か。そうだな……」
生物的に、人間的にあまりよろしくない事を考えている自覚はある。
それでも……超強敵を討伐する上で、対象が妊娠しているというのは……討伐者である冒険者たちからすれば、間違いなくチャンスである。
「まぁあれだよ、私がもしかしたらそうかなって勝手に思ってるだけだよ」
「それはそうなんだが……そうなると、今日遭遇したモンスターたちが躊躇なく襲ってきたのに理由が付く」
グレーターマンティスの様なCランクモンスターであればまだしも、Dランク以下のモンスターになると、複数でなければ襲って来ないことが多い。
しかし、本日アラッドたちが遭遇したDランク以下のモンスターは……奇襲ではあるものの、一体であっても襲い掛かってきた。
(…………一応、ディーナさんに伝えておいた方が良さそうだな)
同じ得物を狙うライバルではあるが、三人ともディーナには可能性の一つとして伝えておこうと思った。
グレーターマンティス戦後、結局ガルーレが満足出来るようなモンスターと遭遇することはなく……当然、目当てのモンスターである虎竜の姿も見つからなかった。
「そうだな。次は、もう少し探索範囲を広げても良さそうだな」
「…………」
「どうした、スティーム?」
「やっぱり、もしかしたらちょっと思ってね」
何をやっぱり、もしかしたらと考えたのか、アラッドとガルーレは直ぐに察した。
「スティーム~、まだ一日目だよ」
「うん、解ってるよ。まだ虎竜の性格とかがそこまで詳しく解ってないって言うのもあるけど……自分より格上の相手だとしても挑むタイプなら、逆に探索初日にでも遭遇してもおかしくないかなって思ってて」
強い相手と戦い。
であれば、アラッドたちは中々に良い面子が揃っている。
アラッドたち冒険者だけではなく、クロたち従魔組も並以上の力を有している。
「けど、今日探索してた限り、それらしい視線すら感じなかったからさ」
「……そうだな。狙ってくる視線だけで、観察する様な視線を薄っすらと感じることはなかったな」
アラッドたちだけではなく、視線に関してはクロたちもそれらしい視線を感じていなかった。
「偶々だよ。今日は、どっか別の場所で戦ってたんじゃない。もしくは、ここから少し離れた場所で、丁度良い相手を見つけてしまったとか」
「モンスターのスタミナを考えれば、無理じゃない話だな」
ハプターラで何度か虎竜の目撃情報はあるが、一定期間……周辺の森で気配すら全く感じられない時もある。
「……仮にそうなら、早めに戻ってきて欲しいね」
「そうね~~。残りが虎竜だけって訳じゃないもんね」
雪竜、グレイスから教えてもらった情報の中には、まだ複数のドラゴンやドラゴン以外のモンスターがいる。
現在アラッドたち討伐したモンスターは風竜ルストと、闇竜デネブ。
この情報に関しては国王に知らせているため、騎士団たちも動いて討伐を行っている。
そのため、グレイスから教えてもらった要注意モンスターたちを全てアラッドたちだけで討伐する必要はない。
ただ……この先起こるであろう大戦の事を考えれば……少しでも早く、不安要素を減らしておきたい。
「……もしかしてだけださ、他のモンスターたちが虎竜の存在を隠してる……とか、あるのかな」
「虎竜の存在を隠す? それは…………モンスターたちが、虎竜に対して敬意を持ってるから、かい?」
スティームの言葉に、ガルーレは杯に残っていたエールを呑み干し、頷いた。
「私は二人よりもモンスターの事なんて知らないけど、虎竜……ドラゴンってモンスターは、こう……他の種族からぅ恐れられたり敬われたりしそうじゃん」
そう言いながら、店員にエールのおかわりを注文。
「「………………」」
虎竜と遭遇出来なかった理由に関して、まさかの方向から理由を思い付いたガルーレに対し、アラッドとスティームは食事の手だけは動かしながら考え込んだ。
「…………ガルーレ。仮にそうだとしたら、どういう理由で他のモンスターたちはそう動こうとするんだ」
「敬意とか恐怖とかじゃなくて、もっと深い理由ってこと?」
「あぁ、そうだ」
「ん~~~~~…………虎竜の性格……を知ってたら、そんな事しないか。ん~~っと…………あっ、もしかしさ、もしかしてだけどさ……出来ちゃったからかな」
ガルーレは自分たちの周りで食事をしている者たちに聞こえないよう、小さな声でもっと深い理由を告げた。
「っ!!!! …………」
あり得ない、とは断言出来ない理由を聞き、思わず食事の手が止まってしまったアラッド。
「…………………ふぅーーーーーー。恐ろしいな」
溜めに溜めて一言、アラッドは呟いた。
「そう、だね……恐ろしいね。仮に……本当にそうなってたら、どんなモンスターと……そうなったんだろうね」
「……ドラゴンか、虎系のモンスターじゃない?」
「そうなるか……ふぅ~~、本当に恐ろしいな」
アラッドたちも、人の事は言えない。
貴族や王族こそ、品種改良を繰り返してきた存在と言っても過言ではない。
だが……だが、アラッドたちからすれば、まず竜と虎が混ざった時点で、恐ろしい品種改良が誕生した。
そこに、竜か虎とはいえ、どちらかと再度交わった…………というのを想像するだけで、ぶるりと震える。
「でもさ、アラッド。これって、本当にガルーレの推察が当たっていれば、チャンスではあるよね」
「チャンス…………そう、か。そうだな……」
生物的に、人間的にあまりよろしくない事を考えている自覚はある。
それでも……超強敵を討伐する上で、対象が妊娠しているというのは……討伐者である冒険者たちからすれば、間違いなくチャンスである。
「まぁあれだよ、私がもしかしたらそうかなって勝手に思ってるだけだよ」
「それはそうなんだが……そうなると、今日遭遇したモンスターたちが躊躇なく襲ってきたのに理由が付く」
グレーターマンティスの様なCランクモンスターであればまだしも、Dランク以下のモンスターになると、複数でなければ襲って来ないことが多い。
しかし、本日アラッドたちが遭遇したDランク以下のモンスターは……奇襲ではあるものの、一体であっても襲い掛かってきた。
(…………一応、ディーナさんに伝えておいた方が良さそうだな)
同じ得物を狙うライバルではあるが、三人ともディーナには可能性の一つとして伝えておこうと思った。
430
お気に入りに追加
6,128
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
逆行転生って胎児から!?
章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。
そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。
そう、胎児にまで。
別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。
長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる